国内の企業数は約421万ある。このうち従業員数が100人未満の企業は、個人事業主を含めて9割以上にもなる(中小企業庁)。つまり企業の多くは、中小企業なのである。
その中小企業の強い味方となりうるのが「クラウドサービス」だ。
いま、中小企業にとって有用な「クラウドサービス」がまさに花盛りである。電子メールやグループチャット、スケジュール共有といった情報共有の分野から、経費精算などの事務分野、はたまた「社内ツイッター」などの情報発信分野まで。さまざまなクラウドサービスが手軽に利用できるようになってきた。
これらの仕組みを社内に導入しようという場合、7~8年ほど前なら、システム管理者やコンピューターのハードウエア、ソフトウエアなどが不可欠だった。そのため、人員や予算が限られる中小企業が、なかなか手を出しづらいというのが実情だった。
ところが今ならクラウドサービスが使える。クラウドサービスの登場により、社員の中から管理者を任命したり、わざわざハードウエアやソフトウエアを購入して設置したりしなくても、ITのメリットを享受できるようになったのである。
この連載では、社内で導入を考えている中小企業のユーザーを想定して、5回でクラウドサービスの解説記事をお届けしたい。
クラウドサービスはあなたの会社の仕事を、大きく変える可能性がある。では、なぜそのような可能性を秘めているのか。そもそも、クラウドサービスとはどのようなものなのか。具体的にはどんなサービスが登場してきているのか。そしてクラウドが今後、仕事をどう変えていくのか。これらの話題について、順を追ってやさしく解説していこう。
まず今回は、クラウドとはいったい何なのか、中小企業にとってのメリットに触れながら紹介していく。
クラウドの仕組みとメリット
クラウドサービスとは何か。ひとことで言えば、インターネット経由で提供される、情報共有などを実現するアプリケーションの総称である(図1)。
クラウドサービスの「クラウド」とは、「クラウドコンピューティング」というコンピューター用語から来ている言葉である。クラウドコンピューティングとは、コンピューターのさまざまな機能を、インターネット経由で利用することを指す。クラウドという名称は、しばしばコンピューター業界でインターネットを雲(クラウド)の絵で示す習慣から来ている。
すでに読者の中には、「Yahoo!メール」や「Gmail」、それから「Twitter(ツイッター)」などのWebサービスを使っている方も多いことだろう。こうした個人向けのクラウドサービスと同様に、遠隔会議や経費計算など、中小企業の業務に有効なアプリケーションも、クラウドサービスとして用意されつつある。つまり、専用のアプリケーションソフトを手元に用意し、自社のパソコンやサーバーマシンにインストールしなくても、Webブラウザーからアプリケーションを利用できるようになってきたのである。
では、中小企業にとって、クラウドサービスにはどんなメリットがあるのだろうか。以下、4つのポイントについて説明する。