図1●同一ベンダーの製品を組み合わせた場合の実効速度
コレガ製がメルコ製よりも遅いが,初期のメルコ製とほぼ同じであり,改善の可能性はありそうだ。
図3●Draft 5.0と6.1(Intersilの場合)の通信手順の違い
11bと11g端末が同じアクセスポイントにセッションを張っている場合,図のようなタイミングで動作する。Draft 6.1でCTSがない場合の実効速度の理論値は24.6M ビット/秒となる。図は米Intersil社の資料を基に作成した。
 これを念頭においてもう一度,図1[拡大表示]を見てみると,確かに,11gモード,11g単独接続の11b/gモードが同等になっている。また,11bが1台セッションを張っているときの11b/gモードはそれよりも実効速度で劣っている。

 では,メルコの製品で11bが接続している場合の11b/gモードで速度が向上したのはなぜだろうか。理由は二つ考えられる。一つは,ファームウェア自体の改良である。無駄なアルゴリズムやデバイスの制御を最適化したこと。もう一つはベースとした11gドラフト仕様がDraft 5.0からDraft 6.1に変わっていることである

 これまでのバージョンは,Draft 5.0に準拠していた。この仕様では図3上[拡大表示]の上のように,11b接続時の11b/gモードでデータを送る端末は,他の無線LAN端末が出したフレームの後,平均360μ秒待ってデータフレームを送信する。このデータを受け取った相手は,その10μ秒後にACKフレームを返す。

 Draft 6.1に準拠した製品では,前のフレームが流れた後,平均200μ秒待って次のフレームを投げる。この場合の実効速度の理論値は24.6M ビット/秒となり,Draft 5.0の18.5M ビット/秒より30%以上も速くなる。これがメルコ製品で速度が向上した理由と見られる。

 では,同じDraft 6.1に準拠するIntersil製品の速度が伸びないのはなぜか。Intersil製品は図3下[拡大表示]のように,直前のフレームに続いてCTS(Clear to Send)パケットを投げている。CTSパケットは他の端末にパケット送信の待ち時間を伝えるパケットである。この結果,実効速度の理論値は17M ビット/秒にまで落ちてしまう。つまり,CTS送信がオーバヘッドとなって実効速度が高まらないものと見られる。

 ちなみにDraft 6.1には,CTSパケットをどう使うかについての詳細な記述はない。巻末に,付記(Annex)として「11bが同じアクセスポイントに接続している場合にはRTS/CTSなどの仕組みを使って11gの変調方式を使った通信の占有時間を通知した方がよい」との記述があるだけだ。Intersilはこの付記のガイドラインに従って実装したようだ。

相互接続性は一部に難あり

図4●異機種間接続の結果
 次に異機種間の相互接続性を見る。コレガ/メルコのアクセスポイント,コレガ/メルコの端末をそれぞれの組み合わせでの実効速度を計測したのが図4[拡大表示]である。すべての組み合わせ/モードで異機種間接続は可能だった。

 ただし,気になる点が二つある。一つは,コレガと製品とメルコの製品を組み合わせた場合,固有ベンダーで合わせた場合のちょうど中間程度の速度になることだ。理由はよく分からない。

 もう一つは11b端末の接続がある場合の11b/gモードにおいて,コレガのアクセスポイントとメルコの無線LAN端末の組み合わせで大きく速度が落ちている点だ。この速度低下は再現性があった。こちらも理由は不明だ。

WEPを使っても遅くならない

 図4の実験では,WEPで暗号通信した場合も計測した。

 11gでは実効速度で20M ビット/秒程度出る。メルコ,コレガともWEPはパソコン側のCPUである程度処理しているが,このような高速で暗号処理をすると,かなり遅くなるような気がする。

 結果は図4の下二つのグラフである。WEP無しの場合に比べて,おおよそ1M ビット/秒程度低下している。ただし,WEP無しの場合に比べて1M ビット/秒程度速くなったデータもあり,この程度は誤差の範囲と言えそうだ。

(中道 理)