本当の自律機能は1年以上先
現時点では,いずれもアプリケーションに割り当てるCPUやメモリーなどのリソースの変更を簡単にできるようになったのみで,どのアプリケーションにどのリソースをどれだけ割り当てるかといった判断や,その指示は運用担当者が自分で行う。こうした自律機能がサーバーに搭載されるのは,少なくとも1年以上先の話だ。
富士通研究所が開発を進めるオーガニック・サーバ*1では,各サーバー上で稼働するエージェントが相互に稼働状況を通信しあい,エージェント自身の判断でプロセスを起動したりダウンさせたりできる*2。ただし「製品化は2004年以降となる見込み」(富士通研究所 ITコア研究所 ITアーキテクチャ研究部長 木村康則氏)。
また,「各サーバーにGridコンピューティング*のエンジンを搭載して,遠隔地にあるリソースを相互に共有することも視野に入れている」(Hewlett-packard,Always On Infrastructure Solutions Division Director,Nick van der Zweep氏)と各社が口をそろえるが,ロードマップを明らかにしているメーカーはない。
(2)どのような作業から解放されるか |
仮想化によって楽になるのは,過負荷や新しいアプリケーション稼働に伴う,システム/ネットワーク構成の管理である。例えばWWWサーバーを増設する際には通常,サーバーを用意し,サーバーをネットワークに接続/設定し,アプリケーションをデプロイし,負荷分散装置の設定変更する,といった一連の作業が必要になる。
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図3●自律コンピューティングによる運用担当者の作業の変化 運用担当者の作業をシステムに代替させるのが,自律コンピューティングの狙い。サーバーの増設作業を例に挙げると,メーカーが仮想化技術を実装した製品を投入してきたことで,画面上の操作だけで済むようになる |
サーバーを仮想化すると,そのアプリケーションで使うリソースを画面上で選び,構成変更を指示するだけで,増設が完了する(図3[拡大表示])。もちろん,あらかじめ予備のリソースを用意しておくことが前提だが「アプリケーションごとにリソース計画を立てないで済むことや,すべてのアプリケーションが常にリソースを100%使っているわけではないことを考えると,コスト的なメリットも出るはずだ」(日本ヒューレット・パッカード マーケティング・ソリューション統括本部 インフラストラクチャ・ソリューション本部 システム・ソリューション部 ソリューション・プログラム・マネージャ 小檜山淳一氏)と主張する。
現状は大規模サーバー・ファーム向け
これらの機能が有用なのは,データ・センターなど大規模なサーバー・ファームに当面は限られそうだ。各社とも大規模システムを想定したラインナップを中心にそろえている(表1[拡大表示])うえ,ある程度のリソースを予備としてプールしておかなければ意味がないため,初期投資が膨らみやすいからだ。
社内システム用途で使いやすくなるには,ダイナミックな設定変更やアプリケーション間のリソースの引き渡しなど,メーカー側でクリアすべき課題が多い(図4[拡大表示])。
データセンターやASP*のように,大量のサーバーを保有しており,かつ顧客獲得や新サービス開発に応じて必要なITリソースが上下しやすいシステムなら,運用コストの削減が期待できる。hpのZweep氏によると「欧州で先行導入したユーザーでは,物理的な配置にかかる作業で30~80%,キャパシティ・プランニングで5~40%での工数削減に成功した」と言う。
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