IIS 6.0セットアップ・ガイド(第3回) 続き

名前解決の方法を確認し,ホスト名でアクセスできるようにする
 次に,IPアドレスとホスト名を対応させるための名前解決の方法を確認する。インターネットであれば,名前解決は「DNS(ドメイン・ネーム・システム)」になる。しかし,Windowsによるイントラネットでは,DNS以外にも「NetBIOSネーム・キャッシュ」「WINS(ウインドウズ・インターネット・ネーミング・サービス)」「LMHOSTS/HOSTSファイル」———といった方法が,システム構成と状況に応じて使い分けられている。以下,順番に説明しよう。

●NetBIOSのネーム・キャッシュを利用する方法
 Windowsのネットワーク機能である「NetBIOS」をTCP/IP上に実装した「NetBIOS over TCP/IP」の機能を利用する方法。Windows同士がブロードキャストによってお互いを学習し,自動的にネーム・キャッシュに対照表を作り名前解決をする。

 例えば,Windowsクライアント同士をネットワークにつないだら,特に意識して設定などしなくても,相手のコンピュータ名でファイル共有できたという経験はないだろうか。それを実現しているのがNetBIOSによるネーム・キャッシュである。つまり,NetBIOS over TCP/IPの利用を明示的に禁止していない限り,特別な設定は必要ない。しかし,ルーターを越えられないこと,ブロード・キャストによってネットワークのトラフィックが上がることなどから,単純なネットワーク構成で小規模な台数のネットワークでしか利用できない。

●LMHOSTS/HOSTSファイルを利用する方法
 単純なテキスト・ベースのファイルにホスト名と対応するIPアドレスを記載して,それを各クライアントにコピーする方法である。

 LMHOSTSファイルは,NetBIOSによる名前解決のためのファイルである。NetBIOSネーム・キャッシュやWINSサーバーと同じ位置付けで,基本的にはWindowsでのみ利用できる。HOSTSファイルは,TCP/IPでの名前解決のためのファイルである。DNSの補助的手段という位置付けで,LMHOSTSよりも内容が単純であり,WindowsだけでなくUnix,Macintoshなどほとんどのプラットフォームで利用できる。

 従って,既にLMHOSTSファイルを利用しているのでなければ,HOSTSファイルを利用するのがよいだろう。Windows XPの場合,通常は「C:\WINDOWS\system32\drivers\etc」の下にHOSTSファイルが存在している。メモ帳などで開けば分かるが,記載内容はIPアドレスと対応する名前だけの単純なものだ。

 例えば「192.168.0.1」に「Testhost」というホスト名でアクセスできるようにする場合, 192.168.0.1 Testhost
という行をHOSTSファイルに追加するだけでよい。

 少ない台数であれば確実な方法だが,各クライアントすべてにHOSTSファイルをコピーしなければならないため,変更が頻繁になるのと,台数が多くなるとメンテナンスが難しくなる。

●WINSサーバーを利用する方法方法
 NetBIOSの仕組みを利用して,WINSサーバーに名前解決のための情報を収集する方法である。「NetBIOSによるネームキャッシュ利用」のように各クライアントがネーム・キャッシュを持つのではなく,WINSサーバーが名前解決のための対照表を作成,管理し,クライアントはWINSサーバーに問い合わせることで名前解決する。従って,大規模なネットワークでのNetBIOSによる名前解決は,WINSサーバーを利用する必要がある。

 動的な更新をサポートしており,クライアント側のIPアドレスの変更にも追従させることができる。このように,DNSサーバーと同様の機能を提供できるが,基本的にはWindowsネットワークでの利用に限定される。

●DNSサーバーを利用する方法
 イントラネット用にDNSサーバーを設置し,そこにホスト名を登録することによって名前解決を行う。インターネットの名前解決と同様の標準的な方法であり,マルチ・プラットフォーム環境にも簡単に対応できる。非常に理想的な方法である。また,DNSの動的更新を利用できるDNSサーバーであれば、各クライアントとの連携によってIPアドレスが変わった場合でも,整合性を保てる。

 通常,Active Directory環境においては,動的更新に対応するDNSサーバーを利用する必要があるため,サーバー,クライアントともActive Directory環境に参加しているなら,特に問題なく名前解決が行われるだろう。

 Windowsによるイントラネットでは,特に名前解決の方法を意識しなくても,結果的にサーバーのホスト名(=コンピュータ名)でアクセスできる場合もある。ただし,その場合,Windowsマシンからしか名前解決ができない可能性もある。従って,基本的には既にイントラネットで使われている方法に沿うべきだが,特に複数のプラットフォームが混在する場合などは,イントラネットにおいてもDNSによる名前解決を検討すべきである。

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 今回解説したように,IPアドレスと名前解決の方法をきちんと確認できれば,安定的に同じ名前でサーバーにアクセスできるようになる。どちらにしてもイントラネットの環境によって状況が変わってくるため,ネットワーク管理者としっかり相談して確認することが必要となる。

 Webサーバーをインターネットに公開する場合には,今回の作業に加え,「プロバイダへの確認」「ルーターの設定」などの作業が必要になる。次回はWebサーバーをインターネットに公開するときに必要な作業について解説する。