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図4:オンラインヘルプはより包括的になっている

図5:Active Directoryの複数ユーザーを同時に編集する

図6:「Group Policy Modeling」と「Group Policy Results」は重要な新機能だ

安定が一番:昔から人気機能の改善

 Windows .NET Serverの機能のほとんどがWindows 2000 Serverのツールや機能への改善やアップデートであり,これらのいくつかは大歓迎できるものである。Active Directoryの導入を完了した企業では,アップグレードにかかるコストを正当化するだけの改善点をいくつも見出すことができるだろうし,Windows NT 4.0ドメインからのアップグレードをその複雑さが理由で実現していない場合は,Windows .NET Serverが問題解決の最適解になるかもしれない。しかし私はまだ,Windows NT 4.0からWindows .NET Serverへのアップグレードのテストは行っていない。

 ドメイン名の変更や,複数のドメインとフォレストをまたぐ信頼関係の構築といったWindows .NET Serverの改善点が報道の対象としてよく取り上げられる。現実に試してみて便利であったが,めったに利用される機能ではない。私としては,より小さな機能のほうが,典型的な管理者の普段の作業に,より大きな貢献をすると考える。例えば,これからは[Active Directoryユーザーとコンピュータ]にある複数のユーザー・オブジェクトを,使い慣れたCTRLとクリックの技を使って選択しながら,ユーザーのグループのための属性をシングル・ステップで編集できるようになる。

 さらに,改善された機能として企業の注目を浴びそうなのが,グループ・ポリシー(GP)である。GPは,Active Directoryに不可欠な機能でありながら,Windows 2000 Serverでは使い方が難しい。Windows .NET Serverでは広範な項目にわたって設定できる160を超える新しいポリシー設定がそろっており,マイドキュメントのリダイレクションも含まれる。そのうちでも,大きな変更は新しいツール「Group Policy Management Console(GPMC)」で,実際には,Windows .NET Serverとは別に,無償でダウンロードできるものとして提供される。このツールについては次のセクションで解説する。

 Windows .NET Serverでの最大の変更はIIS(Internet Information Services) 6.0に関連するモノだ。これはもうデフォルトでインストールされることはない。IIS 6.0を必要とするサービスや機能をインストールしたときに密かにインストールされることもなくなった。そして,IISのインストールを選択したとしても,静的なWebページしかサポートしないロック・ダウン・モードで導入されるが,必要に応じて「FrontPage Server Extensions」とASP.NETを有効にできる。私がとりわけ気に入らないことは,IISがWebサーバーではなく,アプリケーション・サーバーとして分類されていることで,このことで混乱する人は必ず出てくる。Windows .NET Serverのアプリケーション・サーバーを有効にすると,Webサーバーとしては必ずしも必要ではないCOM+と関連するサービスもインストールすることになる。従って,ベーシックなWebサーバーを必要とする場合は,IISのインストールを[アプリケーションの追加と削除]を使って行うしかない。これはばかげていて,[サーバーの管理]のユーザー・インターフェースの利便性を覆すことでもある。

 いずれにしても,いったんIISがインストールされると,管理はIIS 5と大変よく似た方法で行う。このことは基礎となる構成情報が独自のメタベースではなく,標準のXMLファイルの形式で格納されていることから考えると,当然なかなかすごいことである。ファイルは直接編集できるが,まずはその機能を有効にする必要がある。

 Windows Media Services(WMS)もこのリリースで著しく強化されたが,私としては,この製品では最も過小評価されている機能の1つであると考えている。WMS 9はWindows .NET Serverの一部としてだけ提供されるものだが,なじみやすい新しいユーザー・インターフェースに加え,ダイナミック・プレイリストといった素晴らしい新機能も提供する。

 ターミナル・サービスは安定性とスケーラビリティがさらに強化された。Microsoftは私に,この製品はWindows 2000に比べて同じハードウエアで2倍の数のリモート・ユーザーをサポートでき,新しいRDP(Remote Desktop Protocol) 5.1に対応したクライアントを使うと,そのユーザーは24ビット・フルカラーで,リダイレクトされたリソースを利用できるようになる。私はターミナル・サービスをテストしてみたが,パフォーマンスに関する検証は試みなかった。

いくつかのクールな新機能

 Windows .NET Serverの機能のうち,いくつかはかなり新しいものである。Windows .NET Serverには,.NET Framework 1.1が統合されてくるが,これはWindowsでは初めてのことである。.NET環境が顧客にとって短期間で価値あるものになるかの判定はまだ下されていないが,.NETとそれをサポートするXMLやSOAPなどのテクノロジはこれからも残るといっても差し支えないだろう。MicrosoftではこのテクノロジをOSのコアの一部にすることで,.NETを興味の対象であった段階から初めて脱却させた。ここまで言ったところで言っておきたいのは,私はテストの最中には.NETアプリケーションやサービスの作成,インストール,管理は試みていないことだ。

 Windows .NET Serverのストレージ関連の機能も新機軸がある。この製品には,「ボリューム・シャドウ・コピー」という基本的にデータのスナップショットを取る機能が含まれる。ボリューム・シャドウ・コピーを有効にするには,ドライブ・ボリュームのプロパティを開いて[Shadow Copies]タブを選択して[有効]にする。しかし,ボリューム・シャドウ・コピーは共有フォルダ内でしか有効にならない。それはこの機能が誤って他のバージョンで上書きされることの多いドキュメント用にデザインされているからである。クライアントはWindows XPである必要がある。

 ボリューム・シャドウ・コピーは,ユーザーがファイルをアクセスしている最中も,きちんと"ライブ・バックアップ"を提供できるよう,統合バックアップ・ソフトと相互作用する。

 バックアップ機能の「自動システム回復(ASR)」は,実際にはWindows XPでデビューしているが,サーバーOSでは新しい。システムに緊急事態が発生したときは,ASRがOS,システム状態,ハードウエア構成のバックアップを実施してくれる。これは貴重で素晴らしい機能である。

 新しい「グループ・ポリシー管理コンソール」(Group Policy Management Console,GPMC)はこれまで欠けていた2つのGP機能を提供する。その1つ「Group Policy Modeling」では,GPへの変更を実際には行わずに,設定やシミュレーションをしてみて,どのような影響があるかを確認できる。もう1つのログを記録するモード「Group Policy Results」では,どのGPが特定の状況を発生させたかを正確に確認できる。これまではGPの運用にあたって管理者は,テスト用のドメイン(いずれにしてもよい慣行だが)をセットアップして,新しいGPを割り当てて,望まれる効果を得られるかどうかをテストする必要があった。これを怠ると,トラブルがあってその原因のために後戻りするはめになる。そのときのツール「Group Policy Object Editor」はあまり役立たなかった。

 GPMCはなかなかよいが,問題もまだある。例えば,グループ・ポリシー・オブジェクト(GPO)内のポリシー設定を自動化する手段はいまだにない。ただ,GPMCは完全にスクリプト化が可能なので,このツールによって現れる機能であればなんでも自動化できる。

結論

 Microsoftは,要となる機能に対するリクエストにこたえ,適度な開発サイクルを維持しながら,顧客の要求するアップグレードを提供している。Windows NT 4.0で粘り続けているユーザーが飛び付くだけの動機は十分にそろえている。これは,Windows XPのように華々しいわけでも,エキサイティングなわけでもないが,そうあるべきものでもない。

  Windows .NET Server 2003のパート3は,Release Candidate 2(RC2)がリリースされた後で公開する予定だ。そこではWindows NT 4.0やWindows 2000 Serverからのアップグレードで直面する問題を中心に取り上げる。