(Paul Thurrott)

 その日,Windows 2000のメインストリーム・サポート・フェーズの終了期限は刻々と迫っていた。米Microsoftは6月28日(米国時間),Windows 2000用の最後のメジャーな更新を,狡猾にも「Windows 2000 SP4用の更新プログラム・ロールアップ1」という名前を付けて公開した(既報)。それから暦は7月1日になり,Windows 2000は延長サポート・フェーズへ突入した。

SP5を出さなかったMSの言い訳
 それは普通のマイルストーンのようにも見える。しかし現実には,Windows 2000に対するMicrosoftのサポートはもう少し先まで続くのだ。あえて私は,Microsoftが2004年半ばにWindows 2000のサポートを終了させたと言いたい。そのときまで,同社はWindows 2000 SP5を出荷する計画を立てていたからだ。それはMicrosoftが結局はWindows XP SP2とWindows Server 2003 SP1で提供したセキュリティ・フィックス「Springboard」(開発コード名)とほとんど同じ新機能を含むことになっていた。

 しかし,Windows 2000 SP5は世に出なかった。SP5の代わりに2004年11月にMicrosoftは,Windows 2000のユーザーにUpdate Rollupを提供すると発表した(関連記事)。SP5をやめる同社の言い訳は,一見合理的に思える。

 「Windows 2000のために最も重要な更新を含めることで,このUpdate Rollupは顧客が簡単に既存のWindows 2000システムを安全かつ最新に保ち,新しい導入イメージをビルドできるようにする」。同社は当時私にこう説明した。「Update Rollupの中に含まれている更新の数は,普通サービス・パックに含まれている数よりも非常に少ないし,Rollup Updateの中身のほとんどは個別の更新やホットフィックスとして既にリリースしたから,Update Rollupは導入前のテストもあまり必要としない」と。

 この発言は慰めとなるものだ――ただ1点を除けば。想像してほしいが,もしWindows XP SP2で追加されたようなセキュリティ機能を,Windows 2000にも提供されたらどれだけ安全になるかを。「Windowsファイアウオール」や「Windowsセキュリティ センター」,Internet Explorer(IE)の「ポップアップ ブロック」機能,同「アドオンの管理」機能,「安全性が確認できない添付ファイルをブロック」する機能,より安全な無線ネットワーキング・スタック――などなど…。

 かなりの大企業が現場に導入している全Windowsの約半分がWindows XPではなく,Windows 2000であることを考えると,これらのセキュリティ機能が欠けていることは非常に腹立たしい(ただし,XPはクライアント数が250台以下の会社では,もっとたくさん使われている)。

依然多い企業でのWindows 2000利用
 その通り。米AssetMetrix Research Labsの調査によれば,Windows 2000は大から中規模の企業で一番よく普及しているWindowsであり,その人気は毎年わずかに落ちているだけなのだ。その間にMicrosoftがXPに対しては積極的に改良しているにもかかわらず,そして,率直に言ってしまえば,同社が実質的にWindows 2000を捨てたという事実にもかかわらずである。

 この調査は無償でダウンロードでき,とても面白いものだ(該当サイト)。2005年に大から中規模の現場でのWindows 2000の利用数は48%と,Windwos XPの37%を依然上回っている(蛇足ながらWindows 9xの利用数は市場の5%以下に追いやられたが,Windows NT 4.0はいまだに企業の10%で使われている)。

 本当に面白い点は,Windows 2000が生きながらえた方法である。Windows XPの利用数が2003年12月以降市場の6.6%から約40%へ急上昇したのに対し,この期間のWindows 2000の利用は,たった5%減っただけなのだ。

 Microsoftに対して公平を期すと,同社は一度Windows 2000のサポートのライフサイクルを延長しており,それ以前のWindowsより長い期間サポートする。Windows 98のサポートが96カ月だったのに対して,Windows 2000のそれは126カ月になっている。しかし,その寿命はWindows XPよりも短い。Windows XPはLonghornの出荷遅れにより,最低でも144カ月(12年間)サポートされることになるのだ。

安全なIEは2000向けに提供されない
 いずれにしろWindows 2000は2005年7月1日から,ライフサイクルの延長サポート・フェーズに入った。今後,この製品向けのサービス・パックやセキュリティ以外の無償のホットフィックスを出荷しないということだ。セキュリティ・フィックスは出荷し続けるし,もし一定以上のセキュリティ・フィックスを出荷したら「Update Rollup 2」を出すかもしれない。しかし,新機能の追加は期待しない方がよい。Microsoftが2005年末により安全性の高いIE7を提供する予定だが,その恩恵に預かれるのはXP SP2,同x64 Edition,そしてWindows 2003 SP1ユーザーに限られる。Windows 2000ユーザーは,IE7を利用できない(既報)。

 これは,大事な点だ。IE7はタブ・ブラウジングやそのほかの魅力のある機能を備えたクールで新しいWebブラウザという側面を持つだけではない。それはより安全なブラウザであり,Windowsにそれを内蔵することは,基礎となるプラットフォームをより安全にするだろう。Windows 2000ユーザーはその恩恵を受けることができない。

*        *        *

 Microsoftは,無限のリソースを持つ巨大な企業に見える。だが,XP SP2は開発に1年以上かかったし,Windows 2000 SP5の開発は,きっと同じぐらいの時間が必要だろう。Windows 2000が最近,延長サポートに入ったことと,今後数カ月のXPの導入速度が上がることを考えると,私はなぜ同社がクライアントのWindows XP SP2とサーバーのWindows 2003 SP1のバスケットにセキュリティの卵をすべて入れて,古くなったWindows 2000プラットフォームから離れようとするのかを理解した。ユーザーがMicrosoftの思惑通りにOSを移行していないのを,同社が考慮しなかったのは残念としか言いようがない。