(Paul Thurrott)

 最近私は,米Microsoftのコーポレート・バイス・プレジデントであるDave Thompson氏とExchange Serverグループのシニア・ディレクタであるKim Akers氏から,Exchange Serverのロードマップについて話を聞いた(該当サイト)。

 Thompson氏は,ご存知の方もいるかもしれないが,1990年に生まれたばかりのWindows NTチームに参加して,それ以来ずっとWindowsに取り組んできた人だ。Windows Server 2003の出荷で活躍した後,Thompson氏は6カ月の休暇をとって,自分がしたいことを考え直した。2003年末に復帰したとき彼は,Microsoftのコミュニケーションとコラボレーションの戦略に集中するため,Exchange Serverに加わったのである。

 Thompson氏は私に言った。「僕はいつもコミュニケーションにかかわってきました。Windows Serverでもそうでした。私にとってコミュニケーションは常に関心のある分野でした。Exchangeは,われわれの顧客にとって非常に重要なもので,人々の暮らしにも影響力があります。わたしはインパクトのある分野に行きたかったのです。この部署にきてから,(Exchangeの次のメジャー・バージョンに向けて)チームを作り上げて,計画を練っているところです。それはこれまでの中で,最も顧客を重視した製品になるでしょう」。

Exchange 2003の成功とKodiakの失敗
 2004年は,Exchangeにとっては変わり目の年だった。最初のころ同社のExchange事業は,10億ドルの収益という目標に達し,2003年末にリリースされたExchange Server 2003は,今日までのどのExchangeよりも早く受け入れられた。そして,2004年にExchange Server 5.5ユーザーは,Exchange Serverユーザー全体の30%と従来よりも10ポイント減った。大部分はExchange Server 2003の手堅い評判によるものだ。

 しかし,Microsoftは2004年にExchangeに関して,注目を集めたKodiakプロジェクトをキャンセルするという,ちょっとしたつまずきがあった。このプロジェクトは,Exchangeの時代遅れのJetベースのデータ・ストアを,もっと新しく拡張性のあるSQL Serverベースのデータ・ストアに置き換えるというものだった。さらに2004年初めに発表されたジャンク・メールをフィルタする「Exchange Server Edge Services」は,最近になってキャンセルされた。

 われわれは,Exchangeに関するMicrosoftのほんの少しの失敗を,同社の製品出荷の問題に関するもっと大きな議論に広げることもできる。しかし,そういった失敗は,常に変わり続ける電子メールが持っている本質的なものだと理解するほうがより公正だろう。

 Exchange 5.5が出荷されたとき,電子メールは今日のような必要不可欠なインフラ製品ではなかったし,電子メール・ベースの不正ソフトウエア(Malware)攻撃も一般的ではなかった。そして,今日になって状況は変わった。電子メールはMicrosoftの顧客によると,電話より重要なものであり,大企業でも小さい企業でも電子メールの容量は指数関数的に増えている。Malwareとサーバーの停止は,かつてはいらいらするだけだったのが,今ではビジネスに破壊的な影響を与えるようになった。Exchangeは多分,Microsoftの他の製品の何倍も時間をかけて改造されなければならなかったのだ。そして将来を考えて,Exchangeは電子メールがいつでも使えること,デバイスに互換性があること,より進化したコラボレーションとコミュニケーションの機能があること――など,ますます高まる需要を満たすように変化し続ける必要がある。

好評のEBPAがアップデート
 Kodiakプロジェクトからの撤退後,Microsoftは慎重に歩を進めている。しかも,Exchange Server 2003に精通している人でさえ,その変化に驚くかもしれない。

 Windows Server 2003の場合と同じく,Exchange Server 2003でもアドオンとサービス・パックにより重要な改良を追加するのに忙しかった。その一番いい例は「Exchange Server Best Practices Analyzer Tool」だ(既報)。これは最初2004年9月に出荷されたが,同年12月にバージョン1.1へアップデートされた。

 この優秀なツールは,Exchangeに関する知識からなるビルトインのデータベースを利用するうえに,最新の情報を得るため,オンラインのサポート技術情報にも接続でき,あなたのExchangeの環境を分析して,セキュリティと構成設定を改善するための示唆を与えてくれる。

2005年後半はSP2を出荷
 2005年後半に重要なサービス・パックとして,「Exchange Server 2003 Service Pack 2(SP2)」が出荷される予定だ。これには先にキャンセルになったExchange Server Edge Servicesの機能が搭載されていて,「Intelligent Message Filter(IMF)」をバージョンアップすることになる。他にも,ジャンク・メールを減らす「Sender ID」という電子メール方式の実装,データの移動性に関する機能拡張,パブリック・フォルダの管理性の改善――などを搭載するという。

2006年はメジャー・バージョンアップ「E12」
 2006年にMicrosoftは,次のExchangeのメジャー・バージョン「E12」(開発コード名)を出荷する。E12の開発は,「Outlook」と「Windows Mobile」(Pocket PCとスマートホンのOS)の次期版に合わせたもので,E12はそれらとほぼ同時に出荷されるだろう。

 E12は複数の分野を狙った巨大なリリースになろうとしている。ハイレベルではITの専門家,Exchangeの管理者,Exchangeを利用する従業員,そしてセキュリティ分野にメリットがあると,Thompson氏は宣伝している。さらにE12で計画された改良の詳細を見れば見るほど,あなたはとんでもない大きな変更であることに気づくに違いない。

 E12は,Exchangeの管理者がもっと楽に特定用途のExchangeサーバーを構成できるようにするため,Windows Server 2003で登場したロール・ベースのアーキテクチャを使う。E12のロール(役割)とは「エッジ・サーバー」「ブリッジヘッド・サーバー」「ユニファイド・メッセージング(UM)サーバー」「クライアント・アクセス・サーバー」「メールボックス・サーバー」「パブリック・フォルダ・サーバー」――などである。

 例えば,UMサーバーのロールでは,E12は電子メールだけのものではなくなり,PBX(構内電話交換機)のボイス・メール,Voice over IP(VoIP),ファクス・メッセージも管理するようになる。

 あるいは,エッジ・サーバーのロールでは,E12はメッセージのウイルス予防とあなたのネットワークの周囲のスキャン処理をサポートする。この特徴は,あなたのネットワークを流れて,従業員の時間を無駄にする望まない電子メールの数を減らすに違いない。確立された信頼関係を持つ現場同士のために,E12はインターネットを介した暗号化SSL(セキュア・ソケット・レイヤー)パイプ経由で,企業間の安全なメッセージングをサポートする。これには双方の拠点で,E12エッジ・サーバーが必要だが,「HIPAA(医療保険の相互運用性と説明責任に関する法律)」やその他の法規制を満たす必要がある現場にとっては,ありがたいものになるだろう。

 同社はまだこの製品のエディションがどうなるかを明らかにしていないが,E12の各エディションは32ビット版と64ビット(x64)版の形で出荷されるだろう。つまり,Microsoftが企業版と標準版のE12を作るなら,両方ともx64版が出荷されるということだ。MicrosoftはExchange System Manager(ESM)のインターフェースも一新しつつあり,E12は新しいWebサービスAPIとスクリプティング機能もサポートする。

 エンドユーザー向けには,E12は劇的にオーバーホールされたOutlook Web Access(OWA)を内蔵する。E12はさらにWindows Mobileデバイス向けのよりシームレスなサポートも,palmOneとMotorolaの携帯用デバイス向けと同様に提供する。Thompson氏はさらにE12が非常に大きく拡張され,単純化されたミーティング・スケジューリング機能も内蔵するだろうと強調した。