利用ユーザー数は段階的に増加
拡大に合わせてサーバーを追加

図2●2001年初めのプロジェクト開始から徐々にMetaFrameのユーザー数を増やしてきている

 MetaFrameのユーザー数は段階的に増やすようにした(図2[拡大表示])。

 2001年の初めにプロジェクトを立ち上げ,トレーニングや調査を経てパイロット・テストに入った。2001年4月時点で30ユーザーで利用を開始。その後,2001年8月に管理職に対象を広げ約150ユーザー,2002年5月からは全MRが利用できるようにしユーザー数も1250と一気に増やした。

 現在では,オフィスで勤務している社員も利用するようになってユーザー数も1550まで増えている。例えば,256ビット/秒程度の回線でしか接続していない事業所などではPHS接続のMetaFrameの方が高速なことがあるためという。

 もちろん,ユーザー数の拡大に合わせてサーバーの数も増やしている。現在は,もっともよく使うアプリケーション向けの接続に5台のサーバーを利用している。同時に接続するユーザーを最大約250人と想定し,1台当たり50ユーザーまで対応可能と考えて5台のサーバーを設置した。これらの工夫で実際にLANで使っている場合と,ほとんど変わらない速度で利用できているという。MetaFrameサーバーの増設は,同じアプリケーションならば,サーバーの内容をコピーするようなもので比較的簡単であった。

人命に関わることもあるので災害対策には万全の配慮を

図3●サーバー群は通常時は川崎にあるIBMのデータ・センターにアウトソーシングしているが,災害時には大阪にあるバックアップ・サーバーに自動的に切り替わる構成にしている

 アベンティス ファーマがシステム構築にあたって気を遣っているのは,障害への対策である。取り扱っている商品が医薬品であり,万が一システム障害などが発生して商品が出荷できなくなったりすると最悪の場合は人命に関わることもあるからだ。

 そこで,システムのバックアップにCD-Rを利用することにした。CDにサーバーの情報をイメージで記録しておくことで,トラブルが発生した場合にテープよりも迅速に復旧できる。バックアップはサーバーのシステムに変更が加わったときにのみ作成すればよく運用も簡単である。

 また,さらに大規模な災害への対策も想定している。サーバー群を設置している川崎のデータ・センターに火災などの災害が発生した場合には,大阪に設置してあるバックアップ・サーバーに自動的に処理が切り替わるようになっている(図3[拡大表示])。

MetaFrameの導入効果にほぼ満足
文字入力やスクロールには注文が

 MetaFrameを導入したことについては,前述したように期待通りの効果が得られており,ほぼ満足している。しかし,決してMetaFrameが万能だと思っているわけではない。

 「今回のシステムはMetaFrameのソリューションに向いていた」(宮川氏)と振り返る。具体的には,情報の参照が主で,ユーザーの操作もほとんどがメニューからの選択形式であったことが大きいという。

 MetaFrameでは,例えば文字入力や表のスクロールなどを実行した場合は表示が遅くなる。アベンティス ファーマでは今後,開発部門向けの実験管理システムといった他のアプリケーションに対してもMetaFrameの利用を考えているが,そのためにもこれらの部分の改善を期待している。

(根本 浩之=nemoto@nikkeibp.co.jp)