音声で顧客の心理状態を推察
コールセンター向けのソフト製品が登場
日経コンピュータ 2002年2月25日号,19ページより 富士通の子会社であるアルファ・オメガソフトは2月,音声から顧客の心理状態を推察するソフトの出荷を始めた。顧客の声の周波数を分析し,その揺らぎから「顧客がウソをついていないかどうか」などを判別する。申し込み業務や苦情対応業務を手がけるコールセンター向けに売り込む。
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図●アルファ・オメガソフトが販売するコールセンター向け心理分析ソフト「i-Risk」の管理者用画面[図をクリックすると拡大表示] |

このソフトの名称は「i-Risk」。米国のベンチャー企業リスクテクノロジーがイスラエル軍向けに開発した音声分析技術を基に,アルファ・オメガソフトが開発した。リスクテクノロジーの分析技術は,イスラエル軍が国境警備の際に,ウソ発見器(ポリグラフ)代わりに利用している。アルファ・オメガソフトは「i-Riskは約85%の正確さで心理状態を把握できる」と主張している。
i-Riskは音声の周波数の揺らぎを分析して,発声者の心理状態を推察する。例えば,周波数の変動が通常と異なる特定パターンを示した場合は,「発声者はウソをついている可能性が高い」と判断する。ウソをつくと通常よりも脳に多くの血液が流れ,声帯に血が流れにくくなる現象を利用している。
周波数の変動幅や変動速度によって,発声者の心理状態を三つのパラメータで数値化する。興奮度を表す「感情レベル」,会話の理解度を表す「知的レベル」,緊張度を表す「ストレス・レベル」である。
i-Riskはこれら三つのパラメータと心理条件の相関関係を示す基本データベースを持っている。i-Riskは発声者の音声を三つのパラメータに数値化した上で,基本データベースに格納されている数値と照合し,推定結果を出す。基本データベースは無作為に抽出した母集団で実施した実験に基づいて構築したもので,「人種や言語に依存しない」(アルファ・オメガソフトITソリューション事業部の加藤勝久課長)。
アルファ・オメガソフトは,i-Riskをコールセンターを運営する企業向けに売り込む。「すでに金融機関など10社程度が試用中」(加藤課長)という。
i-Riskは,オペレータ端末の画面上に「ウソをついている」,「緊張している」といった判定結果をリアルタイムで表示する。コールセンターの担当者がi-Riskのメッセージを参考にすれば,より適切な顧客対応ができる。「借り入れ時の申告内容に虚偽があるとi-Riskが判断すれば,与信枠の引き下げを検討する」といった具合である。
クレーム対応で顧客の興奮が収まらない場合,上席者に応援を求める用途にも使える。前出の三つのパラメータが設定値を超えると,管理者用画面に警告を表示するように設定できる。
i-Riskは通話中のパラメータの変化をログ・ファイルに記録している。このログ・ファイルを分析すれば,オペレータの人事評価の参考にすることも可能だ。「電話開始時と終了時で顧客の心理状況がどれだけ改善したかによって,オペレータのスキルを客観的に評価できる」(アルファ・オメガソフトの加藤課長)。
これまでのコールセンターでは,上席者の目が届かずに,オペレータと顧客の間のトラブルを見過ごしたり,オペレータの人事評価が場当たり的になりやすかった。
価格は10人規模のコールセンター向けで約3000万円。
本記事は日経コンピュータ2002年2月25日号に掲載したものです。
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