2001年以来,米Microsoftの基礎研究所Microsoft Researchは「Microsoft Research TechFest」という,社内向けの催し物を開いてきた。これは同所の研究者が,もうすぐ完成する技術を披露して従業員を刺激し,興奮を与えるのが目的だ。今年のTechFestは,一般消費者向けやプログラマ向けのコンピュータ・ツールの紹介から,エイズ医療に役立つHIVトラッキング・システムに至るまで,技術の幅の広さをデモンストレーションしていた。場所はMicrosoftの本社があるレッドモンドで行われた。

 今年のTechFestの参加者は,北京,ケンブリッジ,イングランド,マンウンテン・ビュー,カフォルニア,レッドモンド,サンフランシスコなどの研究所から,400人以上もの研究者が集まった。そのほか,カナダのティーンエイジャーであるMike Rowe君が出席していた。彼は「MikeRoweSoft」というドメイン名を使ったためにMicrosoftと法律上のいざこざがあった人だ(既報)。MicrosoftのBill Gates会長兼チーフ・ソフトウエア・アーキテクトも,クールなテクノロジを探してブースからブースへとぶらついていた。

 今年のハイライトは,複数枚の写真を縫い合わせてパノラマ写真にするソフト,雑踏の声の中から1人の声だけをピックアップできるマイク,携帯電話の数字のキー・パッドのようなもので操作するWebナビゲーション・システム,開発者がコーディングのエラーを見つけ出すのを助けるKISS and Zingと呼ばれるプログラミング・ツール,もっと簡単にテキスト・メッセージをグループに送れるSwarmと呼ぶプロジェクト,まだパッチが当たっていない状態で既知のぜい弱性からWindowsシステムを守るShieldと呼ばれるアプリケーション――などなどである。

 今回のTechFestは,内輪のイベントとしては大きいけれども,開発製品のデモンストレーションは少な目だった。デモの1つには,テレビの視聴者がスポーツ番組の見たいシーンだけを編集して見られるようにするアプリケーションがあった。例えば,野球の試合を編集して,ヒットを打ったシーンだけを見るように編集できる。Microsoft Researchによると,このソフトは野球,バスケット・ボール,サッカーで使えるという。将来,この技術はWindows XP Media Center Edition(XP MCE)に搭載されることだろう。

 そのほか,似た写真の中から自動的にベスト・ショットを選び出す画像編集ソフトとペンダントのように身に付けてその日の出来事を自動的に撮影する薄型カメラSenseCamのデモもあった。Microsoftによると,SenseCamは1日12時間で2000枚の画像を保存できるという。

 Microsoftはこれらの技術をLonghornや他の将来製品の中に様々な形で取り込んでいくつもりだ。今年初頭の「2004 International Computer Electronics Show」で登場したTablet PCや「Smart Personal Object Technology(SPOT)」という時計なども,ここで開発されて製品化されたものである。

(Paul Thurrott)