Paul Thurrott 著

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図1:Windows .NET Serverのセットアップの画面

図2:デフォルトのデスクトップ画面。Windows XPのスタート・メニューを採用しているが,Windows 2000と似ている

図3:サーバーの役割を決める「Manage Your Server」は素晴らしいつくりだ

Windows Server次期版を実地に検証

 パート1でも紹介したように,Microsoftの最新サーバーOS「Windows .NET Server 2003」は,これまでのWindows 2000 Serverに対して無数の小規模な改善が施されている。そして既存のバージョンと同様に,Windows .NET ServerはIT管理者から企業の意思決定者まで,Microsoft製品を使ったシステムにかかわるあらゆる人にとって重要な製品だ。

 今回の変更は革新的というよりは,進化的であるといえる。Windows .NET Serverが目覚しいアップグレードであるかいう質問に対しては,「もちろんそうである」と答えられる。むしろ,Windows .NET Serverがアップグレードに費やすコストと時間に見合うだけの改善点を与えてくれているかになるだろう。その答えはもちろん,それぞれの状況によって異なる。

 今回のパート2では,Windows .NET Server RC1が実際の運用でどのように機能するかを検証するとともに,既存のWindows Serverのバージョンと比較していく。私は,2002年の夏から秋にかけて,Windows .NET Serverの評価版を実地に分析してきた。そして分かったことは,MicrosoftがサーバーOSを洗練させ,企業の大小を問わずバックエンド・サーバーに要求される機能をきちんと網羅しているということだ。これは好意的に評価したい。

 このレビューは,通常の32ビット・パソコンの構成をいろいろ変えながら,Windows .NET Server 2003 Web Edition,同Standard Edition,同Enterprise Editionを実際に稼働させて検証した結果に基づいている。私はまた,ウインドウ内で仮想マシンを実行させてくれるアプリケーションであるConnectix Virtual PC下で実行されている仮想サーバーを使って,テスト用のActive Directoryドメインを作成した。MicrosoftはレビュアたちにWindows .NET Serverベータ版についてはパフォーマンスのテストは行わないよう要求してきた。私はそのようなことをするような設備を持っていないので,もっと技術的な人たちに任せる。しかし,私のハードウエアでテストした限り,Windows .NET Serverのパフォーマンスは,Windows 2000 Serverとそん色ないといえる。この件に関しては科学的に数値を上げられないが,うれしい成果である。Windows NTの後継としてWindows 2000が出たときに,必要とされるハードウエアがアップグレードのコストをさらに引き上げてしまったことを覚えている人もいるだろう。しかし,既存のハードウエアでWindows 2000 Serverを実行できているとすれば,Windows .NET Serverも問題なく実行できるはずである。それではWindows .NET Serverでの新機能や改善された機能を見ていこう。

Windows .NET Server 2003のインストール

 Windows .NET Serverのセットアップを標準の対話型のセットアップ・ルーチンで実施すると,そのプロセスがなじみのあるものであることに気付く。手順はWindows 2000とほとんど同じである。そしてWindows XP同様,Windows .NET Server のCD-ROMは,親しみやすいオートプレイ・ウインドウをポップアップさせて,システムの互換性のチェック,リモート・デスクトップ接続の設定など様々なオプションを提供する。基本的にはこれまでよりもずっと使いやすい。

 Windows .NET Serverは,Windows 2000 Serverに比べて運用上の改善がなされた。同Web Edition以外はRemote Installation Services(RIS)を提供している。これを使えば,サーバー・イメージを作成してエンタープライズ全体にわたって提供できる。Windows 2000では,この機能はWindows 2000 Professionalでしか使えなかった。これからは同一のサーバーを迅速かつ簡単に提供できる。この機能はWebサーバー,Webアプリケーション・ファーム,ドメイン・コントローラ,あるいは迅速または定期的な複製が必要となるあらゆるサーバーに理想的な機能である。

「サーバーの管理」が設定の要

 Windows .NET Serverに初めてログオンするとちょっとした違いに気がつく。Windows NT 4.0の場合は,次に何をすればよいのかビジュアルな手掛かりは全くなく,それぞれの裁量にゆだねられている感があったが,この状況はWindows 2000では幾分改善されている。今度はMicrosoftはこれまで隠されてきた機能の多くを露出させることにした。最も顕著な例が,ログオンするたびにデフォルトで実行される[サーバーの管理](Manage Your Server)アプリケーションである。私が話を聞いた管理者のほとんどが一般的にあらゆるウィザード・ベースの操作について,その利点を否定しており,このアプリケーションを直ちに止めるに違いないと思う。

 しかしそれは大きな間違いである。[サーバーの管理]はサーバーの果たす役割について強力な見通し(ビュー)を提示してくれ,私は実行させておくべきだと思った。「役割(role)」というコンセプトはWindows .NET Serverに新たに登場するもので,サーバーを特定のタスク用に構成するに当たっての複雑さや依存性を簡素化する。例としてWindows .NET Server 2003 Standard Editionは以下の役割を果たすよう構成できる。

ファイル・サーバー
プリント・サーバー
アプリケーション・サーバー(IIS,ASP.NET)
メール・サーバー(POP3,SMTP)
ターミナル・サーバー
リモート・アクセス/VPNサーバー
ドメイン・コントローラ(Active Directory)
DNSサーバー
DHCPサーバー
ストリーミング・メディア・サーバー
WINSサーバー

 これらほとんどの機能は,Windows 2000 Serverも備えているが,セットアップや構成を行うにはシステムの根本をより細部まで理解することが要求された。Windows 2000 Serverではの[サーバーの管理]は,「Configure Your Server」([サーバーの構成])という名称になっていて,タスクをドメイン・コントローラといった役割ではなく,Active Directoryというテクノロジ名で分割するものであった。Windows .NET Serverでは,Configure Your Serverがウィザードの名称に使われるという紛らわしいことになっている。Windows 2000 ServerのConfigure Your Serverは,同様のTo-Doリストを提供してくれたが,それ以上の役割はあまり果たさなかった。

 また覚えておいてほしいこととして,役割は組み合わせができ,単一のサーバーに幾通りもの役割を持たせられる。Windows .NET Serverをファイル/プリント/アプリケーション・サーバーとして設定することも可能だ。役割を設定したら,[サーバーの管理]がその役割を管理するためのリンクを提供し,その役割や関連するタスクのための次のステップを見付けてくれる。論理的だし,よくできている。

 [サーバーの管理]はまた,役割の追加や削除を容易に行い,ツール,アップデート,その他の情報へのリンクも提供してくれる。これは管理者が実際に取り組む日々の仕事には素晴らしく,論理的なフロントエンドである。サーバーに対話的にログオンすると,このアプリケーションは通常実行されると考えられるタスクの一覧を提供してくれるため,特定のアプリケーションを探して,むやみにユーザー・インターフェースを探す必要はなく,より効率的に作業できる。繰り返しになるが,この機能は止めてはいけない。

 しかし,日々の利用ではWindows .NET Serverは当然Windows 2000 Serverとそっくりであり,劇的な変更はない。改善されたスタート・メニューは,Windows XPから継承し,よりよい広範なオンライン・ヘルプや,クリティカル(重要)なセキュリティ・アップデートの自動ダウンロードとインストールをさせてくれる自動アップデート機能といった本当に必要とされてきた様々な配慮がある。この最後の機能はサーバー環境では,テスト環境をきちんと実行していることを前提に,絶対不可欠なものである。しかし,日常的な側面からすると,Windows .NET Serverは新機能がどうこうというよりは,既存の機能が容易かつアクセスしやすくなったということで,Office 2000からOffice XPへの変化に相当する。これまでと同様,Windows .NET ServerをActive Directoryドメイン・コントローラ,Webサーバーなどとして設定することになる。しかし,今度はもっと簡単でほとんどの場合はより堅牢になるであろう。