インターネット接続機能を備えた携帯電話の新規格「WAP2.0」が固まった。WAPフォーラムが8月にパブリック・レビュー版を公開,今年中にも仕様が確定する。WAP2.0は,携帯電話からインターネットにアクセスするプロトコルやコンテンツ記述方法などを定めた規格。独自仕様だった現行のWAP1.0と異なり,XHTML Basic,TCP/IPといったインターネット標準を全面的に採用した。これにより,インターネット上のさまざまな技術との連携がしやすくなり,機能も充実する。

(福田 崇男=tafukuda@nikkeibp.co.jp)

 インターネット接続機能を備えた携帯電話の次世代像が見えてきた。WAPフォーラムは8月1日,ブラウザ・フォンの新しい規格「WAP(無線アプリケーション・プロトコル)2.0」のパブリック・レビュー版を公開した。XHTML(拡張可能ハイパーテキスト・マークアップ言語)やTCP/IPといったインターネットの標準技術を全面的に採用し,旧版の独自仕様を一新した。

図1●WAP2.0は,携帯電話がインターネットに接続したり,データをやり取りするための規格である
旧版で独自仕様だった通信プロトコルやコンテンツ記述言語は,2.0ではインターネットの標準技術を採用している。ほかにも,さまざまな機能が新たに組み込まれている。

 WAP2.0では,コンテンツ記述言語とデータ通信プロトコルを始め,他のデバイスとの連携機能などを規定している(図1[拡大表示])。「今までのブラウザ・フォンに求められていた,あるいは課題だったもののうち,かなりの部分が解決したといっていい仕様」(KDDI au事業本部au商品企画本部長の井上 幾由氏)だという。WAP2.0に対応することで,現状のようにコンテンツ記述方式や通信方式の違いに煩わされることがなくなる。異なるサービスのブラウザ・フォンでも共通のWebコンテンツを閲覧でき,携帯電話同士でデータをやり取りできるようになる。

携帯電話サービスの共通仕様に

 現在,携帯電話サービス会社は,それぞれ独自の仕様でサービスを提供している。

 例えば,コンテンツ記述言語としては,NTTドコモのiモードがコンパクトHTML(ハイパーテキスト・マークアップ言語),J-フォン・グループのJ-スカイが「MML(モバイル・マークアップ言語)」,KDDIのEZwebが「HDML(携帯電話向けマークアップ言語)」と三者三様である。このうち,コンパクトHTMLとMMLはどちらもHTMLのサブセットで,比較的似ている。HDMLはまったくの独自言語である。

 コンテンツ記述言語はもちろん,さまざまな仕様がWAP2.0では一本化される。将来的には,どのブラウザ・フォンからでも,すべてのコンテンツが閲覧でき,同じ方式で通信するようになる。まだパブリック・レビューの段階なので若干の変更はありうるが,仕様は固まったと見ていい。正式な仕様は今年中に公開される見込みである。

表1●WAP2.0が提供する主な機能[表をクリックすると拡大表示]

WAP2.0携帯電話が秋にも登場

 現行のWAP1.0を採用しているKDDIは,この秋にもWAP2.0対応の携帯電話を発売する計画だ。携帯電話で動画を見るサービスや,位置情報サービス「gpsOne」とともに提供する。さらに,WAP2.0向けのWebオーサリング・ツールなどもリリースする。

 NTTドコモもWAP2.0への対応を決めている。FOMAの試験サービス機では,一部の仕様をすでに実装済み。WAP2.0の正式な仕様が固まり次第,対応していく計画だという。J-フォン・グループもXHTMLを採用する方針である。

 ブラウザ・ベンダーにも動きが出てきた。ACCESSは「WAP2.0だけでは,ユーザーに十分なメリットがあるとはいえない」として,ダイナミックHTMLやJavaScriptも併せてサポートするブラウザ「NetFront v3.0 Wireless Profile」を開発中である。2002年の第1四半期に出荷,携帯電話への搭載は同年後半になる。WAP2.0向けオーサリング・ツールの提供も予定している。

インターネットの標準技術を採用

 WAPは,スウェーデンのエリクソンやフィンランドのノキアらが設立した団体「WAPフォーラム」が策定している国際標準規格である。WAPフォーラムは8月1日にWAP2.0のパブリック・レビュー版を公開した。

 WAP2.0の中核であるコンテンツ記述言語は「WML(無線マークアップ言語)2」である。国際標準のXHTML Basicをベースに,Webページの表現力を高めるCSS(カスケーディング・スタイル・シート)の携帯電話向けサブセット「CSS Mobile Profile」を加えた。通信プロトコルはTCP/IP。インターネット上のサーバーとエンド・ツー・エンドでHTTP(ハイパーテキスト転送プロトコル)通信が可能になる(コンテンツ記述言語,通信プロトコルともに旧版との互換性は確保する)。

 WAP2.0では,オプション機能にもインターネット標準技術を多数採用した。例えば,データを他のデバイスと同期する「SyncML」である。これは,スウェーデンのエリクソン,米IBMなどが参加する「SyncMLイニシアティブ」が定めたデータ交換のための規約である。XMLをベースにしており,他の携帯電話やPDAなどと,メールやアドレス帳などのデータを交換できる。

 W3Cが策定した「CC/PP(Composite Capabilities/Preference Profile)」をベースにした機能も持たせた。「User Agent Profile(UAProf)」である。これを使うと,Webサーバー側でアクセスしてくるクライアントのスペックやユーザー情報などを取得できるようになる。携帯電話の種類に応じて画像の大きさを変えたり,ユーザーの属性に合った情報を提供するなど,コンテンツを最適化できる。