届け先を複数指定できるように

 以前の注文の手順では,カートに商品をいくつ入れても,届け先を1カ所しか指定できなかった。複数の届け先に花を送る場合,1つ目の届け先を指定して決済をしたあと,2つ目の届け先のために,また商品選択からやり直さなくてはならなかった(図2[拡大表示])。

 hibiyakadan.comにおける買い物1回あたりの平均注文個数は1.5~1.8個である。「いちばん売れる母の日のカーネーションをよく買う20代後半から40代前半のユーザーは,自分の母親と配偶者の母親にそれぞれカーネーションを送るケースが多い」(日比谷花壇 EC事業部 副部長の五十嵐 豊氏)。

 リニューアル後は,カートに入れた商品ごとに届け先を指定できる。商品を選び終わってレジに進んだとき,カートに入れた商品ごとに,届け先を指定するメニューがある(写真2)。

図2●複数の届け先に花を贈る方法を改良
リニューアル前はカートに入れた商品は1カ所にしか送れなかったが,リニューアル後はカートに入れた商品ごとに届け先を指定できるようになった
写真2●商品ごとに違う届け先を指定可能に
リニューアル前はカートに入れた全商品に対して届け先を1カ所しか指定できなかった。リニューアル後は,カートに入れた商品ごとに届け先を指定できるようになった。カートに複数の商品を入れると,商品ごとに写真のようなメニューが表示される

商品を探しやすく

写真3●用途と予算を組み合わせて探せるように
以前は用途だけ,または予算だけでしかプルダウン・メニューから条件を選択できなかったのを,用途と予算の両方を組み合わせられるようにした。また,商品を探すための条件を指定するプルダウン・メニューを画面左側に配置した。以前は,ページの下のほうにあり,表示画面の小さいパソコンではスクロールしないと見られなかった
図3●TG Dynamoでユーザーのし好についての情報を収集する
メンバーIDなどを使って,サイトの訪問者がどの商品に興味がありそうかといった情報を収集している。1年後から本格的にリコメンデーションを開始する予定である
 目的の商品を探し出す操作も改善した。リニューアル前は,金額と用途のプルダウン・メニューを用意してカテゴリを絞りこんで商品を探してもらっていた。しかし,ユーザーの多くは,目的と予算の両方をあらかじめ考えており,使いづらいものであった。リニューアル後は,金額と用途を組み合わせて商品を探せる形に変更した。

 また,花の用途や価格帯を指定するプルダウン・メニューが,表示画面の小さいノート・パソコンでもすぐに見えるようにページの左側上方に移動した(写真3)。従来は,ページの下のほうにあり,スクロールしないと見られなかった。「今考えると,Webで商品を探し出せること自体に価値があると考え,利便性についてはあまり考えていなかったかもしれない」と五十嵐氏は振り返る。

ユーザーのし好を収集する

 今後は,主に登録会員に対してユーザーごとにし好に合った商品を薦める「レコメンデーション機能」を実装する予定。アートテクノロジーグループのリコメンデーション・システム「ATG Dynamo 4」を使う。ATG Dynamoはルール・ベースのリコメンデーション・システム。会員が見たページなどの情報を収集して「赤いバラの花のページを多く見ている会員にピンクのバラも薦めてみる」などのルールを作る。

 花を買う場合,買う花と目的を決めていることが多く,リコメンデーションは特に必要ないかに見える。しかし実際は「母の日に贈るカーネーションにしても花の色,花束か鉢植えかでいろいろあり,またカーネーション以外の花もあるなど,商品数は50以上になる」(五十嵐氏)。できるだけ多くの種類の商品が売れるように,傾向を分析して仮説を立て,商品を紹介することにした。

 リニューアル時から,登録会員をメンバーIDで特定して,どのページを見たかといった情報を収集し,蓄積している。収集した情報をもとに花を薦めるので,登録会員に対して購買履歴にないような花を効果的に薦められる(図3[拡大表示])。商品の推薦を半年後から試験的に始め,ひととおりの季節のデータが集まる1年後に,キャンペーンなど本格的な運用を開始する予定だ。登録会員以外のユーザーについても,同様に情報を収集して活用することにしている。