中国、韓国は技術や人材面で協力

写真●「オープンソース三国同盟」の中核となる各国業界団体のトップ(写真をクリックすると拡大表示)

 大きな流れの一歩を踏み出した日中韓の三国のなかで、今後大きな役割を果たしそうなのが韓国だ。韓国では「セキュアOS」と呼ばれる次世代OSの普及が始まっており、こうした先端技術を提供できる。セキュアOSの実態は、システムの安全性を強化する機能を備えたミドルウエアと、Linuxなどの既存OSを組み合わせたものである。

 例えばベンチャーのセキュブレインは、すでにLinuxに同社のセキュアOS製品を組み合わせたOSを、二つの省庁や韓国の第二電電であるDACOMなどに導入した実績を持つ。ミラクル・リナックスなど日本のベンダーに協業を働きかけている最中だ。同社製品をLinuxに組み合わせると「セキュリティ・ポリシーをより詳細に設定でき、警告や特定機能の停止などポリシーに応じたアクションを自動的に起こせる。またメモリーを常時監視してシステム・ダウンを未然に防ぐ」(ブライアン・リー社長)という。

 また韓国は政府主導でIT人材の育成を進めており、現在の主眼はLinux技術者の育成にある。そのための予算も潤沢に用意しており、人材面での協力もできる。さらにソウル市郊外に広大なIT特区を建設し、世界中のIT企業を誘致したりIT人材教育の拠点にする「デジタル・メディア・シティ」構想も進行中。三国同盟の取り組みにおいて物理的な場所も提供できる。

 中国は国産OS「紅旗Linux」の開発を政府主導で進めており、この紅旗Linux開発のノウハウや技術を提供することが考えられる。すでに中国政府は、政府関連のシステム調達は基本的に紅旗Linuxに限定する方針を打ち出している。また中国のソフト産業は近年、欧米や日本のソフト業界の下請けとして急速に力をつけており、人材面での協力もできる。

日本は大規模市場やアプリ開発で貢献

 日本の役割としては、まず年間2兆円とも言われる電子政府/自治体市場をはじめとする、世界第2位の巨大なIT市場があげられる。資金力も三国同盟のなかで突出している。JISAの佐藤会長は「三国同盟の話はどんどん進めているが、日本は何ができるか、これから真剣に考えなければならない。アプリケーションで実績があるので、OSというよりはアプリケーションの面で協力するのではないか」と考えている。

 まだ基本合意に達した段階のオープンソース三国同盟だが、日本を含めたアジアがソフトウエア産業において明らかに欧米に後れを取っている以上、アジア勢同士で手を組むという取り組みは評価できる。中国、韓国は政府レベルでソフトウエア産業の育成に力を入れており、その動きも産業の成長も非常に早い。この二国に日本が置いていかれないためにも、三国同盟の意義はある。

 ただし、三国同盟の取り組みが実を結ぶためには、共同で開発したり普及させるソフトウエアの品質保証の枠組みを確立することが重要だ。だれがどういう形で保証するのかをはっきりさせなければ、ユーザーはついてこない。

(井上 理)