情報処理技術者試験に、新たな試験が誕生する。プロジェクトマネジャの入門試験やセキュリティ技術者試験などだ。同時に、ITスキル標準(ITSS)との整合性を高め、人材育成のための指標としての位置づけを明確にする。減少する受験者数に歯止めをかけたいとの狙いもある。

表●新設または見直される情報処理技術者試験の概要(試験の正式名称はすべて未定)
 2006年以降に新設または見直しが予定されている試験は四つある([拡大表示])。新設されるのは、現行の「プロジェクトマネージャ試験」の下位試験になる「新プロジェクトマネージャ試験」(名称未定)と、「セキュリティ技術者試験」(同)の二つ。見直されるのは、「システムアドミニストレータ試験」と「テクニカルエンジニア(エンベデッドシステム)試験」だ。

 新試験の最大の狙いは、2002年12月に登場したITスキル標準(ITSS)との整合性を高めることだ。経済産業省は2004年9月、試験制度とITSSの対応関係を発表したものの、試験制度の前回改定は2001年のため、正対する試験が存在しないITSSの職種が多かった。ITSSを人材育成のより所にし始めたIT業界からは、スキル評価や人材育成計画策定の目安となる試験制度が求められていた。

 新プロジェクトマネージャ(PM)試験は、PM入門者を対象にする。ITSSのスキルレベルでは、専門分野が確立できたとみられるレベル3程度を想定する。現行の試験はPM職のリーダーに相当するレベル4が対象だ。情報処理推進機構(IPA)傘下の情報処理技術者試験センター(JITEC)によれば、「現行試験は難易度が高すぎ、PM志望者のすそ野拡大を妨げている」との声が強い。こうした指摘を受けて、新試験をより基本的な知識を問う内容にして、PM層の拡大を図る。

 セキュリティ技術者試験は、セキュリティ対策の高度な知識や技術を備え、セキュリティ関連のシステム設計ができる専門家の育成を目指すもの。現行のセキュリティ関連試験である「セキュリティアドミニストレータ試験」は利用部門向け、新試験はベンダーの専門技術者向けという位置づけだ。

 一方、出題範囲などを見直すシスアド試験は、ユーザー企業の情報システム部門スタッフを対象に、システムの企画・設計やベンダー・マネジメント力の向上につながる内容になる。2006年度中をメドに策定が進むユーザー企業向けスキル標準(UTSS)に準拠したものになる模様だ。テクニカルエンジニア試験は、日本の競争力を左右するとされる組み込み系ソフト開発者の育成・増加が目的。この5月に正式発表された「組込みスキル標準(ETSS)」との整合性を高める。

 これらの改定により、JITECは情報処理技術者試験の受験者数減少傾向に歯止めをかけたい考え。年間70万人という受験者数は、IT関連試験では国内最大だが、2003年に対前年比3.8%減、2004年は同9.4%減と下降傾向が続いている。

(玉置 亮太)

本記事は日経コンピュータ2005年5月30日号に掲載したものです。
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