クラウドでは、設計の古さに由来するL2ネットワークの制約が規模拡張の壁になる。この制約によって、管理性や通信効率に問題を抱える現場も出てきている。クラウド活用の広がりで陥りがちなアンチパターンを、回避策となる次世代LAN技術の仕組みと共に解説する。

 サーバーの仮想化技術やクラウドの利用が本格化したことに伴って、LANすなわちL2ネットワーク(イーサネット)の技術が抱える問題が顕在化しつつある。L2ネットワークを支える技術は大規模な用途まで想定して開発されたものではないので、今日のデータセンターのように膨大なサーバーを階層化せずフラットな経路で結ぶ使い方をすると、管理性や通信効率が低いという壁にぶつかる(図1)。

図1●クラウドを支えるLANの問題とアンチパターン
サーバー仮想化やクラウドの普及に伴って、既存のLAN技術が抱える問題が顕在化しつつある。LAN構築時のアンチパターンが現場で明らかになってきた
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 管理性については、仮想化技術を使った場合にハイパーバイザーによって実現される仮想スイッチと、物理スイッチを一元管理できないことが課題の一つになる。それにより現場の作業負荷が増大し、ミスが起こりやすくなるからだ。また、ライブマイグレーションによって仮想マシンが他の物理サーバーに移行すると、VLANなどの設定が煩雑になるのも問題である。

 通信効率の低さに関しては、ループ構造を許さないというL2ネットワークの制約が特に大きな問題として認識されるようになった。日本アバイアの日野直之氏(システムエンジニアリング部 システムエンジニアリング マネージャー)はその背景を、「データセンターのトラフィックで、サーバー間通信が占める比率が大幅に高まっているため」と説明する。最近は仮想化技術や分散処理技術を活用して、サーバーをスケールアウトさせるシステムが増えている。サーバー間でデータ交換を行う場面が多くなった結果、ループ構造を許さないという、通信効率の低下につながるL2ネットワークの制約が深刻な問題として浮上しているのである。

次世代LAN技術で問題を解消

 現場では、L2ネットワークが抱える制約によって問題に直面するケースが出てきている。そうしたアンチパターンを回避する策の一つが、現在開発や標準化が進められている次世代LAN技術の採用である。今後のクラウド活用の拡大に備え、これらの技術の仕組みを、きっちり押さえておきたい。

 この記事では、「仮想スイッチの管理を軽視してはいけない」「性能と可用性の両立を求めてはいけない」という二つのアンチパターンを通じて、クラウド時代における現行のLANの課題と次世代LAN技術を解説していく。

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