■今回は,64ビットのCPUとWindowsの話題。AMD64は,Windows NTの開発責任者で伝説のプログラマであるDavid Cutler氏が深くかかわっていたことが明かされる。
■また同じ64ビット・マシンでは,32ビット・アプリケーションでさえ,32ビットWindows上よりも64ビットWindows上で稼働させた方が高速になるという。
(第2回はこちら)
まずサーバーで普及し,すぐにクライアントに広がる [Muglia]さて,われわれは64ビット版が大事な商品だと思っています。 ————最近のItaniumに関して,私はあまりよく分かっていないのですが,4年ほど前のMicrosoftがマウンテンビューで開いた最初の64ビットWindows Reviewer's Workshopには参加しました。その時に大きな問題になっていたのは,性能はともかく,Itanium用に発表したバージョンのWindowsが完全ではなかったことでした。 つまり,その64ビット版は,32ビット版の全機能を備えていませんでした。もちろん,当時32ビット・アプリケーションを動かしたときの性能はひどいものでしたし… [Price]そういう問題は両方とも,新しい64ビット版では修正されています。もし今,AMD64上での性能を見て,12カ月後にジャンプしたとしたら… ————もちろん。でも,あなたは今の時点で,Athlon 64搭載のノート・パソコンを買えますよ。 [Muglia]そうそう。Opteronではないけど,同じ技術をベースにしたものをね。 [Price]サーバー・ベンダーが64ビット・マシンを出荷するとき,AMD64か,Itaniumかといったことを問題にするのは,そのうち無意味な状況になるでしょう。 ————まずサーバーで成功するということですか? [Muglia]われわれは,まずサーバーから始めると思いますが,かなり早いうちにクライアントにも移行させるつもりです。 ————こうしたマシンは今日どんな感じなのですか?AMD64では1つのきょう体にどのくらい多くのプロセッサを搭載できるのですか?
[Muglia]4CPUがいいと思います。今後12~15カ月でたくさんそういうマシンを目にするでしょう。8CPUが出てくるには,もっと時間がかかります。しかし,AMD64とIntel EM64Tは,将来かなりの数を占めるプラットフォームになると私は思います。 ————ええ,私もそう思いますよ。私はそれがとても早く普及すると思います。2005年のクリスマス前に,(メインストリームの)全PCシステムが64ビットになっているでしょう。 [Muglia]来年までにはすべてのシステムで入手できるようになるでしょう。クライアントでも大部分を占めるようになると思います。 ————その通りです。
32ビット・アプリが64ビットOS上で8%も向上 [Muglia]最近気付いたのですが,32ビット・アプリケーションは,32ビットOS上よりも64ビットOS上の方がよく動くんですよ。64ビットCPUと64ビットOSは,すべてを変えます。 ————今それは何を比較して言っているのですか?各マシンが同じ動作周波数ですか? [Muglia]すべて同じです。同じチップに,そのほかすべて同じ。われわれは32ビットWindows上でアプリケーションを動かし,それから同じアプリケーションを64ビットWindowsに持っていって動かしてみましたが,大体平均して8%性能が向上します。
Intel EM64T対AMD64,とりあえずAMD64に一日の長がある ————AMDの64ビットCPUとインテルの64ビットCPUの間で,何か違いがありますか? [Muglia]ええ(笑い)。 ————それをはっきり言うのははばかられます?(笑) [Muglia]そうですねえ,AMDはいい仕事をしましたよ…(大笑い) ————了解です。どちらも重要なパートナだとは思います… [Muglia]私が思ったのは,両社とも非常に多大な投資をしたんでしょう…お客さんはどちらのソリューションでもハッピーになれると保証しますよ。 ————そりゃそうでしょう。(大笑い) [Muglia]違いはありますかって? ええ,違いはありますよ。 ————そうですか,じゃあこの2つの会社は自分たちの64ビット製品をどう差別化しているんですか? [Muglia]つまりIntelがしなかったことで,AMDがやったことがいくつかあります。そしてIntelも投資を続けると思いますし,かなりよい仕事をするでしょう。AMDはこの点で一歩進んでいます。彼らのほうが先を行っていることは間違いありません。 ————そうですか,私はAMD64が,今後10年は孤立したものになるだろうと思っていました,Alphaの二の舞になると…
「闘うプログラマ」が肩入れするAMD64 [Muglia]いやあ,私はそうは思いません。でも私がどうしてそう思ったか分かりますか?Daveのせいです。 ————Windows NTを開発したDavid Cutler(デビッド・カトラー)氏ですね。 [Muglia]ええ,DaveはまさにAMD64にかかわるあらゆる所にいました。Daveはそのチップの設計と,非常に密接して仕事をしました。 彼は本当に互換性があるものを作ろうとしていました。そして,われわれが抱えている問題は,自分が持つアプリケーションをすべて総合的にサポートしたいということです。これらのチップはそういう目的のためには,まさに打って付けです。 ————あたかもMicrosoftのモデルをチップの設計に適用するみたいですね。Itaniumは,その長所の故に,インストール・ベースをあまりうまく増やすことができませんでした。 [Muglia]そう,あまりうまくいかなかった。 ————ではコアOSの恩恵にまた戻りますが,さっきの数字はどこから出てきたのですか? [Muglia]Microsoftの社内テストの結果です。われわれが見ているのは実際のところ,とても注目に値するものです。 [Price]32ビットではアドレス空間の制限は山のようにあるし,特定の機能については十分なメモリーが確保できません。ある一定量のメモリーがあればそうした制限はすべてなくなります。
64ビット・マシンでターミナル・サービスの性能がアップ [Muglia]われわれは関連する用途全体でテストしました。いくつかの用途は,64ビットにしてもあまり恩恵はありません。しかし,特定の用途で64ビットOSを使うことは,ある利益を与えます。たとえそのアプリケーションが32ビットだとしても,64ビットOS上で動作させることで,多大な恩恵を得られます。その一番極端な例は,ターミナル・サービスです。というのは,そのサービスはマシンにある物理的なメモリー容量によって制限を受けるからです。それが32ビット・アプリケーションだとしても,同じコンピュータ上で今よりもっとたくさんのユーザーを同時にサービスさせることができます。それに最近の4CPUのマシンはものすごく速いですよ。 ————そういうマシンは今出荷されているものですか,それとも来年登場するものですか? [Muglia]もう登場していますよ。それはAMDのOpteronを搭載したマシンです。 ————物理的には今のOpteronマシンでのメモリーの最大値はどういうものですか? [Muglia]マシンにあるスロット数で物理的限界は決まります。その数字までは正確に覚えていません。今時ならきっと32Gバイトのシステムも見かけると思いますよ。 ————32ビットの4Gバイトに比べて,ということですか。 [Muglia]ええ。われわれはアドレス拡張にもっと多くのことがやれますが。それはよくできています。昔あったメモリー・エクステンダみたいなものですね。 ————ああ,ありましたね,古き良き時代が。でもなんとまあ,今年は32Gバイトのメモリー搭載ですか。 [Muglia]ええ。われわれはItaniumシステムでは,テラバイト単位のメモリーを載せました。これらは本当に大きなシステムでした。
64ビット版Windowsは2003のSP1と同時に出る ————ソフトウエアのサポートがどう進んでいるかですが…多分この新しい64ビット・プラットフォーム上で稼働する64ビット版のSQL Serverを出すんですよね。 [Muglia]64ビット・ネイティブのSQL Serverは,来年の新バージョン「SQL Server 2005」が出るときに同時に出します。 ————ほかの製品についてはどうですか? [Muglia]ほとんどは64ビットに移行する必要はありません。少なくとも今のところは。 ————では,「Windows Server 2003 for 64-Bit Extended Systems」は,Windows Server 2003のSP1と同時に出荷するんですか? [Muglia]その通りです。そしてすぐその後に全く同じコードをベースにしたクライアントOS「Windows XP for 64-Bit Extended Systems」をリリースします。業界がどのくらい早く64ビットにスイッチするか,聞いてみるのは楽しいですよ。われわれはかなり急速に変わるだろうと強気に考えています。
すでに1万のドライバが64ビット化されている ————明らかにドライバのサポートが大きな問題になりますね。 [Muglia]ご存知の通り,理解しておいてほしいのはそれです。まさにそれが重要な問題なんです。1万以上のドライバが,もう新しいOS上で稼働しています。つまりたくさんのドライバが出ています。 ————これはNT4以来続いた,Hardware Compatibility List(HCL)を印刷していた時代に似ていますね。そのリストをお店に持っていって,どのハードウエアが実際に買えるか調べなきゃいけない,という。 [Muglia]うーん,でもそんなにひどくはなくて,既に1万も64ビットにコンバートされたドライバがあるんです。結局もっとたくさんのドライバのサポートをしなくてはいけないんですがね。もちろん世の中にはコンバート済みのドライバよりも,たくさんのドライバがあるわけです。いくつかのドライバが,コンバートされないこともきっとあるでしょう。例えば,4年前のプリンタは動かないかもしれません。 ————そうですね,でも新しいハードウエアは大体サポートされてほしいものです。
[Muglia]ええ。
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