WML2はXHTML Basicを採用
オプション機能をいろいろと用意しているが,WAP2.0の核はコンテンツ記述言語と通信プロトコルである。
現行のWAP1.0は,国内ではKDDIのEZwebが利用している。KDDIがサービスを開始する時点でWAP1.0の仕様が固まっていなかったため,コンテンツ記述言語には,米オープンウエーブ・システムズが開発した「HDML(ハンドヘルド・デバイス・マークアップ言語)」を採用した(図2[拡大表示])。これがWAP1.0のコンテンツ記述言語であるWML1のベースとなった。
WML1は,「カード」,「デッキ」といった独自仕様をもつ言語である。HTML,コンパクトHTMLなどとは構造や文法が異なるため,コンテンツ作成やシステム連携の際には,コンテンツを変換する仕組みが不可欠だった。
こうした反省を踏まえ,WML2(WAP2.0)ではインターネット標準のXHTML Basicを採用することにした。XHTMLは,HTMLをXML(拡張可能マークアップ言語)形式で定義し直した言語である。タグ・セットを追加することで,いろいろな用途に向けてカスタマイズしやすいという特徴がある。WML2で採用したXHTML Basicは,XHTMLのサブセットで,携帯電話向けのタグ・セットを備えた仕様となっている。言語仕様としては,HTMLのサブセットであるC-HTMLやMMLに似ている。
WML2はCSSをサポート。XHTML BasicとCSSの組み合わせによってパソコン向けのコンテンツのように,プルダウン・メニューやレイアウトの細かい指定が可能になる(写真1)。
WAP2.0はWML1をサポートすることで下方互換性を備える。「コンテンツ・プロバイダは,急いでWebコンテンツを作り直す必要はない」(ACCESS副社長の鎌田 富久氏)。WML2に対応したWebブラウザでWML1のコンテンツを表示できる。新規に作成するWebページからXHTML Basicベースへ移行していけばよい。
WAPゲートウエイは不要に
通信機能も大きく変わった。WAP独自の通信方式から,TCP/IPを使った通信になった。
現行のWAP1.0では,独自の通信プロトコルとTCP/IPをWAPゲートウエイを介して変換するという通信方式を採用している。例えば,Webサイトから読み出したコンテンツは,WAPゲートウエイでWAP独自のバイナリ・データに変換し携帯電話に転送していた(図3[拡大表示])。コンテンツの容量を減らし,ネットワークに流れるデータを最小限に抑えるためである。
しかし,携帯電話の性能・機能はどんどん向上している。データ通信の速度は上がっており,これまでとは逆にWAPゲートウエイがボトルネックになりかねない。
WAP2.0では,通信プロトコルにTCP/IPを採用した。携帯電話はTCP/IPを使ってWebサーバーに直接アクセスできるようになる。互換性を保つためにWAPプロトコルのスタックも備えるが,WAPゲートウエイを経由しない方法が基本になる。
セキュリティも強化
通信機能がTCP/IPになったことは,暗号通信の面でもメリットがある。WAP1.0では,暗号化通信にWTLS(ワイヤレス・トランスポート・レイヤー・セキュリティ)と呼ばれるプロトコルを使っている。SSL(セキュア・ソケット・レイヤー)を改良したTLS(トランスポート・レイヤー・セキュリティ)を,WAPプロトコルに対応させたものである。
WAP1.0では,携帯電話とWAPゲートウエイの間はWAPプロトコルを使うため,暗号通信にはWTSLを使う。WAPゲートウエイからWebサーバーまでのTCP/IP通信ではSSLを使う。つまり,暗号通信のために2つのプロトコルを利用することになる。WAPゲートウエイでは,WTSLで受けた暗号通信をいったんデコードし,再度SSLを使って暗号化する手間が発生する。
セキュリティ面からすると,せっかく暗号化した通信を途中で復号化するのは危険である。WAPゲートウエイに不正な侵入があった場合は,通信内容が漏えいしてしまう。WAP2.0では,携帯電話とサーバー間でTSL通信をするため,こうした危険はなくなる。