(Paul Thurrott)

 Microsoftは2005年1月中旬,スパイウエア対策ソフト「Windows AntiSpyware」のベータ版(既報),およびウイルス/ワーム駆除ソフト「Malicious Software Removal Tool」(該当サイト)——という2つセキュリティ強化ツールを相次いでリリースした。一見したところ,これは企業でも利用できるように思われる。しかし,この2つのツールは,中規模から大規模な企業よりも個人や小規模な企業にぴったりなものだ。最近,Windows AntiSpywareの担当者に話を聞いたので,それも含めてセキュリティ対策ソフトの今後の行方を紹介しよう。

「消費者向けに絞って早く出す」
 ビジネスの見地からは,Windows AntiSpywareもMalicious Software Removal ToolもMicrosoftが消費者向けに提供した物の中では並ぶもののないほど上にある。消費者の興奮度は,Windows Media CenterやWindows Media Player(WMP)10に匹敵するものではない。しかし,いずれも消費者に広く評判になったWindows XP Service Pack 2(SP2)のセキュリティの約束をしっかり反映したものだ。では,これらの消費者向けのセキュリティ・ツールは,企業向けの価値がないのだろうか?

 Windows AntiSpywareに関しては,かなり消費者向けになっている。Windows AntiSpywareの最初のベータ版は,基になった米GIANT Company Softwareのソフトウエア製品によく似ており,ビジネスではなく消費者向けを直球で狙っている。私は,最近Microsoftのセキュリティ・ビジネスと技術部門にいるAntiSpywareの製品戦略担当のPaul Brian氏と話した。彼によると,今回消費者向けに絞ったのは計算の上でのことで,企業向けバージョンが次に出るという。「スパイウエアが企業にとって問題になっていることははっきり分かっている。その最前線に向けて製品を発展させるつもりだ。しかし,いつ,どうやってそうするかはまだ何も決めていないけどね」(Paul Brian氏)。

GIANT社のころから企業向けソフトを準備していた
 また,GIANT Company Softwareの共同創設者にして,現在はMicrosoftのエンジニアリング部門でWindows AntiSpywareに取り組んでいるAndrew Newman氏とも,以前に会話を交わした。彼によれば,企業向け製品は世間の予想よりも早く登場することもあり得るという。理由は,GIANTのころに既に,企業向けスパイウエア対策ソフトのベータ版を出し始めていたからだ。このパッケージはより簡単に導入でき,集中管理が可能なものだった。私の期待は,Microsoftが2005年末までに同様のベータ・テストを実施することだ。Brian氏は請け合わないだろうけれど。

 MicrosoftはWindows AntiSpywareを消費者に渡すことを急いでいるため,そのパブリック・ベータは以前のGIANT版からあまり変わっていなかった。「われわれはそれを早く世に出すために,同じユーザー・インターフェースをそのまま使った」とBrian氏はいった。MicrosoftがGIANT Company Softwareの買収後たった21日でベータを出荷できたことも強調した。そのパッケージが一般に公開されたいま,Microsoftはそのアプリケーションを改善するためにユーザーのフィードバックを利用するだろう。そして,GIANT Company Softwareが人員不足で取りかかれなかったような,例えばローカライゼーションやアクセス性の工夫などをきちんとやるだろう。「確かにわれわれはやるべきことをたくさん抱えている」とBrian氏は強調した。

 Brian氏はそれ以上の答えを持っていなかった。Windows AntiSpywareとその究極の企業向けバージョンのスケジュールは分からない。ライセンス方式と価格もまだ分からない。ベータ・テストを実施している間はそんなものだ。

 Windows AntiSpywareと同様に,Malicious Software Removal Toolは企業向けというより,個人向けになっている。それは決してビジネス・ユーザーが全く見なくてよいという意味ではない。このツールはここ数年発生し注目を集めたWindows向けのウイルスとワームのいくつかをスキャンして削除する。MicrosoftはWebサイトで「企業環境での Microsoft Windows 悪意のあるソフトウェアの削除ツールの展開」という記事を掲載している(該当サイト)。これは同ツールを「Systems Management Server(SMS)」やグループ・ポリシーで導入する方法を紹介する内容である。しかし,このツールは,上等でないソフトウエアと同じく,管理者としてログオンしたユーザーにしか使えない。そして,同一ネットワーク内のほかのマシンをスキャンするためには使えない。多分より強力で役に立つツールを開発中なのだろう。