自治体のデジタル化はどこまで進んでおり、何が課題なのか。都道府県CIOフォーラムが第16回年次総会を2018年8月21~22日、富山市で開催した。初日は、セキュリティ強じん化後の働き方改革とテレワーク・モバイルワークの推進方法や課題を議論。2日目午前は都道府県に策定が義務付けられた官民データ活用推進計画の策定方法と重点施策について、午後は都道府県システムを将来的に共同化・クラウド化する可能性について意見を交換した。

 事前アンケートの結果に基づく議論では、Web会議やテレビ会議の運用でセキュリティ強じん化に伴う支障が出たと回答した団体が、状況を報告した。「仮想デスクトップでは採用したソフトが使えず、インターネット専用端末だけでの利用になった」(新潟県情報政策課の宮典男情報主幹)。

宮 典男氏
宮 典男氏
新潟県 総務管理部 情報政策課 情報主幹

「インターネット接続系に置いたWeb会議ソフトを、庁内から仮想端末で利用している。途中にあるウイルス対策アプリケーションなどが影響し、遅延が発生して使いにくい」(石川県行政経営課の田川進情報システム室長)。

田川 進氏
田川 進氏
石川県 総務部 行政経営課 情報システム室長

 これらの発言を受け神奈川県の市原氏は「ストリーミングと仮想ブラウザやVDIは相性が良くない。Web会議は導入していないが、議会中継で支障が出ている。問い合わせがあった市町村に、クラウドサービス側のビットレートを調整してもらい、使用に耐える品質にできた事例があった」と報告した。京都府はWeb会議の利用を見直す。「テレワークでは家の中が映り込んでしまうなどの理由で利用率が低迷している。在籍状況が分かるチャットソフトへ切り替えを進めている」(政策企画部の原田智情報政策統括監)。

マイナンバーはテレワーク対象外

 事前アンケートでは、テレワークやモバイルワークでセキュリティ強じん化に伴う支障はないという回答が多かった。この点について、総務省の三木氏が見解を述べた。「アクセス先の情報やシステムの機能で影響は大きく変わる。インターネット系へのアクセスなら、特段大きな影響はない。一方、LGWAN系のフォルダに外からアクセスできるかは別の話。市町村では多くのシステムが個人番号系にあるので、外からのアクセスは難しいだろう」。

 神奈川県の市原氏は「個人番号利用事務は、機微な情報を扱うのでLTE接続は許可しない。県税事務所の職員でも、税情報はテレワーク時には見られない」と説明した。

 インターネット接続系に職員端末を寄せた京都府は、LGWAN系には閉域SIMでアクセスする方法を採用している。「在宅勤務者には自宅のPCは使わせず、PCを貸し出している。安全性を考慮し、家庭の無線LANではなくSIMでの閉域通信を利用させている。結果的に職場と同じ環境で仕事ができるため、職員から評価は高い」(原田氏)。

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