(Paul Thurrott)

 米MicrosoftのWindows Server部門上級副社長のBob Muglia氏はこのほど行ったインタビューで,WindowsサーバーOS製品の今後何世代かに関する同社の計画を説明した。同社が製品の出荷時期をユーザーが予測でき,かつ明快で持続可能な形で明かしたのはこれが初めてのことである。Microsoftが企業ユーザーの求めに応じて,ようやく製品を計画的に出荷する気になったと私は思った。

 インタビューは目を見張らせるもので,正直言って爽快だった。Microsoftはこれまで隠し立てをする会社だった。それは責任逃れで不利になると,私は主張していた。この秘密主義は,同社の一般消費者向け製品では続くのだという。例えば,次のWindows Media Player(WMP)である「Crescent」(開発コード名)や,次期Windows XP Media Center Edition(MCE)である「Symphony」(開発コード名)の出荷時期は隠される。しかし,同社は企業向け製品に関しては,もっとオープンになろうと考えている。ここでは私がMuglia氏とのインタビューで聞いたことを要約して紹介しよう。
編集部注:Muglia氏インタビューは,現在連載中です。該当サイト

全バージョン一体型の開発は悪夢であり,過去のもの
 まず,Windows 2000のころに行っていた全バージョン一体型の開発は悪夢であり,過去のものだ。Windows 2000の開発期間中,私はMicrosoftのOS製品が複雑になりすぎたと指摘したことがある。

 同社がWindows 2000を社内で完成させたころには,ユーザー・ニーズが変わっていた。そして,リリースを遅らせて製品を練り直す必要に迫られた。その結果,Windows 2000の次のWindows Server 2003は,多くの点でWindows 2000に対して「はめこんでおしまい」式のアップグレードになった。目立つ穴(およびあまり目立たない穴)を修正して,セキュリティとアップタイムと性能を改善したが,大きな新機能はあまり提供していない。

 そして出荷後1年の間,Microsoftは前例がないアドオンのセットを出荷した。これは最初「Out-of-Band(OOB)アップデート」と呼ばれていたが,今は公式には「Feature Packs」と呼ばれている。これによって,ベースになっているサーバーOS製品の機能は劇的に向上する。Feature Packsは,「Windows Rights Management Services(RMS)」「グループ・ポリシー管理コンソール(GPMC)」「Windows SharePoint Services(WSS)」から成る。

 インタビューでMuglia氏はこう言った。「もし,4年ごとのメジャー・リリースをするなら,多数のFeature Packsをリリースしなければならなくなる。しかし,Feature Packsの懸念することは,ユーザーがFeature Packsを吸収するのに苦労するということだ。それらは見つけにくく,(ユーザーは)ダウンロードしなくてはいけない。また,OEMベンダーはそれらを出荷しない。それに対して,一度にまとめて出荷する方がとても便利で,ユーザーにさらに大きな価値を提供する」。

WindowsサーバーOSの開発戦略はシンプルになった
 こうしてMicrosoftのWindowsサーバーOS製品の開発戦略は,次のようにシンプルな形になった。同社は今後Windows Serverのメジャーなアップグレード版を4年ごとに出荷する。またWindowsサーバーOS製品のマイナーなアップグレード版を2年ごとに出荷する。

 マイナー・アップグレード版の最初のものは,「Windows Server 2003 R2」(リリース2という意味)という開発コード名で,2005年半ばに出荷されるだろう。次のメジャーなWindowsサーバーOS製品は,「Windows Server Longhorn」と呼ばれており,2007年(Longhornクライアントの出荷から6~12カ月後)に出荷される。Longhorn Serverのアップデート版は2009年に出荷される予定で,Blackcomb Serverは2011年に出ると期待できる。

 「ソフトウエア製品の出荷スケジュールを,自分たちがもっと予想できる状況にしたいと思っている。(メジャー・アップグレード後の2年間)われわれは,ユーザーのために一貫性や互換性を維持するため,(その時点のWindowsサーバーOSの)カーネル自体には変更を加えず,カーネルの上においてユーザーが利用する機能の追加や改良を実施する。(Windows Server 2003)R2はこうした製品の最初のものになる」とMuglia氏は語る。

 Muglia氏はこの戦略を採用した理由の1つが,ソフトウエア・アシュアランス(SA)契約者からの不満だったことを認めた。多くは自分たちのライセンスの有効期間内に,メジャーなバージョンアップがもう1つあると思っていたのだ。Windows Server 2003 R2はこうしたユーザーが払ったライセンス料金でアップグレードできる予定だ。しかし,ほかのユーザーは他のサーバー製品と同様にそれを購入する必要があるだろう。

 私はMuglia氏に,Windows Server 2003 R2やその後のバージョンは,サービス・パックとホットフィックスの提供計画にどのような影響を与えるかを尋ねた。彼によると,Windows Server 2003 R2は,この秋に出荷予定のWindows 2003 Service Pack1(SP1)のコードがベースになる,そしてWindows 2003 SP2より前に出荷されるだろうという。また,SP2の出荷は多分2005年遅くで,最初のWindows Server 2003とWindows Server 2003 R2の双方に適用するものになるという。

AMD64とIntel EM64Tを対象にしたWindows Serverの64ビット版を用意
 Muglia氏はさらに,「AMD64」と「Intel Extended Memory 64 Technology」の両アーキテクチャを対象に開発中の64ビット版WindowsサーバーOSについて話した。それは「Windows Server 2003 64-Bit Edition for Extended Systems」と呼ばれており,WindowsサーバーOSの現行版と機能が同じで(Itanium用のWindowsは32ビット版の全機能を備えてはいない),性能向上など,はるかに大きな改良が施されている初めての製品だ。現実にMicrosoft社内のテストでは,32ビットのサーバーやサービス,アプリケーションでさえもAMDの64ビット・ハードウエア上では,32ビットのハードウエア上より高速に稼働する。このことについては別の記事で紹介したい。

 少し悪いニュースも入手した。Microsoft社のキャンパスという敷地にあるWindows NT Build Labを最近訪問した際,私はラボのビルドの優先順位として,「XP SP2」「Windows SP1」,次が「Windows 2000」,それから「Longhorn」と書かれた掲示に気づいた。私はビルドの順番のリストにWindows 2000とあるのを見て驚き,Muglia氏にWindows 2000へXP SP2のセキュリティ修正(開発コードはSpringboard)の一部が入るかどうか尋ねた。

 残念なことに答えはノーだ。「Windows 2000に戻すべきコアの修正を発見して反映しているところだ。Windows 2000用には現時点で“Springboard”のようなセキュリティ機能はない。われわれは,XPのようにSPを先送りしないつもりだ。本当に重大なセキュリティの弱点であると思われるものを発見して修正する……それがここでやっている唯一のことだ。Springboardでは,われわれは何百もの変更をOSに加えなければならなかった。(XP SP2では)だれも実際には攻撃方法を見つけていない弱点のクリーンアップ作業をたくさんやった。それでもなおそういったことが起きないことを確認したいので作業している。そのため,作業結果のすべてがWindows 2000に反映されるわけではない」(Muglia氏)。言い換えると,2004年末に出荷予定のWindows 2000 SP5は,これまでと同じようなサービス・パックになるということだ。

 今回のインタビューでは非常の多くの情報が得られた。例えば,それぞれのバージョンのWindowsサーバーOS製品でMicrosoftが提供しようとしている技術の情報があるが,ここではスペースの関係で割愛せざるを得ない。Muglia氏とのインタビューの全貌に期待してもらいたい。