日比谷花壇は2001年8月,花の通販サイト「hibiyakadan.com」を大幅リニューアルした。ユーザーからの苦情が多かった注文作業の手順や操作性など,合計176項目を改善した。その結果,リニューアルを境に販売点数が2.5倍と大きく伸びた。また,リコメンデーション・システムを使ってユーザーのし好についての情報を集め始めた。1年後にはユーザーの好みに合った商品の推薦を始める予定である。

(山崎 洋一=yyamazak@nikkeibp.co.jp)

写真1●贈り主情報の入力不備を指摘
リニューアル後のサイトでは,どの項目の入力内容が不備なのか,メッセージを表示して指摘する
 日比谷花壇は2001年8月,花の通販サイト「hibiyakadan.com」(http://www.hibiyakadan.com/)を全面リニューアルした。問い合わせメールや社外モニターの意見などを参考に,176項目を改善した。

 ポイントの1つは注文操作の改善。贈り主や届け先の住所,氏名などの入力に不備があったとき,JavaScriptを使って具体的にそれを指摘するようにした(写真1)。また,1回の注文で届け先を1カ所しか指定できなかったのを,商品ごとに届け先を指定できるように変更した。検索機能も改善した。

 一方で注文しやすくした。注文するには必須としていた会員登録を任意とした。リニューアル後は,贈り主と届け先を入力すれば注文できる。

 ユーザビリティを向上し,会員登録なしでも注文可能にした結果,商品販売点数は前年の同時期と比べて2.5倍と大幅に伸びた。

入力不備の個所をメッセージで示す

 日比谷花壇ではかねがね,ユーザーからの問い合わせのメールや社外モニターの意見などから,注文画面の使い勝手が悪いという認識があった。社外モニターは同社が個別に依頼して意見を言ってもらうユーザーである。とくに「注文画面で入力が難しい」,「何度もやり直さなければならない」という声が多かった。それに,ログなどから,商品をカートに入れたユーザーのうち90%が途中で購入を中断するということも判明していた。

 注文画面での問題は,氏名や住所などユーザーが入力した情報に未入力などがあった場合,それがどこの項目なのかがわからないということであった。1カ所でも未入力の項目があったり,全角で入れるべきところを半角で入力したりすると,1画面戻って入力をやり直してもらうという仕組みであった。

 花を送るには,自分の姓名を漢字とカタカナで入力し,住所や電話番号などを入れなければならない。カタカナの姓名部分を半角で入力したり,電話番号を全角で入力したりするとエラーになる。届け先の住所や姓名,電話番号の入力も必要である。これらのなかのいずれかで間違ってしまうユーザーは少なくなかった。すべての入力項目に正しく記入するまで何度も画面を行ったり来たりするユーザーもいたという。それに従来は,花を送るには会員登録が必須。初めてのユーザーはもっと多くの情報を登録する必要があった。

図1●注文の手順を改良
リニューアル前は会員登録が必須だったが,会員登録しないと花が買えないことへの不満の声が多かったため,会員登録なしでも注文できるようにした。また,入力に不備があった場合,不備があることしか分からなかったのをどこが不備なのか分かるようにした
 さらに,ユーザーのマシン環境によっては,入力に間違いがあったため前の画面に戻ると,入力したはずの情報がすべて消えてしまうこともあった。

 そこで,JavaScriptを使い注文画面内で,入力内容をチェックする仕組みを盛り込んだ。入力内容を送信するボタンをクリックしたときに,JavaScriptが入力内容をチェックする。未入力などの不備があれば,メッセージ・ボックスを使ってその内容を指摘する(図1[拡大表示])。前の画面に戻る必要がなくなり,入力した情報も消えなくなった。

会員登録を必須から任意に

 商品をカートに入れながら注文までいかないユーザーが多かった原因には,会員登録をしないと注文できないこともあった。花を選び,いざ届け先などを入力しようとすると,その前に会員登録をしなければならないことに気づき,サイトを去っていったと思われる。

 会員登録を必須にしていた理由は2つ。ひとつは,ユーザーの個人情報を収集してマーケティングに使いたかったから。もうひとつは,会員IDといちど指定した届け先情報を結びつけて記録しておき,次回以降届け先を指定するときにプルダウン・メニューから選ぶだけで済むようにしたかったからだ。

 しかし,「なぜ会員登録をしないと花を買えないのか」という問い合わせが多かったこともあり,会員登録は任意とした。贈り主と届け先の氏名と住所を入力すれば注文できる。

 前述の注文画面入力の改善と相まって,商品をカートに入れたユーザーが購買を中断する割合が,リニューアル前の90%から40%に減少した。