「Xbox 360」レポート　第3回

単なるゲーム専用機を超えたハードウエア，拡張性，サービス

PaulThurrott

2005.05.30

（Paul Thurrott）

　米Microsoftは，5月12日にMTVで放映した特別番組とE3開催前夜（同月16日）の記者会見で，次期家庭用ゲーム機「Xbox 360」（開発コード名Xenon）を発表・公開した（関連記事）。このニュースは，ビデオ・ゲーム・ファンにとってだけでなく，それ以外のユーザーも興奮させるものに違いない。第3回は，Xbox 360をめぐるハードウエア，拡張性，サービスなど全体を総括する。

初代機とは全く異なる位置付け
　同社は「Xbox 360」を，次期ビデオ・ゲーム・コンソール以上のものとしてうまく位置付けている。Microsoftの言い方では，それはユーザーを自分たちのPCベースのデジタル・メディア・コンテンツとインターネットの向こうにいるXbox 360ユーザーたちと結びつける“ホーム・エンターテインメント・システム”であるという。

　このビジョンは，純粋なビデオ・ゲーム・マシンだと受け取られた初代Xboxのそれとは明らかに異なる。Xboxが冴えないスタートを切ったあと，共同考案者のSeamus Blackley氏はMicrosoftを去り，同社はXboxをデジタル・メディア世界の神童に変えることに忙しくなった。

　確かにXbox 360は，ビデオ・ゲーム・マシンとしては刺激的な仕様である。それは3つの演算コアを持つ動作周波数3.2GHzのIBM製「Power PC」ベースのプロセッサと，512Mバイトのメモリーを搭載する。さらに，カナダATI Technologies製のグラフィックス・サブシステムは，ネイティブで高品位テレビ（HDTV）の720pと1080iの解像度をサポートする。一方で，通常のテレビ・モニター向けには自動的にダウン・サンプリングしてゲームを表示する。そして，音声出力はマルチチャネルのサラウンド・サウンドである。その上，無線コントローラと3つのUSB 2.0端子，そしてリムーバルのハードディスクを1台備える。

　このデバイスの外観は，白く腰の細くなった形の魅力的なフェース・プレートを持ち，まるで米Apple Computer製の「iPod」のようである。それは，オリジナルXboxとは全く異なるものだ。これらの修正は，すべてデザイナの要請によるとMicrosoftは言っている。新しいデザインは，同社が信じているように，はるかに魅力的で，ゲーム・ユーザー以外にも好意的に受け入れられるだろう。さらにユーザーがフェースプレートに交換することで，多彩な外観に提供する。

豊富なディスク・フォーマットへの対応
　本体と同時に公開されたXbox 360用ゲームのデモには，息を飲む。ゲームの一画面というよりは，HDTVのプロモーション映像のようである。例えば，「Tiger Woods PGA Tour 06」では，あなたは一つひとつの芝の葉や服の繊維が風に揺れる様子を見られる（画面）。一方，「Call of Duty 2」では，第2次世界大戦の恐怖を正確に描き出す（画面）。そして，「Project Gotham Racing 2」に出てくる車は，本物そっくりである。

　だが，私を一番熱くさせるのは，Xbox 360のマルチメディア機能である。第1は，Xbox 360が対応する光ディスク・フォーマットの豊富さだ。DVD-ROM，DVD-R/RW，DVD+R/RW，CD-DA，CD-ROM，CD-R，CD-RW，WMA CD，MP3 CD，そしてJPEG Photo CDフォーマットをサポートするほか，DVDビデオも本体だけで再生できる。そのコンソールから直接オーディオCDをXbox 360のハードディスクに取り込める。

　さらにXbox 360内に統合された「Windows Media Center Extender」を使い，あなたのPC上のデジタル・メディア・コンテンツへホーム・ネットワークを経由してアクセスしたり，そのコンテンツをあなたが持つ一番いいテレビとステレオ・システムで再生したりすることもできる。しかし，現在のかなり制約のあるExtenderとは異なり，Xbox 360ではライブと録画の両方のHDTV番組やHDTVのムービーをストリームできる。これは驚くべきもので，AVオタクにとってはたまらない機能だ。

ネットワーク・サービスも大幅改良
　Microsoftは，Xbox向けのネットワーク・サービス「Xbox Live」も大きく改良しつつある。Xbox 360ユーザー全員が，Xbox Liveの新しいサービス・レベル「Xbox Live Silver」へ無償でアクセスできるようになる。このSilverレベルでは，ユーザーは自分たちの「Gamer Profile」を作成する。これには，「Gamer Card」（ユーザー情報の要約）と「GameScore」（オンラインとオフラインでのゲームで達成した内容と他の人からのフィードバック）を含む。

　さらにSilverユーザーたちは，「Xbox Live Marketplace」へもアクセスできる。そこではゲームの予告編やほかのコンテンツをダウンロードしたり，新しいゲーム・レベルやマップ，武器，乗り物，スキン，そのほか新しいタイプのコンテンツをオンデマンドで購入できる。最後に，Silverユーザーはどれがその中で自分たちが戦いたい「GamerZone」かを示すことができる。各ゾーンはすべての世代が一緒に遊ぶための「Family」とカジュアルなゲーマー向けの「R&R」，ゲーム・エリート向けの「Pro」，そして「Underground」を含んでいる。聞くところによるとこのUndergroundは，非協調主義者の興味をそそるという，いまだ明かされてないゾーンである。

　新設されるサービス「Xbox Live Gold」は，現在のXbox Live購読サービスを置き換えるもので1年単位で契約する。このGoldレベルでは，Silverで受けられるサービスに加えて，インターネット経由でほかのメンバーたちとマルチプレーヤー・ゲームをプレーできる。さらに，Microsoftが発売するオプションのカメラ（解像度は640×480ドット，インターフェースはUSB 2.0）を使うビデオ・チャット機能も追加する。

完全ではない初代機との互換性
　互換性に関する情報は，あまりいいものではない。Microsoftは，Xbox 360をオリジナルXboxの中で売れているタイトルだけをプレーできるように設計した。そのため，Xbox 360では，現在入手できるXboxのタイトルすべての動作をサポートするわけではない。この問題は技術的なものである。Xbox 360は，オリジナルのXboxとは全く違うハードウエア・プラットホームなので，同社は各タイトルがXbox 360上でプレーできるように応急措置的にソフトウエアに手作業で作らなければならないだろう。Xbox 360がどのタイトルをサポートするかは，まだ公表されていない。

　しかし，全般的にXbox 360が描く未来は驚くほどにバラ色である。同時期に発表されたソニーの「PlayStation 3」とは異なり，実際に動作するハードウエアが既に公開されており，実際に人々がそれを触われる状態であった。ソニーはE3の会場でPlayStation 3のプロトタイプのマシンしか見せなかったし，人々はそれに触れたり使ったりできなかった。Microsoftは，今回紹介したXbox 360を2005年11月に北米とヨーロッパ，そして日本で同時出荷する計画である。

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