IoTを使った「IoTシステム」は、これまでの実証実験の段階から、ビジネスへの展開に向けた実用的な段階に入った。本特集では、IoTシステムを構築するための基礎を解説する。

 今回は、IoTシステムを効果的に活用している三つの事例を紹介しよう。

冷蔵庫の温度をリアルタイム監視

 食品・飲食業界にとって、製造の工程はもちろん、流通や輸送においても品質管理が重要な課題である。なかでも多種多様な食品を扱う外食・小売店舗には、食品衛生管理基準に基づく冷蔵・冷凍設備の適切な温度管理が求められている。

 こうしたなか、厚生労働省は2018年に食品衛生法を改正。原則としてすべての食品等事業者がHACCP(Hazard Analysis and Critical Control Point)に沿った衛生管理に取り組むことが義務化される見通しだ。

 HACCPに対応するには冷蔵庫などの温度データを継続的に収集・管理しなければならない。だが、人手不足のなか、温度データの収集・管理に手間をかけることが難しいといった事情もある。

 冷蔵庫にセンサーを取り付け、温度データを収集・管理する取り組みを始めている企業もある。しかし、ネットワーク化されておらず、SDカードなどでデータをやり取りするケースがほとんどだ。

 このため従業員からは、現地でセンサー端末からSDカードを抜いてパソコンで確認するのが面倒、温度異常はリアルタイムに把握できないと意味がない、といった声も上がっていた。

 こうした課題を解決するため、ある外食チェーンはEnOceanを活用したIoTシステムの導入に踏み切った。

 従来、同社の店舗では冷蔵庫内の温度を手書きで記録していた。このため、人手不足のなかで従業員の稼働時間を増やしていた。また、冷蔵庫が故障してもすぐには気づかず、食材の品質劣化を招き、廃棄のコストがかかっていた。

冷蔵庫内の温度を人手で管理
冷蔵庫内の温度を人手で管理
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 そこで温度センサーを導入し、リアルタイムで温度情報をIoTプラットフォームに蓄積。異常が発生すると即座にアラートを現場管理者に通知する。これにより管理者が直ちに現場に赴いたり、冷蔵庫メーカーに連絡したりするといったタイムリーな対応が可能になった。

IoTシステムでリアルタイムに温度管理
IoTシステムでリアルタイムに温度管理
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 さらに無線通信にEnOceanを採用することで、センサーなどの電源ケーブルを配線せずに済んだ。

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