IoTを使った「IoTシステム」は、これまでの実証実験の段階から、ビジネスへの展開に向けた実用的な段階に入った。本特集では、IoTシステムを構築するための基礎を解説する。
「モノのインターネット」であるIoT(Internet of Things)が盛り上がっている。IoTとは、様々なモノをインターネットに接続して使えるようにするための概念や仕組み、技術を指す。
IoTを活用したシステムである「IoTシステム」は、これまでの携帯電話網(3G/LTE)や無線LANを利用した実証実験(PoC:Proof of Concept)の段階から、ビジネスへの本格展開に向けてコスト評価を含む実用的な段階に入った。一部ではビジネス現場への展開も始まっている。
IoTシステムはデータ収集、蓄積、可視化、分析、フィードバックなどを行うため、多数の構成要素が必要となる。
デバイスに取り付けたセンサーからのデータはまずIoTゲートウエイ(GW)に集約される。これらをつなぐのはセンサーネットワークだ。センサーネットワークには主に、無線LANやBLE(Bluetooth Low Energy)、RFID、EnOceanなどの短距離無線が使われる。
IoTゲートウエイは集約したデータをIoTプラットフォームに送る。一般的に、IoTプラットフォームはクラウド上に構築する。IoTプラットフォームはデバイス/データの管理や可視化、外部システムとの連携を受け持つIoTシステムの要である。IoTゲートウエイとIoTプラットフォームは、インターネットや閉域網、3G/LTEなどの広域ネットワークでつなぐ。最近は「LPWA(Low Power Wide Area)」と呼ばれる長距離無線が注目されている。
LPWAなら10km以上をカバー
通信速度と通信距離を軸に、IoTシステム向けの代表的な無線技術をまとめた。無線LANは通信距離が100m以下と短いため、広範囲での利用には中継器などが必要だ。3G/LTEは広域で利用できるが、回線当たりの通信料金が高いため、多数のデバイスがつながるIoTシステムでは使いにくい。
こうした従来方式の課題を解決するのがLPWAである。代表的な規格として、LoRaWAN、Sigfox、NB-IoTやLTE-Mなどが存在する。NB-IoTとLTE-Mはいずれも、免許が必要な周波数帯を使い、携帯電話事業者がサービスを提供するセルラー系LPWAの一種。LTEをベースにIoTシステム向けに仕様を拡張した。
通信速度は数十~数百kビット/秒と遅いものの、最大で半径10km以上の広範囲をカバーすることが可能である。超低消費電力も特徴だ。乾電池で最大10年の稼働が可能である。現在は、安価にLPWAを利用できるサービスが提供され始めている。