COBOL資産を生かして開発

図3●代理店支援システムの内部処理の概要
Webサーバー,アプリケーション・サーバー,データベース・サーバーの3層構造になっている。それぞれ12台でNLB(ネットワーク負荷分散),12台でCLB(コンポーネント負荷分散),2台×6組でMSCS(Microsoft Cluster Service)を行っている。各アプリケーションは,なるべくモジュールを共有することで,開発効率,メンテナンス効率を向上させている。サーバーのCPUはすべてXeon MP(動作周波数900MHz)。番号の順にデータが流れる。

 SOMPOJ-NETの内部は,Webサーバー,アプリケーション・サーバー,データベース・サーバーの3段構えになっている(図3[拡大表示])。ここで稼働するWebアプリケーションの開発には,Visual Studio 6.0を使った。

 開発のポイントは,(1)データのフロー・コントロールを行うモジュールを分けたことと,(2)システム全体にとって共通のプログラム・モジュールをインクルード・ファイルとして分けたこと,(3)メインフレームのCOBOL資産を継承したこと――である。

 第1のフロー・コントロールの考え方は同社独自のものだ。よくいわれる「プレゼンテーション・ロジック」「ビジネス・ロジック」「データ・アクセス」の3階層を細分化することで,画面遷移と背後の処理を仲介させる。

 第2のインクルード・ファイルは,よく使われるテクニックである。同社では例えば,何度も送信ボタンを押してしまう操作を判別する,ログインしているユーザーが再びログインするのをチェックする,といった機能をインクルード・ファイルにして共通化した。

 第3のCOBOL資産の継承は,マイクロフォーカス製の開発環境「Net Express」を使い,COMコンポーネント化することで実現した。具体的には,データを保険契約の内容としてチェックするようなプログラムである。

処理性能の見積りをインテルが支援

 開発は2000年8月にキーになる開発者が集まりスタートした。当初,VBの技術者は多くても,COM+のことが分かっている技術者は数名しかいなかったため,立ち上げの苦労があった。2000年秋にマイクロソフトから講師を招き,約40人の技術者を集めてキー・パーソンを育てる講習会を実施した。

 2001年5月にはシステムの方向性が決まり,2001年末に完成。2002年に入って動作テストを繰り返し,2002年6月スタートにこぎつけた。開発チームは,最盛期には約400人が約半年にわたって開発を続けるという,かつてない大規模なものだった。

 システム構築に当たってインテルが支援をした。同社はプロセッサ・メーカーとして有名であるが,同社のコンサルティング業務はあまり知られていない。インテルは,全体のトランザクションに対して,OSは何にしたらいいか,いくつのCPUを搭載したサーバーを何台配置すればいいかといったことを,プロトタイプのアプリケーションで実測しながら見積もってくれた。そして最終的には図3にあるようなシステム構成が完成した。

 現在,SOMPOJ-NETを利用している代理店は,まだ1万店程度である。今後徐々に従来システムからの移行を図り,現在のシステム構成で約3万5000店までは対応するという。

(木下 篤芳=kinosita@nikkeibp.co.jp)