■Webサーバーをイントラネット/インターネットに本格的に公開するには,IISだけでなく,ネットワーク設定を再確認する必要がある。今回は,実際にIIS 6.0でWebサイトを運用し,公開するとき,最低限考慮しなければならないネットワーク構成と諸設定について解説する。

(奥津 和真)



 前回は,IIS 6.0でWebサイトを公開するために必要なサービスの追加,Webサイトの作成方法,サイトの設定方法を解説した。前回の解説だけでも,LAN内でのテストなど限られた目的で利用するのであれば,十分利用できる。しかし,Webサーバーをイントラネットやインターネットに本格的に公開するには,IISだけでなくネットワーク設定を再確認する必要がある。

 実際にWebサイトを公開するに当たって,必要になってくるネットワークの設定を二回に分けて解説する。状況に応じて考慮する観点が異なるため,前編で「イントラネットへの公開に必要な設定」について解説し,後編で「ブロードバンド・ルーターを経由したインターネットへの公開に必要な設定」を解説する。

 なお,今回の内容を企業内のネットワークなどで試行する場合,必ずネットワーク管理者の許諾を得てほしい。勝手な設定は混乱を招くし,他のサーバー・アプリケーションへの影響や,セキュリティ対策にも影響を与えるからだ。

イントラネット公開に必要なIPアドレス割り振りと名前解決
 イントラネット上にWebサイトを立ち上げる場合の注意点はWebサイト公開のための最低限必要なことだ。まず確認しなければならないのは「IPアドレスの割り当て方法」と「名前解決の方法」である。

 現在主流のTCP/IPを用いたネットワークでは,クライアントPC,サーバーを問わず,ネットワークにつながるすべての機器に異なったIPアドレスを割り振ることにより通信が成り立っている。まず,このIPアドレスをどうやって各機器に割り振るかが最初の確認事項となる。

 最も単純な方法は,手作業で異なるIPアドレスを一つひとつ割り当てる方法である。ただし,数多くの機器がある場合,すべてにIPアドレスを設定し,それを重複しない様に管理するのは大変な作業となる。そこで,多く用いられているのがDHCP(ダイナミック・ホスト・コンフィギュレーション・プロトコル)によるIPアドレスの動的な割り当てである。

 DHCPによるIPアドレスの割り当ては,次のような仕組みで行われる。ネットワーク内にDHCPサーバーか,DHCP機能を持つルーターを設置し,あらかじめ利用できるIPアドレスを複数登録しておく。PCなどの機器が起動すると,DHCPサーバーとやり取りを行い,登録されているIPアドレスの中から利用されていないものを自動的に受け取り,TCP/IPのネットワーク設定が行われる。これにより,数多くの台数にIPアドレスを割り振る必要があっても比較的容易に管理ができる。ただし,この方法では,再起動などにより,割り当てられるIPアドレスが変わる可能性がある。

 名前解決の方法も重要である。IPアドレスが割り当てられれば,ネットワーク自体はきちんと動作する。しかし,Webサイトの利用者に「http://192.168.0.10/」といったIPアドレスでアクセスさせるのではなく,「http://server1/」など特定のホスト名で安定的に利用できるようにするには,名前解決の方法も確認する必要がある(解決方法の種類については後述)。

IPアドレスを設定し,サーバーにアクセスできるようにする
 例えば,ネットワークの設定後,サーバーのIPアドレスが変わっていた場合,こんなエラーが起こりえる。利用者がブラウザからサーバー「http://server1/」にアクセスしても,DNSにhttp://server1/のIPアドレスを問い合わせても,変更前のIPアドレスがレスポンスされ,サーバーが見つからずエラーとなってしまうのだ。

 このように,IPアドレスが変化することは,トラブルにつながる可能性がある。従って,サーバーのIPアドレス設定では,以下のような3つのいずれかの方法を選ぶべきである。ただし,これらの方法はどのようなネットワーク構成やサーバーでも使えるわけではないし,運用ポリシーによっても異なるため,事前に調査してネットワーク管理者と相談する必要がある。



△ 図表をクリックすると拡大されます
図1●「ローカルエリア接続のプロパティ」画面


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図2●[インターネットプロトコル(TCP/IP)のプロパティ]画面


△ 図表をクリックすると拡大されます
図3●Windows Server 2003では,MACアドレスは「物理アドレス」と表示される

●固定IPアドレスを設定する方法
 サーバーに固定のIPアドレスを設定する。手動で変更しない限りは変更されることはない。設定するには,以下の操作を行う。
(1)[コントロールパネル]内の[ネットワーク接続]をダブルクリックする。有効なネットワークが表示されるので[ローカルエリア接続]をダブルクリックする。
(2)「ローカルエリア接続の状態」画面の[プロパティ]ボタンをクリックする。[ローカルエリア接続]プロパティ画面が表示される。(図1
(3)インターネットプロトコル(TCP/IP)]を選択して[プロパティ]ボタンをクリックする。[インターネットプロトコル(TCP/IP)のプロパティ]画面が表示されるので,[次のIPアドレスを使用する]でIPアドレスを指定する(図2)。

●DHCPを利用するが,IPアドレスが変化しないように設定する方法
 DHCPサーバー側を設定することで,サーバーに毎回同じIPアドレスを割り振る。利用しているDHCPサーバーによって,設定の可否や方法が異なるため,自分の環境にあった設定方法を調べる必要がある。方法としては,ネットワーク・インターフェース・カード(NIC)に固有のMACアドレスと,特定のIPアドレスを結びつけて指定する場合が多い。

 MACアドレスは,すべてのNIC製品の個体に振られている固有の番号で,基本的に同じ番号のものは存在しない。Windows Server 2003では,[コントロールパネル]の[ネットワーク接続]で[ローカルエリア接続の状態]画面を表示し,[ローカルエリア接続]タブで[サポート]ボタンをクリックし,[詳細]画面に「物理アドレス」として表示されるものが,MACアドレスである(図3)。

●DHCPを利用するが,名前解決の動的更新で対応する方法
 DHCPを利用するが,IPアドレスの変化に即座に対応できる名前解決方法を利用する方法。その場合,ホスト名との関係が常に保たれるため,IPアドレスが変わっても同じホスト名で利用できる。具体的な方法については,後述する。

 「名前解決の動的更新」は非常にスマートで便利だが,既に名前解決の動的更新に対応するネットワーク環境が整っており,簡単に実現できる場合以外はお勧めしない。サーバーをシンプルに運用するには,可能な限り固定的に割り振るのが望ましい。