運用の容易さ、将来の拡張に向けたスケーラビリティー、コスト抑制などの観点から、既存のフィットネスクラブ運営統合システムをクラウドに全面移行することを提案する(表1)。これに伴い、マルチデバイスに対応できるよう、HTML5ベースのWebサイト/アプリケーションを展開する(図1)。

表1●アイキューブドシステムズの提案
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図1●システムをすべてクラウドに移行し、どこからでも、どの端末からでも利用できる環境を実現
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 Webアプリケーションは、アプリケーションフレームワークの「Yubizo Engine」を利用してHTML5とJavaScriptで実現。フレームワークを採用することでアプリケーションの拡張を容易にし、様々な端末からの多用な形式のデータを取り込みやすくする。

 スマートフォン/タブレット端末(iPhone、Androidなど)向けには、同じくYubizo Engineを利用し、HTML5ベースでアプリを作成。カメラやマイクなどネイティブの機能を実装した、直感的で分かりやすいインタフェースを提供する。HTML5を利用することで、一つのソースで幅広い種類の端末への展開が可能になる。

 なお、携帯電話やスマートフォンは、エクササイズ時に身につけているものと考え、リアルタイムでのデータの入出力を実現する。具体的には、スマートフォンにはPush Notification機能を、携帯電話にはメールまたはSMS(ショートメッセージ)によるダイレクトメッセージを利用する。

CRMシステムをクラウド上で

 バックエンドシステムは、各アプリケーションとのデータ連携が可能な Yubizo Engine CRM(顧客情報管理)モジュールをベースとする。既存システムで管理しているデータを扱うとともに、要件に合うように機能拡張し、これをクラウド上で動作させる。クラウドとしては、データはAmazon EC2、WebアプリケーションはGoogle App Engineで動作させる。

 端末からクラウドへのアクセスに関しては、ワンタイムパスワード(OTP)認証によりセキュリティを確保する。フィットネスクラブのスタッフ向けには、必要な人が必要な時にだけ顧客情報にアクセスできる管理コンソールの仕組みを構築。管理コンソールからは、顧客情報の閲覧に加え、コンシェルジェのような形で個々の顧客へのアドバイスを入力できるようにする。システム利用に際しては、MPKI(マネージドPKI、PKIは公開鍵暗号基盤)やOTPによる認証を経て接続し、SSLにより暗号化通信する。

 顧客向けのアプリケーションとしては、ユーザー個別のポータルページを提供。ポータルには、自身のランニングの走行距離、万歩計の数値などを入力できるインタフェースを設ける。また、これらの数値と、フィットネスマシンから収集したデータに基づいて、フィットネスクラブ内・外での運動の実績とKPI(カロリー消費量、体脂肪率、BMI指数、ランニング距離、ウォーキング距離/歩数など)を参照できるメニューを用意する。ページに表示するKPIは、個人が選択・設定できるようにする。年/月/週/日単位のレポートや、過去の実績との対比が簡単に出力できるインタフェースも作成する。

 将来のポイントシステムとの連携については、フィットネスクラブ運用統合システムと同様に、ポイント情報をYubizo Engine CRMと連携させる。そのうえで、ある期間内に一定のポイントを取得した顧客のランクが上がる仕組みや、一定期間来店のない顧客にメッセージを表示・送信する仕組みを作る。

 また、医療情報などを視野に入れたセキュリティとしては、提案にあるOTP利用などのセキュリティ対策に加え、通信事業者によるスマートフォン/携帯電話の紛失時対応サービス(リモートワイプなど)を利用。またバックエンド側では、管理者権限を設定すると同時に、操作ログを保管。これにより、将来の医療情報の取り扱いなどにも対応可能なセキュリティを確保する。