■Windows Serverの開発責任者であるMicrosoftのBob Muglia上級副社長のインタビュー。第2回は,いよいよ本題であるWindows Serverのリリース・サイクルとロードマップに入っていく。
■4年のリリース・サイクルを基本に,サービス・パックがその間を埋める。さらにWindows 2000のSP5,「Server Performance Advisor」,Windows Server 2003のSP1の新機能「Security Configuration Editor」など,新しい事実が次々にで登場する。

第1回はこちら
(Paul Thurrott=聞き手)

4年ごとにメジャー・リリース
その間にアップデート・リリース

[Muglia]いまやろうとしていることは,われわれがソフトウエアをリリースするスケジュールを,もっと予測可能な状況にすることです。これを実現するために,2003年のクリスマスのころに,Windowsの製品系列の開発部門を,3つの基本的な組織に再編しました。


Bob Muglia氏
米Microsoft,Windows Server部門担当シニア・バイス・プレジデント

 Brian(Valentine)が動かした単一組織から,私が担当しているWindows Serverグループ,Will Pooleが担当しているWindows Clientグループ,そしてBrian(Valentine)が担当しているコア(Windowsカーネル)チーム——の3組織に再編したのです。

 コア・チームは,Windows Server向けにパルスを送るだけという体制に移っています。そのグループが,ほぼ4年ごとにメジャーなリリースをすると,みなさんには考えてもらっていいです。「Longhorn」が次のメジャー・リリースになります。そして,Longhornはクライアント版とサーバー版の2つがリリースされます。サーバー版はまだ開発にちょっと時間がかかりますが。

 しかし,われわれはさらにそれらメジャー・リリースされるカーネル上で,アップデート・リリースを作って,それを出荷しようとしています。アップデートは各メジャー・リリースのほぼ2年後の予定です。つまり,そのアップデートでは最新のWindows Serverのカーネル上に,特徴と機能を追加します。しかも,カーネルには何も手を加えず,ユーザーのために一貫性を保ち,互換性を崩さないようにした上で,新機能を使えるようになるわけです。「R2」(Windows Server R2)はこうしたアップデートの最初のものになるでしょう。

————それではこれで,今のぎくしゃくしているサイクルを止められるわけですね。これまでのサイクルは,企業が計画を立てるのが少し難しいくらい,製品リリースの時期がぐちゃぐちゃになっています。

[Muglia]こう認識しています。何か大きなことをするために,つまりフードを開けてオペレーティング・システムのコアに,何か大きな変更をしようとするには,3~4年と長い時間がかかります。特に,開発中の革新的なものすべてを搭載する場合はそうです。われわれはどうすればパッケージをまとめ,それを一貫性があり,予測可能なやり方で出荷できるでしょうか?

————あなたの担当外だとは思いますが,クライアントも同じやり方で出荷されるのでしょうか?

[Muglia]クライアントに関しては,アップデート・リリースについてこれほど明快なスケジュールではないですね。しかし,きっとそれらもWindows Serverのメジャー・リリースに時期を合わせるでしょう。その点は疑いありません。Media CenterとTablet PCでそうだったように,Windowsクライアントは別々の市場へのリリースを狙っているかもしれません。そんなところでしょう。しかし,サーバーに比べてちょっと環境が違いますからね。

Yukon延期に伴うSAへの不満は,対策を検討中

————最近持ち上がった大きな問題があります。ソフトウエア・アシュアランス(SA)というライセンシング・プログラムを選択したお客が,自分たちはいくつかのリリースの提供を約束されたのだと思っていたのに,SQL Server(Yukon)の出荷が再延期されたことで,大変な数の不満を寄せたということでした。Microsoft社内ではこうしたお客さんたちへの是正措置について,何か話しが進んでいますか?

[Muglia]もちろん!お客様が何を期待していいか分かるように,われわれは矛盾のないようにしたいと思っています。

 当たり前のことですが,3年間のソフトウエア・アシュアランスの契約を結んでいる場合,製品の出荷の間隔が4年では,お客様にとっては問題があるわけです。製品出荷をもっと定期的な基準に沿わせることで,われわれは現在の基準に価値を持たせられます。

[Price]もう1つ付け加えると,ほとんどのお客様は,次のバージョンを入手するためだけにライセンスを買っているのではない,ということです。彼らはほかの恩恵も受けているし,別なときには多数の違うサーバーが続々と出るかもしれない。企業の顧客は,その価値を買っていることが分かっている。SQL Serverのバージョンの1つは特別なケースに入るもので…

————うーん。これはある人々にとっては明らかに大きな問題なのです。私はこの問題でたくさん電子メールをもらっています。あなたが言っていることは正しいのでしょうが,次のバージョンを受け取れると期待した人もたくさんいるようです。

[Price]ええ,それが本当の問題ですね。

————R2は,もう1つ別にServerリリースを購入する必要を解決するのですか?

[Muglia]私はそうだと思います。R2は新しいサーバー版のリリースで,お客様がSAに加入していなければお金を払う必要があります。SAに入っていれば,すぐに手に入れられます。

サーバーOSのロードマップを語る
2007年に出るLonghorn Server

[Muglia]それじゃ実際のロードマップを見ることにしましょう。ご存知のようにわれわれは昨年「Windows Server 2003」を出荷しました。今年は「Windows Server 2003 Service Pack 1(SP1)」をリリースし,2005年には「Windows Server 2003 R2」つまり最初のアップデート版をリリースします。

 2006年にはLonghornのベータ・プロセスをはじめ,多分Windows Server 2003の2番目のサービス・パックも出ます。2007年を目標にLonghorn Serverを出荷するつもりですが,Longhornクライアントの6~12カ月あとです。クライアントのずっとあとですね。

————分かりました。ではスケジュールは,みんなそんなには変わっていないのですね。ある人は私に,Longhorn Serverのスケジュールは,Longhornクライアントのリリースよりも「1マイル・ストーン分」遅れたころだといっていました。

[Muglia]ええ,大体そんなものですね。2009年には多分Longhorn Serverのアップデート版をリリースするでしょう。そんなわけで,われわれは実際にははるか先,Blackcombまで,どう革新を推し進めていけるかを考えています。

 つまり,今年われわれが抱えているのは,1本のサービス・パックよりは少し多い程度です。つまり,今年はWindows Server 2003 SP1のほかに,全く新しいプラットフォーム「64ビット版」も開発しているということです。かなりメジャーなリリースです。しかし,業界がどのようにこのメジャーなプラットフォームのシフトを受け止められるかということもあります。われわれはそれにこたえなければなりません。このことは分かりますか?

今年は64ビット版も手がける
Feature Packは今後も出していく

————ええ,私は「AMD64」と「Intel EM64T」を対象にした今度の製品「Windows Server 2003 for 64-Bit Extended Systems」については分かっています。しかし,いくつか疑問もあります。まず,これまでWindows Server 2003用には,通常のサービス・パックとは違うたくさんのFeature Packのリリースがありました。ほかにFeature Pack開発を進める予定はあるのですか?これは今後Windows Serverリリース向けの前例になるのでしょうか?

[Muglia]ある程度はね。もし単に4年ごとにメジャー・リリースをするだけなら,たくさんFeature Packを出さなければいけません。もし,リリースが2年間隔だったら,もっと少ない数で済ませられます。私は,可能な範囲でアップデート・リリースに機能を追加して出すでしょう。Feature Packとして別々に出すのではなくね。

 しかし,特定のFeature Packを出す理由は,今後もずっと残るでしょう。Feature Packについて悩んでいるのはこういうことです。お客さんは,Feature Packsを自分のシステムに取り込むのに苦労しています。それらはあまり分かりやすくないし,ダウンロードして手に入れなくてはいけないし,OEMは出荷しませんしね。1つのリリースにまとまった形で提供されると便利で,お客さんにとってはずっとたくさんの利益をもたらすのです。

 私は,MicrosoftがもうFeature Packを出さないとはいいません。出すつもりです。先々も続ける例としては,SharePointですね。このケースでは,Feature Packは次のOfficeの出荷に合わせて出荷します。Officeに密接に連携しているからです。われわれは自分たちが正しいことをしていると確信しています。そのあと次のServerバージョンの中に,Feature Packの機能を組み込むでしょう。Office 2003のほうに注目すれば,SharePointがR2に組み込まれるまでは18~20カ月かかるでしょう。

Windows 2000 SP5はXP SP2のようにはならない

————もう1つの質問はWindows 2000についてです。Windows 2000のアップデート版を出す計画はありますか?私がたくさん受ける質問のうちの1つは,Windows 2000 Service Pack 5が,Windows XP SP2とWindows Server SP1にあった「Springboard」セキュリティ・アップデートの機能の一部を含むのかどうか,ということです。

[Muglia]われわれは,Windows 2000に反映させる必要があると分かったコア部分の修正作業をしている最中です。しかし,現時点ではSpringboardのようなものはWindows 2000には何もありません。XPにしたような非常に広いことはしないでしょう。

————どうなるのか,もうちょっとはっきりさせてくれませんか。XP SP2にあったようなロー・レベルの改善のことを言っているのですか? それともホットフィックスなどに限ったことですか?

[Muglia]われわれが判断した本当に重要なセキュリティ上の弱点だけを反映させるつもりです。考慮しているのはそれだけです。Springboardを実装するためには,オペレーティング・システムに何千何百という変更をしなければならなかったことを,理解してもらわなくてはなりません。われわれは,XP SP2の中のだれも実際には悪用しなかった弱点まで大掃除する仕事をたくさんやって,しかも今後もそういったことが起きる可能性がないよう保証したいと思っている。だから,その種の仕事をヤマほど抱えているところなのです。それがWindows 2000にすべて反映されるわけではありません。

————分かりました。では…Windows 2000 Service Pack 5は,伝統的なサービス・パックに近くなり,XP SP2のようなものではなくなるわけですね。

[Muglia]全くその通りです。XP SP2はサービス・パックのように見えないです。

————そう,全然そう見えない。

性能判別ツール「Server Performance Advisor」

[Muglia]Feature Packについてほかにご質問は?

————「Server Performance Advisor」って何ですか?

[Muglia]違った性能を出すはずの構成を調べ,結果としてどんな性能が出せるかを簡単に判定できるようにするツールです。あなたのシステムのより深い基本的な性能特性が分かるようにします。

————分かりました。ではWindows Update Servicesは相変わらず年内にリリースする予定なのですか?

[Price]はい,実際には2004年末ですが。

[Muglia]それとVirtual Server 2005は予定通りこの夏です。

————分かりました。

Windows Server 2003 SP1の新機能はこうなる!

[Muglia]OK,じゃ次はSP1です。

 Windows Server 2003 SP1は3つの要素を持ちます。第1にホットフィックスに関するシステムへの基本レベルの改良です。われわれはWindows Server 2003では,あまり多くの問題に遭遇していませんが,それでも問題はあります。セキュリティ強化もありますが,Windows XP SP2に追加したようなセキュリティ強化の大多数は,既にWindows Server 2003には組み込まれていました。Windows XPで経験した弱点のいくつかは,Windows Server 2003にはなかったのです。

 例えば,SasserはWindows Server 2003には影響しません。さらにわれわれは,SP1で性能を向上させました。SP1は,全体的に多少の性能向上をもたらすだろうと思っています。さらにこのリリースは,可用性も向上しています。そのほか大事な点は,AMD64/Intel EM64Tの64ビット・サポートです。そして「Security Configuration Wizard(SCW)」は重要な機能になるでしょう。

————明らかに,SCWはこのリリースの中では重要なユーザー・インターフェースですね。

[Price]Windows 2000と2003の「セキュリティ構成エディタ(SCE)」を使ったことがありますか? 応用したい設定テンプレートを提供し,さらに設定を逸脱するマシンとその理由を知らせてくれます。そうした機能を自然に進歩させたのが「SCW」です。よりロール・ベースになりました。

 SCEのことを知らない人のほうが多いのは,残念なことです。個別のポリシー設定だけでなく,レジストリ設定にさえ悩んでいる人がたくさんいるわけですから。

————それはあなた方が抱えている最大の問題ですね。既にあなた方が出荷している「サーバーの役割管理」が,実際にどう使われているか,管理者たちはグラフィカルな画面を見ると,かえって使うのをやめちゃうんですね。SCWも同じ問題を抱えることになると思います。残念でもあります。その画面は本当に美しいですからね。今まで見た中で一番クールなServerツールの1つですよ。

[Price]もし,ユーザーがウィザードと名のつくものは何も使いたくない筋金入りの管理者たちなら,われわれはその名前を使うのが正しいのかどうか,検討する余地があります。しかし,スクリプトを書けるし,同様にプログラミングに使える能力もあるんですよ。

————そう。それは大きな違いになるなあ。「忘れるなよ,みんな。これと一緒にXMLテンプレートも作れるんだよ」って…

[Price](笑い)ええ,その通り。もしそうしたいなら,実際にそういう苦労をすることもできます。メモ帳が使えますよ。

[Muglia]まあ。SP1はこんなところです。

————それじゃ,スケジュールはどうですか?われわれは,XP SP2ができ上がるのを待って,それから次の準備が始まるのを待つわけ?

[Muglia]全くその通り。われわれみんな,待っているのです。
(第3回に続く)