IaaS(Infrastructure as a Service)の適用領域は従来、ECサイトなど外部に公開するシステムにとどまっていた。しかしここにきて、IaaSの高い処理性能や拡張性を社内利用の業務システムでも使いたい、というニーズが高まっている。そうした要求に応えるべく、IaaS事業者が閉域網対応を強化している。
「パブリッククラウドを業務システム全般に適用したいとユーザーは思い始めた」。アマゾン データ サービス ジャパンの玉川 憲氏(ソリューションアーキテクチャ本部 技術統括部長 エバンジェリスト)は、IaaSに対するニーズの変化をこう説明する。
1台の物理サーバーを複数のユーザー企業が共有して仮想マシンを利用することや、インターネット経由でサービスを利用することなどから、IaaSは当初、「セキュリティや信頼性に不安がある」という声が多かった。そのためIaaSの適用領域はこれまで、一部のシステムに限られていた。「企業WebサイトやECシステムなど、外部に公開するシステムにとどまっていた」(ビットアイル マーケティング本部 サービス開発部 部長 福澤克敏氏)。
この状況は、IaaSを使うユーザーが増えるにつれ変わってきた(図1)。冒頭の玉川氏の言葉のように、高い処理性能や拡張性を備えるIaaSを、外部に公開するシステムにとどまらず、社内利用の業務システムでも使いたいというニーズが高まっている。
高速処理のリソースを一時的に利用
例えば、売上集計などのバッチ処理を行う販売管理システムや、月末や期末に処理が集中する会計システムといった、高い処理性能を一時的に必要とするシステムがその典型だ。
BCP(事業継続計画)の観点から、基幹システムをクラウドに置くニーズも高まっているという。「冗長化構成やデータバックアップの仕組みなどを備えるクラウドのほうが、自前のシステムより信頼性が高いと考えるユーザーが増えている」(ビットアイルの福澤氏)。
また、グループ企業に業務アプリケーションをSaaSとして提供するシステムや、社員が外出先からモバイル端末でアクセスするシステムなども、「社外からアクセスしやすいIaaS上に構築したいというニーズが高い」(NECビッグローブ ネットサービス事業部 クラウドサービスグループ マネージャー 関根良知氏)。