短期開発,低運用コストが可能に

図1●従来型EDIにおける課題とBtoBサーバー・ソフトによる改善点
従来型のEDIでは開発負担が重く,運用コストも高い。BtoBサーバー・ソフトを使ったEDIでは,GUIツールを提供することで開発負担を下げる,インターネットを活用することで運用負担を下げるなど,従来型の課題を改善している
図2●BtoBサーバー・ソフトを使ったEDIの例(Microsoft BizTalk Serverを使った場合)
EDIシステムを構築するには,通信機能,データ変換機能,システム間連携機能が必要になる。BtoBサーバー・ソフトは,GUIツールで設定するだけでデータ変換やシステム間連携を実現する製品が多い

 新しく登場してきたBtoBサーバー・ソフトは,従来型EDIのコスト要因を抑える機能を提供する(図1の下[拡大表示])。 WWWブラウザを使うシステムのように人手を介さないため,大量データの取引にも対応できる。EDIシステムに必要な,(1)通信機能,(2)データ変換機能,(3)システム間連携機能のそれぞれについて,BtoBサーバー・ソフトにはどのような機能があるかを順に見ていこう(図2[拡大表示])。

 (1)通信機能では,ネットワークのプロトコルにTCP/IPを採用し,FTPやHTTPを使ってデータを送受信する製品が多い。TCP/IPを採用すれば,インターネットを活用することでネットワーク・コストが削減でき,モデムや通信ソフトの価格も安くなる。

 (2)データ変換機能は,EDIFACTANSI X.12などの各種標準データ・フォーマットに対応したGUIツールを提供する。これまでデータ変換プログラムは手組みで作ることが多かったが,GUIツールを利用することで開発効率が高まり,短期開発が可能になる。

 データ変換機能には,XMLを内部で使う製品が多い。変換対象のデータを一度XML形式に変換し,XML形式のデータを保存したり変換したりする。XMLはタグでデータを表現するため柔軟性が高く,仕様変更によるプログラムの修正が少なく済む。

GUIツールで処理を記述

 (3)システム間連携機能は,RDBMSや市販パッケージ,メッセージ・キューイング・ソフトなどへの接続アダプタを提供する。接続アダプタを利用することで,作り込み部分を減らすことができる。

 さらに,ワークフローやビジネス・プロセスを,GUIツールで提供する製品が登場してきた。例えばMicrosoftのBizTalk Server 2000は,COMコンポーネントを呼び出すようなフロー・チャートを,同社のグラフィックス作成ツール「Visio」ベースのGUIツールで作成し,設定したプログラムを自動生成することが可能だ。また,米Vitria Technologyの「BusinessWare」やアイルランドIONA Technologiesの「XDI Server」などは,GUIツールで作成したプログラムの実行監視機能も提供する。

 BtoBサーバー・ソフトを利用すれば,基幹システムに連携処理用のプログラムを埋め込むのではなく,連携プログラムを基幹システムから独立させることが可能だ。そうすることでプログラム開発の難易度が下がり,プログラムのメンテナンスが容易になる。このようなEAI機能を持つ製品や,EAIツールに通信機能を付加したBtoBサーバー・ソフトも増えている。

インターネットは安くない

 ここまで見てきたように,BtoBサーバー・ソフトを使えば,インターネットによって運用コストが削減でき,GUIツールによって開発期間が短縮できる。だが,BtoBサーバー・ソフトには課題も多い。注意が必要なポイントは,(1)既存システムとの互換性,(2)インターネットを使う場合のセキュリティ,(3)製品の価格と標準化の動向――である。

 (1)既にEDIシステムを構築している場合,BtoBサーバー・ソフトが既存のEDIのデータ形式や通信手順に対応しているかどうかが重要になる。EDIの仕様は自社企業の都合だけでは変えにくいため,BtoBサーバー・ソフトには従来型EDIへの対応が求められる。

 しかし,BtoBサーバー・ソフトは既存のEDIに対応していない製品が多い。国内では全銀協手順JCA手順などを採用している場合が多いが,外国製のBtoBサーバー・ソフトはこれらの国内標準に対応していない製品が多い。対応しているデータ形式や通信手順に注意しよう。

 (2)インターネットを利用するにはセキュリティ対策が欠かせない。相手先企業を特定し,改ざんを予防し,盗み見されない仕組みが必要だ。セキュリティ対策にはPKIを基盤にすることが考えられるが,「PKIを基盤にきちんと運用するのは大変」(インフォテリア 江島氏)だ。カギを安全に配布したり,証明書の有効や無効を管理したりするのは手間のかかる作業である。また,従来のVAN会社が行っていたログの保管などは,BtoBサーバー・ソフトが代行しなければならない。安全に取引を行うにはインターネットは決して安くはない,というわけだ。

製品価格はまだ高い

 (3)現時点では,高価な製品が多いことにも注意したい。導入するのに最低でも数千万円かかる製品がある。従来型EDIは,コストが高いために普及しなかった。新しいBtoBサーバー・ソフトは,同じ失敗を繰り返さないように,ぜひ,廉価版を提供してほしい。

 また,インターネットを基盤にした企業間取引の標準化仕様は現在策定中のものが多いし,将来的にどれかの標準仕様を使うことは十分に考えられる。そのため,「まずは安い製品で試してみる」(川鉄情報システム EC/EDIソリューション事業部EC/EDI営業部企画グループグループ長の丸谷睦氏)という判断も必要になる。

 製品価格が高いため,サービスとして提供する企業も現れてきた。野村総合研究所の「BizMart」は,WWWやXML技術などを使ったEDI機能を提供するサービスである。既にイトーヨーカドーや国分,ジャスコなどが,取引先企業との受発注にBizMartを使っている。

(松山 貴之=matsuyam@nikkeibp.co.jp)