◆ユーザーの課題◆警備保障会社のセコムは,今後5年間で関連会社を含む約3万人の社員にExchange Serverを利用させる計画だ。しかし,目標の半分である1万5000ユーザーに導入した時点で,Exchange Server 5.5のサーバー数がメールボックス用だけで10台にも達し,サーバーの障害対策に頭を悩ませていた。

◆選んだ解決策◆メールボックス用のサーバーを拡張性の高い日本ユニシスのES7000(1台)に集約した。このシステムの特徴は,ES7000を4つの論理パーティションに分割し,Exchangeで国内初となる4ノード・クラスタリングを採用した点。

◆結果と評価◆10台のサーバーを1台に集約し,クラスタ構成にしたことで,Exchange のダウンタイムを大幅に減少させ,比較的低コストで耐障害性を高めた。今後5年間のユーザー数増加にも対応しやすいと同社は考えている。

図1●セコムの既存Exchange Serverシステムとその問題
相次ぐユーザーの増加により,Exchangeのメールボックス・サーバーだけで10台ものサーバー機を運用していた。パッチの適用だけでも一苦労。
 警備保障サービス最大手のセコムは,1996年から勤怠管理や社員間の情報共有システムをイントラネットで運用している。こうした業務システムは増える一方で,2001年には50システムを超え,Windowsサーバーの台数も60台を上回っていた。この中で,最もサーバーの台数を使っていたのは,Windows NT 4.0上で稼働するExchange Server 5.5だった。Exchangeのユーザー数が1万5000に達した時点で,Exchangeのメールボックス用だけで10台を数えていた。

 しかも同社のサーバー台数は,将来も増え続けることが見込まれていた。2001年から5年間でセコム・グループ各社の全社員数に相当する3万ユーザー向けに,Exchange Serverを増強する計画があったからだ。他のシステムも増え続けており,このままではサーバー台数の“爆発”が避けられなくなってきた(図1[拡大表示])。

サーバーの運用管理に危機感

 セコムのシステム構築・運用を担当するセコム情報システムがサーバー台数の“爆発”に危機感を持ったのは,2001年に大流行したコンピュータ・ワーム「CodeRed」「Nimda」などの騒動がきっかけだった。セコム社内で稼働する60台以上のWindowsサーバーは,「1996年以降,必要に応じてその都度増やしてきたため,ハードウエアやWindowsのバージョン,アプリケーションの種類がバラバラだった」(セコム情報システムの寺井康悦社会システムIT本部企画推進部担当部長)。修正パッチを適用するにしても,各サーバーの構成に配慮した対応が不可欠であり,運用効率が非常に低下していた。従来の管理手法に限界を感じたセコムは,2001年からサーバー統合を推進し始めた。

 まず手を付けたのは,Exchange Server以外の業務システムだ。同社は2001年10月に,日本ユニシスの大型PCサーバー「ES7000」を導入して,業務システムのサーバー統合を開始した。このときは700MHz動作のPentium IIIを32個搭載するES7000を6パーティションに分割し,2パーティションごとに本番系-待機系のクラスタ構成とした。OSはWindows 2000 Advanced Serverである。このES7000上では,2002年10月時点で16システムが動いている。

 セコムはES7000の導入について,「クラスタリングによってシステムの冗長性を確保できた。システムの数が増えた場合も追加投資がほぼ不要であるほか,運用コストの増加も抑えられるようになった」(セコム情報システムの寺井担当部長)と評価している。この好結果を基に,Exchange ServerもES7000に集約することに決めた。

(中田 敦=anakada@nikkeibp.co.jp)