(Paul Robichaux)

 創業したばかりの米Adomoという会社が2月14日に新製品を発表した。「Adomo Voice Messaging for Exchange(AVME)」がそれだ。筆者は,同社から事前に製品説明を受けていたので,早くその製品の内容を書きたくてうずうずしていた。

Exchange Serverに追加するボイス・メール・システム
 Adomoは,Exchange Severをメッセージ・ストアに使うだけでなく,包括的なユニファイド・メッセージング(UM)ソリューションを構築するバックボーンとして使うよう努力してきた。これは米Cisco Systemsが「Cisco Unity」でやていることと同様である。

 AVMEは,複数のバックエンド・システムとともに動作させるのではなく,Exchangeを強化する方式になっている。同社はExchangeプラットフォームが,多くの能力を備えていることを理解している。Exchange Serverを昔のPBX(構内交換機)ベースのボイス・メール・システムと区別するために,Exchangeが持つ機能を利用しているのだ。

 Adomoシステムは,次の3つのコンポーネントから構成されている。
(1)PBXシステムとのインターフェースになるアプライアンス
(2)Exchangeコネクタ
(3)電話を受け入れてその経路を決めるオート・アテンダント

 アプライアンスは標準的なシステム・ラックに取り付け可能なボックスで,PBXシステムから最大36セッション(ポート)を接続できる。もし36ポート以上必要なら,複数のアプライアンスを接続できる。Adomoの資料には,リモート・オフィスで使えるポート数がもっと少ない12または24ポートのアプライアンスが掲載されている。これらの製品から36ポート・バージョンにアップグレードできるのかどうかは確認していない。

クライアント側に特別なプラグインは不要
 36ポートのアプライアンスは,500人以上のユーザーがいる組織向けに設計されおり,使い方によるが1800~3600人までのユーザーをサービスするのに,十分な大きさだという。このアプライアンスでは,入ってくるメッセージを圧縮するために「Global System for Mobile Communication(GSM)」コーデックを使う。音声が再生できるWindowsやMac OS X,Linux搭載のマシンであれば,ほぼ何であれメッセージを聞ける。GSMコードは,Ciscoの「Algebraic Code Excited Linear Prediction(ACELP)」コーデックとは異なり一般的なものだ。入ってきたメッセージをユーザーのメールボックスへ送るとExchangeコネクタが起動し,メールボックスには典型的な電子メールとしてメッセージが現れる。この重要な機能は,クライアントの設定を変更することなくソリューションを導入するのに役立つ。AVMEは使用にあたって特別なプラグインやOutlookを必要とせず,ボイス・メールの添付物は電子メールの添付物を扱えて音声を出力できるアプリケーションやデバイスなら何でも利用できる。例えばOutlook Web Access(OWA)やWindows Mobileデバイスなどである。

 AVMEはあなたのボイス・メールをあなたの電話で再生したり,送信者を呼び出したり,ほかの適切なアプリケーションを実行できるようなボタンを含んだExchangeフォームにしてメッセージを配信する。将来のバージョンではOutlookと緊密に統合すると約束しているが,既に施された統合もかなりよくできている。あなたは,自分宛てのメッセージを検索するのに一般的な電話を使い,昔からのボイス・メール・システムでやっていたのと同じような操作で実行できる。さらにAdomoでは[予定表]と[連絡先],メッセージ・データを検索するために,従来の電話を使うテキスト読み上げシステムも備えている。ただし,これに関して筆者はまだテストしていない。

Windowsシステムには手をつけない
 導入の面から見ると,Adomoの大きなセールス・ポイントは,AVMEを実装するためにActive Directory(AD)やExchange Serverに触れなくてもいいということだ。Exchangeの組織ごとにコネクタを1つ必要とするだけであり,このコネクタはExchange Server上になくてもよい。ADのスキーマを変える必要はない。ユーザー・アカウントはボイス・メール対応として関連付けられた電話番号を指定して準備する。別々のユーザー管理ツールは必要としない。AdomoはAVMEが使うADの属性がどれかは明言していないが,資料によると「マイクロソフト管理コンソール(MMC)」の[AD Users and Computers]スナップインか,スクリプトを使ってすべての準備作業を行えるという。

 各メッセージはCaller IDデータ付きで表示され,コネクタは各メッセージを正しい送信者の情報付きで表示するために,そのデータとユーザーの[連絡先]フォルダを付き合わせる。この方法は,電子メール・メッセージを扱うときと同じやり方で,各ボイス・メール・メッセージに(手動でも何かの規則によってでも)順位をつけて扱うのを簡単にできるようにする。コネクタはShort Message Service(SMS)メッセージを携帯電話に送れるし,あるいは「BlackBerry」や他の音声出力のない機器の「件名」欄にCaller IDを入れることで,警告を送れる。

Live Communications Server 2005と一緒に利用
 このシステムに電話をかけるとオート・アテンダントが答えて,記録されたあいさつを再生する。名前を言うと,AVMEの音声認識システムがGlobal Address List(GAL)内の名前を探すために,競合解消機能(conflict resolution)を使う。どのドメインやグループ・メンバーシップ,組織単位(OU)のJohn Smithに接続すべきか(例えば,営業のJohn Smithなのか,技術のJohn Smithなのか)をあなたに尋ねることができる。アテンダントはユーザー独自のデータにアクセスできる。例えば「Office Live Communications Server」から,あなたのスケジュールと居場所のデータを取り出せる。

 次のようなルールを設定できると思ってほしい。「もし妻が彼女の携帯から電話をかけてきたら,私に教えること。そうでなければ,かかってきた電話を全部ボイス・メールに記録しておくこと」。ある連絡先からの電話に対して,アテンダントがこう対応するのを想像してほしい。「Janeは中部標準時の午後3時まで会議です。あなたが電話をかけてきていることを彼女に伝えてほしいですか?」。もちろん彼女の[連絡先]フォルダに,Janeがあなたを信頼すると設定しておいたからこう答えているのだ。この製品は将来の拡張について,ほぼ無限の可能性を秘めている。なぜかと言えば一番の理由は,これをSession Initiation Protocol(SIP)対応の製品と一緒に使えるからだ。「Live Communications Server 2005」もSIPに対応している。

 Adomoが狙っている市場を考えると,AVMEはすべての人のために使えるというものではないだろう。第1に,それはExchange Server 2003を必要とする。第2に,Adomoは価格に関する情報を(少なくとも私には)明らかにしていない。その理由は,同社が最低500ライセンス以上を持つユーザーを狙っているからであり,多分そう安くはない。ひとつ面白い話がある。AdomoはExchangeサービスのホスティング・サービスを販売する会社に対して,この製品の恩恵に言及しているのだ。この製品はホスティング・サービスの会社にとって,収入面でかなりの旨味があるだろう,と。

 機能に関してAVMEと一番競合するのは,米Wildfire Communicationsの「Wildfire」サービスである。私がチェックしたときは,ユーザー当たり毎月70~150ドルの費用が必要だった。だからAdomoは確かに若干の戦略を巡らす余地がある。私は旧式のボイス・メール・システムのコストがどのくらいかは知らないが,ボイス・メール・データの管理作業をExchangeのシステムの一部に切り替えられることは大変に魅力的だ。

 大きな問題は,Microsoftがこの分野で何を計画しているかだ。Live Communications Server 2005は,SIPトランスポートを提供する。Microsoftの次の開発コード名「Istanbul」と呼ばれるインスタント・メッセージ(IM)クライアントは,テレフォニーの統合機能を含む。そして1月に同社が明らかにした次期版「Exchange 12」(開発コード名)のロードマップには,ユニファイド・メッセージングの計画を含んでいる(関連記事)。Microsoftの計画の詳細がが分からないと,Exchange 12の実装がAdomo製品を補完するのか,それとも競合するのかを予想するのは難しい。しかしAdomoは市場を引き寄せる魅力を得るのに1年ないし2年かけているので,素晴らしい製品を持っていればすぐに市場を得られるだろう。