Mozilla FoundationのChris Hofmann氏が来日,都内で会見した。Hofmann氏はNetscapeに8年間勤務,Mozilla Foundationではその最初の従業員となり,現在は技術部門のディレクタを務めている。

 現在,MozillaからWebブラウザ機能だけを切り出し軽量化したFirefoxが注目を集めている。Firefoxは1.0RCリリース候補版が公開されたが,11月2日までに700万回以上ダウンロードされた。NY TIMESに軽量ブラウザFirefoxの正式出荷を告知する新聞広告を出すための寄付を募ったところ,10日間で25万ドルが集まった。11月9日に正式版の公開が予定されている。

Chris Hofmann氏
 Hofmann氏は「Mozilla Foundationのほか,IBM,Sun,Red Hatなどから約50名がフルタイムで開発に参加しており,さらに数千名のボランティアがいる」と開発陣の厚さを強調。

 「企業での採用も進みつつある」とHofmann氏は言う。「IBMやOracleがMozillaブラウザに移行しつつある。コマツのカナダ法人が1300シートの,米Lawrence Livermore研究所が1300のFirefoxを配備した。5000シートのMozillaブラウザを導入した米大企業もある」という。

 Hofmann氏は「セキュリティも高い」と強調する。「Mozilla,Firefoxにはバイナリを実行できてセキュリティ・ホールになりやすいActiveXはない。セキュリティ・ベンダーの米Seuniaの調査によれば,Firefoxの深刻なセキュリティ・ホールはIEに比べ少なく,修正されていない問題も少ない」(詳しくは関連記事「セキュリティで選ばれるFireFox」を参照)。

 以下,報道陣の質問に答えた。

――日本企業のIT部門にヒアリングすると「セキュリティが心配なのでIE以外のブラウザに移行したいが,IEのJavaScriptに依存したイントラネットのアプリケーションやサイトが,Mozillaでは同じように動かない。そのため移行できない」という。

 確かに,Microsoftにロックインされたアプリケーションやサイトは問題だ。企業よってはあきらめるというところもある。MozillaやFirefoxを導入した企業でも,IEとMozillaを両方インストールしている企業もあるだろう。

 報告されたIEとの互換性の問題については,全てバグ・データベース(Bugzilla)に記録している。その情報をもとに,われわれのエンジニアが必要な努力をしている。

 しかし,IEでも,セキュリティ設定を厳しくすると,ActiveXだけでなくJavaScriptもOFFになり,正しく動かないページが多くなり,互換性がなくなる。

 より長期的には,コンテンツを(編注:W3Cの)Web標準に準拠させ,特定のブラウザに依存しないようにして移行を容易にしようとしている企業もある。努力が必要だが,それが正しい方向だと認識している企業が増えていると考えている。

 また,Mozilla FoundationにはWebコンテンツ・エバンジェリストと呼ばれる担当者がいて,コンテンツ・クリエータに,Web標準に準拠し,互換性の問題を解消していこうと呼びかけている。

 このように,プロダクトとWebコンテンツの両面で改善していきたいと考えている。

――メール・クライアントThunderbirdの正式リリース予定は。

 11月中にリリースする。Firefoxの2~3週間後を予定している。

――FirefoxとMozilla,Netscapeの互換性は問題ないのか。

 FirefoxとMozilla Suite,Netscapeは同じコアを使っている。Mozilla Suiteは,従来からのWebブラウザにメール・クライアント,HTMLコンポーザなどを組み合わせたもの。このMozilla Suiteの上にNetsacpe 6.0,7.0が構築されている。ユーザー・インタフェース・レイヤーが異なるだけだ。98%のプログラムは全く同じ。Netscapeでは2%が追加されているだけだ。

――パソコン以外のプラットフォームへの展開は。

 「Minimo」という実験プロジェクトを昨年スタートした。PDAやスマートフォンへの搭載を想定したプロジェクトだ。今後,さらに拡大していきたい。すでに数社が関心を持っている。

――FirefoxやNetscapeではユーザー・インタフェース記述言語XUL(ズール)を使用しているが,MicrosoftもLoghornでXMLユーザー・インタフェース記述言語を採用する。XULは今後どのような応用が考えられるのか。

 Microsoftも同様な試みをしているが,その中身はMozillaの模倣だ。

 応用としては,例えば,XULで記述したユーザー・インタフェースをWebコンテンツに含めて,クライアントで動かす,といった応用が考えられるだろう。コンテンツをFirefoxのプラグインとして作成して,ユーザー・インタフェースを拡張する,といったことが可能になる。

(高橋 信頼=IT Pro)