▼Windows 2000のメインストリーム・サポート・フェーズが6月30日で終了する。今後のサポート内容は,有償の延長サポートと無償のセキュリティ更新プログラムや技術情報の提供に縮小される。
▼有償サポートを契約しないと,不具合を修正するためのプログラム(パッチ)は入手できない。重要なサーバーはWindows Server 2003への移行を今すぐ検討すべきだ。

図1●Windowsのサポート期間
Windows 2000は6月30日にメインストリーム・サポート・フェーズが終了する。7月以降のバグ修正には,有償のサポート契約が必要。セキュリティ更新プログラムは,2010年まで提供される。Windows Server 2003 R2はWindows Server 2003のアップデートと位置付けられ,サポート期間はWindows Server 2003と同じになる。
表1●マイクロソフトがサポート・ライフサイクル・ポリシーで定めたサポート内容と期間
2002年10月に発表され,詳細が明文化された。
表2●Windows Server 2003へ移行するときの注意点とWindows 2000を継続利用するときのリスク
図2●Longhornの「新機能」の現在
2003年11月の「PDC 2003」で示された5つの新機能のうち,方針に変更がないのは,新しいシェルである「Aero」だけになった。
 6月30日でメインストリーム・サポート・フェーズが終了するのは,Windows 2000ファミリを構成するWindows 2000 Server,同Professional,同Advanced Server,同Datacenter Serverの全製品である(図1[拡大表示])。

 メインストリーム・サポート・フェーズは,有償/無償のすべてのサポートが提供される期間を示す。有償のプレミア・サポート*プロフェッショナル・サポート*などと,無償の更新プログラム(パッチ)やWebサイトのサポート技術情報などが利用できる。7月1日以降,Windows 2000のサポートは,無償提供するセキュリティ更新プログラム(セキュリティ・パッチ)とサポート技術情報,有償の「延長サポート」で提供するパッチだけになる。

 こうしたサポートの縮小は,マイクロソフトが2002年10月に発表したサポート・ライフサイクル・ポリシー◆1に基づいて実施される(表1[拡大表示])。このポリシーは2004年5月に改訂され,メインストリーム・サポートの期間は「製品発売から5年間または,後継製品の発売から2年間のうち長い方」になった。今回はWindows Server 2003の発売から2年が経過したため,Windows 2000のメインストリーム・サポート・フェーズが終了する。「現時点で,Windows 2000ユーザーからメインストリーム・サポート期間延長の要望は,ほとんどないため,延長予定はない」(マイクロソフトの藤本浩司サーバープラットフォームビジネス本部Windows Server製品部マネージャ)という。

SP4向けのパッチ集を公開

 メインストリーム・サポートの終了に合わせて,6月29日にはWindows 2000Service Pack 4以降のパッチをまとめた「Windows 2000 SP4対応の更新プログラム・ロールアップ1(UR1)」が公開された。UR1は,Windows 2000 SP4の後に公開された51項目のセキュリティ・パッチと,Windowsの不具合を修正するセキュリティ以外のパッチが含まれている。新機能を提供するような修正は含まないが,UR1を適用するだけでWindows 2000を最新のセキュリティ状態にできる。UR1は,マイクロソフトのダウンロードセンター◆2またはWindows Updateのサイト◆3からダウンロードできる。

 当初,マイクロソフトはWindows 2000のService Pack 5を提供すると見られていたが,サービス・パックは用意しない。同社は,「アップデート・ロールアップに含まれる多くのプログラムは,既に提供済みで,適用前のテストが容易になる。より簡単にシステムのセキュリティを向上できる」と,メリットを説明している。なおサービス・パックは,「次期版のOSを出荷する以前に多数の更新プログラムや新機能を提供するためのもの」と,マイクロソフトは位置付けている。

有償サポートは一般的ではない

 7月以降,Windows 2000を利用しているユーザー企業はどう対応すべきだろうか。まず有償サポートを契約するかどうかを決める必要がある。

 今回のサポート縮小によって,OSの不具合を修正するためのプログラムは,無償提供されなくなる。今後もその提供を受けるためには,有償の延長サポート・サービスを契約しなければならない。マイクロソフトによると,6月時点で数十社と延長サポートを契約するための相談を進めているという。

 ただし,延長サポートの料金は非公開だが最初の1年間で数百万円程度といわれている。サポート契約は,企業ユーザーごとの年間契約となり,料金はサーバーの台数に依存しない。詳細は,マイクロソフトのサポート・サービス部門やパートナに確認しておきたい。そして延長サポートの申し込みは,7月1日以降,90日以内にしなければならない。

 このように料金が高く,急いで申し込む必要があるため,延長サポートの利用は一般的ではない。「延長サポートを利用するのは,Windows 2000サーバーで基幹系システムを動作させており,プログラムを今後も追加していくような場合に限られるだろう」(マイクロソフトの藤本氏)。こうしたシステムでは,今後も不具合が発生する可能性がある。その原因がWindows 2000にあれば,延長サポートの契約によってマイクロソフトが提供するパッチを使って,解決できるだろう。

 一方,延長サポート契約をしない場合は,利用中のWindows 2000サーバーのシステム構成に大きな変更を加えないようにしなければならない。今後5年間はセキュリティ・パッチが提供され,セキュリティ上は心配ないものの,システム構成を変更すれば未知のバグに遭遇する確率が高まる。こうした場合,Windows 2000のパッチが入手できないと,トラブルを解決できないかもしれない。

 しかし,構成変更はハードウエアの保守部品切れなどでも必要になる。有償サポートを契約しないと決断したとき,移行は早晩避けられないだろう。

重要サーバーは移行の検討を

 Windows Server 2003への移行を検討するなら早い方がよい。

 まず,Active Directoryや基幹系システムなど重要な機能を担うWindows 2000サーバーは,即座に移行を検討したい。マイクロソフトのサポート縮小で,サーバー・ハードの対応OSから外れたり,将来的にベンダーからの技術サポートが受けられなくなったりするリスクの影響が大きいためだ(表2[拡大表示])。

 実際にWindows 2000 ServerからWindows Server 2003へ移行するとなると,時間がかかることも,早めの検討が必要な理由だ。NTTデータ先端技術SE部でサポートを担当する山岸真人氏は,「Windows NTサーバーは小規模なシステムで使われていることが多かったが,Windows 2000は全社規模で使われている例がある。事前調査を徹底するなど,移行作業で注意すべき点は以前より多い」と指摘する(図2[拡大表示])。

 意外に見過ごしがちなのが,Active Directoryと連携する認証機器やネットワーク接続型ストレージ(NAS)などだ。「Active Directoryの情報をどんな機器やソフトが利用しているか,すべて把握して,それらがWindows Server 2003で動作するかを調べておかなければならない」(山岸氏)。

 例えば,SSL-VPNを利用するための専用機器のように,安定稼働しているものは検証を忘れがちだという。場合によっては,Windows Server 2003へ移行すると同時に,こうした機器のファームウエアをアップグレードする必要がある。

 サーバー移行にはいくつかの方法があるが,その中から自社のシステムに合ったものを選定するための検証作業も欠かせない。例えば,新しいWindows Server 2003を用意して,ADMT* でユーザー・データを移行する方法を検討したとしよう。だがこの方法では,ドメイン名が変わってしまい,クライアント側の設定変更が生じる。同じドメイン名にしたいときは,Windows Server 2003をクリーン・インストールした元のサーバーへ,ADMTでユーザー・データを戻すような作業を検討しなければならない。

2003用のCALが必要になる

 Windows Server 2003に移行するときには,システム規模に応じたライセンス料も予算化が必要だ。特にWindows Server 2003用の「Windows Server CAL*」を忘れてはならない。

 Windows Server 2003では,CALは同サーバーのサービスを利用するとき全般で必要となる。既にLAN上にWindows Server 2003がある場合は2003用のCALを購入しているかもしれないが,再確認したい。2003用のCALの参考価格は,Open Licenseというライセンス・プログラムの場合,1ユーザー当たり5200円である。

 こうした移行の手間やライセンス料などのコスト負担を考えると,Windows Server 2003への移行は簡単ではないかもしれない。しかし,Windows 2000サーバーにセキュリティ・パッチを当て続けて,Longhorn Server (開発コード名)の出荷を待つときは,Windows 2000からの移行手段がきめ細かく用意されないという可能性も考慮しておきたい。

 マイクロソフトはWindows Server 2003へ移行したときに削減できる運用管理コストや,セキュリティの強化を訴えて,移行を推進していく考えだ。

 「Windows Server 2003はSP1でさらにセキュリティが強化された。情報保護技術であるIRM*にも対応している。サポート縮小のタイミングでWindows Server 2003の魅力を改めて訴えたい」(藤本氏)という。

(坂口 裕一)