従来型EDIは,コストが高いという課題を抱えている。新しく登場してきたBtoBサーバー・ソフトは,インターネットの利用やGUIツールの提供で運用コストを抑え,開発期間を短くすることが可能だ。一方で,実際の導入に際しては,(1)既存EDIとの互換性,(2)セキュリティ,(3)製品価格の高さ――に注意する必要がある。

表1●日本国内で販売されている主なBtoBサーバー・ソフト製品
(*は出荷予定の製品)
 BtoB(企業間電子商取引)システムを構築するためのソフトウエア製品が,日本国内でも急増している。米Microsoftの「BizTalk Server 2000」やインフォテリアの「Asteria」,米Peregrine Systemsの「Extricity B2B」など,15製品が既に国内で出荷済みで,2製品が出荷予定である(表1を参照[拡大表示])。

 これらの製品はいずれも,インターネットやXMLへの対応や,各種GUIツールの提供により,従来型のEDIの仕組みよりも,早く,安くBtoBシステムを構築することを目指した製品である。こうした共通的な機能を備えた製品を,本記事では「BtoBサーバー・ソフト」と分類した。BtoBサーバー・ソフトのメリットは何か,どんな機能を備えているのか,導入するにはどのような点に注意しなければならないか――をまとめた。

EDIの問題はコストの高さ

 これまで,企業間の電子的なデータのやり取りと言えば,「EDI(Electronic Data Interchange:電子データ交換)」があった。受発注のデータを専用線や一般公衆回線,VANを使って送受信する,という方法である。この従来型のEDIは,企業間で電子データ交換を行う手段として10年くらい前から利用可能であったにもかかわらず,「(従来型のEDIは)大企業を中心に利用しており,中小には広まっていない」(インフォテリア 事業開発部エバンジェリスト 江島健太郎氏)。

 EDIが中小企業にまで広まらなかった理由は,コストの高さにある(図1[拡大表示])。専用線やVANにかかるコストは高い。従来型EDIのモデムや通信ソフトは,専用の製品が必要になるため価格が高い。

図1●従来型EDIにおける課題とBtoBサーバー・ソフトによる改善点
従来型のEDIでは開発負担が重く,運用コストも高い。BtoBサーバー・ソフトを使ったEDIでは,GUIツールを提供することで開発負担を下げる,インターネットを活用することで運用負担を下げるなど,従来型の課題を改善している

 さらにコスト負担が大きいのが,プログラム開発費である。EDIシステムのために開発しなければならないプログラムには,(1)外部とのやり取り用のデータと,社内システム用のデータを相互に変換する「データ変換プログラム」,(2)基幹システムなどと連携する「システム間連携処理プログラム」,の2つがある。

 BtoBシステムを構築する場合,「数十のデータ変換プログラムが必要だった」(ベイテックシステムズ 代表取締役 EC・EDI事業部 原口豊氏)というように,たくさんのデータ変換プログラムを作らなければならない場合が多い。また,システム間連携プログラムは,基幹システムに手を加える方法が一般的に行われており,この方法ではプログラム開発は難しく,プログラムのメンテナンスも困難になるケースが多い。

 一方,インターネットが広まったことで,WWWブラウザや電子メールを使って企業間電子商取引を行う事例も多くなった。ただ,WWWブラウザや電子メールを使ったBtoBシステムでは人が操作することが多く,取引量が増えると処理が煩雑になるというデメリットがある。大量データの取引が想定される場合は,WWWブラウザや電子メールを活用する方法は適さない。

(松山 貴之=matsuyam@nikkeibp.co.jp)