NAS(Network Attached Storage)の用途が広がり、クラスタリングや自動階層化といった、信頼性や費用対効果を向上させる技術の活用が増えている。四つの技術を取り上げ、ITの現場で明らかになったアンチパターンをその仕組みとともに紹介する。
以前はファイバーチャネルのSAN(Storage Area Network)ストレージを採用していたケースに、NASが適用されるようになってきた。
「データベース基盤では数年前からNASをストレージに採用している。最近ではサーバー仮想環境のストレージにも適用するようになった」(伊藤忠テクノソリューションズ ITビジネス企画推進室 インフラソリューション企画推進部 ソリューション企画推進第2課 山浦浩一氏)。
背景には、NASの性能や運用性の向上がある。性能については「10Gビット/秒のイーサネットで接続すれば、8Gビット/秒のファイバーチャネルで接続するSANストレージの約9割強のデータ転送速度が出る」(NTTデータ先端技術 プラットフォーム事業部 技術担当 プリセールスグループ エキスパート 植木 展氏)。運用性では「データ保存領域の管理やバックアップに関する機能が充実してきた」(伊藤忠テクノソリューションズ 山浦氏)。
適用範囲の拡大をさらに後押ししているのが、NASに搭載された、信頼性や費用対効果を向上させるさまざまな技術だ。ITの現場で活用が進んでいる技術には、主に以下の四つがある。
(A)クラスタリング
ネットワークやディスクドライブ(以下ドライブ)の管理機能を備えたNASのコントローラー(ヘッドとも呼ぶ)の耐障害性を高める。コントローラーに障害が発生したときは、待機系のコントローラーに切り替えて稼働を続ける。
(B)自動階層化
アクセスが高速なSSD(Solid State Drive)やSAS注1(Serial Attached SCSI)と、安価なハードディスクドライブを組み合わせて、コストを抑えながらデータ転送速度を向上させる。
(C)重複排除
複数のファイルの重複部分を集約し、ファイルを効率的に格納する。
(D)RAID 6
複数のドライブを組み合わせて、耐障害性を高める。2台までのドライブが同時に故障しても、予備のドライブにデータを復元する。
これらの技術は、仕組みをよく理解して使わなければ、期待した効果を得られない場合がある。以降では、それぞれの技術を活用する際の重大なアンチパターンを取り上げ、各技術の仕組みとともに解説する(図1)。