図●マルチコア・プロセサの構造
(Pentium Extreme Edition 840の場合)
 一つのパッケージ(またはチップ)に複数のプロセサ・コアを搭載するプロセサのこと([拡大表示])。周波数向上によるプロセサの性能向上に限界が見えてきたため、このところ急速に増えつつある。

 米IBMが2001年に製品化した「Power4」や、米サン・マイクロシステムズが2003年に出荷した「UltraSPARC IV」はいずれもハイエンド・サーバー向けだった。しかし、最近は米インテルと米AMDがパソコン・サーバーやクライアント・パソコン向けにマルチコア・プロセサを投入し始めた。

 米インテルはこの4月18日、クライアント向けに「Pentium Extreme Edition 840」を出荷。米AMDも4月21日、「Athlon 64 X2 デュアルコア・プロセサ」で続いた。

 AMDは同時に、サーバー/ワーク・ステーション向けの「Opteron デュアルコア・プロセサ」の出荷も始めている。インテルも年内には、サーバー向けのマルチコア・プロセサを製品化する予定である。

 ここまで挙げたマルチコア・プロセサは、いずれも一つのパッケージに二つのプロセサ・コアを搭載するデュアルコア・プロセサ。だが、プロセサ・メーカー各社は、より多くのプロセサ・コアを実装する研究を進めている。サンは2006年に、8コアを搭載する「Niagar(ナイアガラ)(開発コード名)」の出荷を計画している。

 これまで各社は微細加工技術の進歩に伴って、周波数を向上させてきた。しかし周波数に比例して発熱量も増加するため、半導体素子の動作限界に近づきつつある。

 今でもプロセサ・コアの単位面積当たりの発熱量(熱密度)は原子炉並みとなっている。高価な冷却装置を付ければいっそうの周波数向上は不可能ではないが、価格競争力が低下してしまう。

 そこで各社は周波数を高めるのではなく、コアを複数持たせるマルチコア・プロセサに性能向上の糸口を見いだした。最新の微細加工技術を使えば、1チップに複数のプロセサ・コアを実装するのは不可能ではない。従来、複数のチップで実現していたSMP(対称型マルチプロセサ)マシンを1チップで実現できる。SMPマシン実現に必要な外付けチップが不要となる分、価格性能比を向上できるメリットもある。

(安藤)

本記事は日経コンピュータ2005年5月30日号に掲載したものです。
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