日本、中国、韓国のソフト業界団体と政府が、Linuxをベースにした次世代OSとアプリケーションの開発・普及を目的に手を組む構想が明らかになった。三国共同で技術や人材を出し合い、欧米主導のソフト産業に風穴をあけたい考えだ。日本はJISAが窓口になり、経産省も協力の検討を始めた。

図●オープンソース三国同盟」における各国の役割(本誌推定、図をクリックすると拡大表示)
 日本、中国、韓国の三国が、Linuxベースの次世代OSやアプリケーションなど、オープンソース・ソフトウエア開発の協調に動き出した。各国のソフト業界団体が共同で次世代ソフトの開発に取り組み、アジア各国の政府、民間企業への普及に努める。アジアでは、政府も含めてオープンソース・ソフトウエアに関する動きが各国で盛んになっている。三国同盟を機に、オープンソースの勢いがさらに激しさを増しそうだ。

 「オープンソース三国同盟」の窓口となるのは、日本が情報サービス産業協会(JISA)、中国が中国ソフトウエア産業協会(CSIA)、韓国が情報産業連合会(FKII)。構想の中心となっているのは韓国のFKIIである。すでにJISA、CSIA、FKIIの各トップは会合をもち、三国同盟に関する基本路線に合意している。今後、各国の役割分担や具体的な取り組み、着手時期などの詳細を詰める。

 中国政府と韓国政府も、この同盟を資金や政策面で支援する。CSIAの陳冲(チェン・チョン)理事長は中国政府の官僚(情報産業部 電子情報産品管理司 副司長)であり、CSIAはほぼ政府と一体で動いている。

 FKIIの李龍兌(イ・ヨンテ)名誉会長は、韓国のIT政策の深部にかかわる大物。日本の日本経団連にあたる全国経済人連合会(全経連)の副会長や、同会IT部会の委員長を務め、さらに大統領国民経済諮問委員として大統領などにIT政策の助言もする。今回の構想でも韓国政府首脳から資金面を中心とした支援を取り付けている。関係者によれば、大統領の交代による影響はないとしている。

経済産業省も支援を検討

 一方、日本政府では経済産業省が担当省庁になる。すでに昨年、JISAの佐藤雄二朗会長やFKIIの李会長がこの構想を経産省の情報処理振興課などへ説明し、それをうけて同省は検討に入っている。「政府が絡む可能性は40~50%。絡むとしたら経産省が担当するのは間違いない」(同省関係者)。

 日本政府はオープンソース・ソフトウエアに関する取り組みに前向きな姿勢を見せている。自民党のe-Japan重点計画特命委員会が昨年8月に、「オープンソースOSの開発・導入を推進すること」と提言したのを筆頭に、経産省や総務省、与党議員などが具体的な検討に入っている。さらに政府で全面的にオープンソースOSを採用しようとする、省庁横断的な動きも見られる。

 なかでも経産省の動きが目立つ。2003年度予算でオープンソース関連で25億円の予算を要求、そのうち10億円が認められた。予算要求の名目は「独立行政法人である産業技術総合研究所へのオープンソース・ソフトウエアの導入、およびオープンソース・ソフトのコミュニティ支援」となっているが、「場合によっては国際的な活動に回してもよいと考えている」(経産省関係者)としており、三国同盟への支援に向けられる可能性も十分にある。

 すでにその兆候はある。経産省が主導して、アジアのオープンソース関係者と政府関係者などが集まるシンポジウムを、タイのプーケットで3月に開催する計画が進められている。経産省は企画に協力するほか、後援として資金を出す。参加国(地域)は日本、中国、韓国、台湾、タイなど。この場が、オープンソース三国同盟へのアジア地域の協調を求める「決起集会」となる可能性もある。

(井上 理)

次回(下)へ続く