マイクロソフト日本法人は2004年6月21日,Windows XP Service Pack 2 RC2 (SP2)を公開しました(関連記事)。今回は,公開されたSP2をインストールし,本連載でこれまで紹介したサンプル・プログラムのいくつかを実行してみることにします。サンプル・プログラムはいったいどのような結果を返してくるでしょう。
SP2のインストール
SP2は,こちらからダウンロードできるようになっています。ダウンロード・ファイルは,約260Mバイトの自己解凍プログラムとなっています。筆者の環境(ごく一般の常時接続環境と考えておいてください)で要したダウンロードとインストールの合計時間は50分程度でした。
インストール,アンインストール,および,SP2に関する一般的な情報については,こちらページを参照するとよいでしょう。例えば,Windowsファイアウオールやセキュリティ・センターに関する情報が簡潔に整理されています。SP2を評価する際には,機能概要を事前にしっかり把握しておきたいところです。
サンプル・プログラムから見たSP2情報
連載第10回で紹介した「No10.vbs」というサンプル・プログラムをまず実行し,SP2のインストール直後の様子を確認してみます。筆者の環境では,図1[拡大表示]のような結果が返されました。ご覧のように,v.2149という識別情報を持つSP2がインストールされています。正式版のSP2ではこの識別情報はなくなり,SP2という情報だけが報告されてくると思われます。なお,No10.vbsサンプル・プログラムは,SP2適応後の環境では,実行時に図2[拡大表示]のようなセキュリティ警告を表示します。
以前の環境ではこのような警告は出ませんでしたから,VBScriptファイル(スクリプト・コード)に対するセキュリティ対策が強化されていることがはっきり分かります。この対策により,受信メールに添付されたVBSファイルを不用意に実行するような確率が低くなると期待したいところです。
それでは次に,連載第9回で紹介した「No9ListNameSpaces.exe」というサンプル・プログラムを実行し,Windows XPの基本的な変化を調べてみます。筆者は,このサンプル・プログラムをSP2インストールの前後に実行し,2つの結果をWinDiffで次のように比較してみました(図3[拡大表示])。なお,「No9ListNameSpaces.exe」サンプル・プログラムとWinDiffについては,連載第9回を復習してください。
画面を見ると分かるように,コントロール・パネルと「system32」の2つの名前空間にいくつかのオブジェクトが追加されています。画面をスクロール・ダウンしてみると分かりますが,変更点は意外に少ないようです。筆者は変更点の少なさに驚いたほどです。SP2では,新しい機能追加を行うのではなく,セキュリティ対策に作業の力点が置かれたことを暗に示しています。
Windowsの世界は「名前空間とオブジェクト」という基本構成に変化はなく,Windows自体の内部基本構成は変更されていないことがはっきり分かります。なお,「名前空間とオブジェクト」という考え方は,プログラミング的には「コンテナとクラス」であり,現代ソフトウエア開発を根底から支える汎用概念といえるものです。JavaやC#などのプログラミング書のページを開けば,1度は必ず目にするはずです。
追加されたオブジェクトの詳細を知りたい方は,連載第21回で紹介したNo21.vbsを実行するとよいでしょう。例えば,No21.vbsでコントロール・パネルの内容を表示すると,図4[拡大表示]のような情報が返されます。
なお,No21.vbsでコントロール・パネルの内容を確認するときには,次のソースコード行を必ず参考にし,修正を加えるようにしてください。
Set instFolder = CreateObject("Shell.Application").NameSpace(3).Items
今度は,連載第24回で紹介したNo24.vbsサンプル・プログラムを実行してみます。このサンプル・プログラムは,現在適用されている修正パッチ情報を収集する機能を持っています。当時の記事を振り返ると,筆者の環境には100を超える修正パッチが適応されていましたが,SP2インストール直後はいったいどのように変化するのでしょう。筆者の環境で実行すると,No24.vbsは図5[拡大表示]のような情報を返してきました。
ご覧のように,SP2をインストールすると,これまでの修正パッチが整理されます。画面内のClickボタンも従来どおりそのまま使用できます。画面をスクロール・ダウンしていくと分かりますが,SP2自体,KB811113という内部番号を持っています。しかし,Clickボタンを押しても該当ページが表示されてきません。表示されない理由は,現在のSP2はあくまでもRC2であり,正式サポートの対象外となっているからです。
それでは最後に,注目のセキュリティ・センター画面を紹介しておきましょう(図6[拡大表示])。ご覧のように,現在のセキュリティ状態が監視され,筆者の環境では警告が出ます。マウスをクリックすれば,目的の画面を表示できるようになっています。筆者は今更のようにグラフィカル・ユーザー・インタフェース(GUI)の役割の大きさを実感しました。
この画面を見ると,Windowsファイアウオールはデフォルトで有効になっていることが分かります。しかし,Windowsファイアウオールのリンクをクリックすると,「例外」というものが設けられていることが分かります。この「例外」設定は,Windowsユーザーが責任を持って決定する内容ですから,正式版SP2インストール後は「例外」設定内容を慎重に確認しておきたいところです。
今回のまとめ
- SP2をインストールしてもWindowsの内部基本構成は大きく変化しない
- SP2では,コントロール・パネルと「system32」が大きく変化する
- VBScriptファイルなどに対するセキュリティ対策が強化された
- Windowsファイアウオールの「例外」設定には注意を払うべきである
- セキュリティ・センターは優れたGUIを持っている
今回は以上で終了です。次回またお会いいたしましょう。ごきげんよう!