社員間の共同作業にはExchangeとSharePointを活用

 もう1つのe-WorkStyleは,社員同士の情報共有や共同作業を支援する情報系のシステムを構築するプロジェクトである。やはり,こちらもサーバーOSとして,Windows 2000 Advanced Serverを採用。その上でグループウエアのExchange 2000 Serverを稼働させ,電子メール,予定表,会議室予約,ディスカッション・フォーラムといった機能を利用できるようにした。同時に,SharePoint Portal Server 2001を併用して,運航マニュアルといった社内文書の管理や検索も実現している。

 もちろん,これまでもメールや社内文書の検索は実現していた。しかし,その浸透度はJALの各部門や関連会社によってばらつきがあった。しかも,文書ファイルへのアクセスも細かく管理できておらず,必ずしも適切に利用できる状態とはいえなかった。

 今回の新システム構築に当たって,全グループ社員の4万人にActive DirectoryのIDを配布する。これにより,関連会社まで含めたグループ全体で統一した情報環境を利用できるだけでなく,SQL Serverで各社員のプロファイルを管理し,社員単位で適切な情報を提供することも可能になる。既にActive Directoryには1万人弱の社員を登録しており,今後残りの3万人を登録する予定だ。

図2●Active Directoryへユーザーを登録するためにJALが用意した仕組み
「JALグループイエローページ」と呼ぶ独自の社員ディレクトリ・サービスを構築し,その情報をADSI経由でActive Directoryに自動登録するプログラムを用意した。JALグループイエローページにはCSV形式のファイルから登録するほか,基幹系システムのユーザー情報と連動できるようにしている。最終的にはグループの全社員4万人を登録する予定。

全社員の4万ユーザーを効率的に登録する仕組みも用意

 ユーザーを効率よく登録できるように,「JALグループイエローページ」と呼ぶ独自の社員ディレクトリ・サービスを用意した。e-WorkStyleを利用するグループ会社には,各社の人事情報をこのJALグループイエローページに事前登録してもらう(図2[拡大表示])。そこに登録された情報から夜間のバッチ処理でADSI*を介してActive Directoryにユーザー・アカウントやセキュリティ・グループを登録する。

 さらに,SAP R/3に登録されたユーザー情報があれば,それと連動してJALグループイエローページに登録する。既にe-JALの利用を開始した部門や会社ならば,改めてJALグループイエローページに登録しなくてよい。e-JALをまだ使っていない会社のみCSV形式のファイルで登録する。

 今回利用するActive Directoryは,新システムに合わせて構築したものだ。国内のグループ全体で1ドメインを構成し,外部向けに用意しているjal.co.jpとは別に社内向けのDNS*を設置した。現在のところ,数Gバイト単位のメモリーを搭載した4台のドメイン・コントローラ*を設置して1万人のユーザー認証を処理している。今後,ユーザー数の増加などで負荷が増大した場合には,マシンを追加するなどドメイン・コントローラを強化することを考えている。

Advanced Serverでクラスタを使いシステムの信頼性向上を図る

 JALが導入したWindows 2000 Advanced Serverは最大8CPUで2ノードのクラスタまで利用できる。基幹系システムを中心に信頼性が求められる一部のサーバーに対して,Microsoft Cluster Serverで2重化して耐障害性を高めた。なお,上位版で32CPU/4ノード・クラスタが利用できるDatacenter Serverはシステムの計画段階で正式出荷されていなかったため,導入は考えなかったという。現在のところ,Advanced Serverで特に大きな問題や不満は発生していない。

 図1に示した実運用のWindows 2000サーバー約90台以外にも,SAP R/3向けの開発機およびテスト機として約70台を設置している。ハードウエアは,いずれも日本IBMのeserver xSeriesを採用した。ラック型の370モデルを中心に,Windows 2000 Advanced Serverで使える2CPUまたは4CPUのモデルを利用している。

(根本 浩之=nemoto@nikkeibp.co.jp)