文・清水惠子(中央青山監査法人 シニアマネージャ)

 業務・システム最適化計画は業務の論理化、データの標準化により、具体的なあるべきシステム像を適用処理体系(AA)で描いてきた。そのあるべき姿を実現する技術体系(TA)はどのように導き出されるのであろうか。

■ユーザニーズを実現する技術体系(TA)

 業務・システム最適化計画策定ガイドライン4版に示される技術体系(Technology Architecture-TA)は、ネットワーク構成図とハードウェア構成図である。適用処理体系(Application Architecture-AA)は、論理的なノードを示している。技術体(TA)で順次、物理的なノードが、示されることになる。

 現状のTAはバラバラな開発のために、全体としての連携がない図になる。

■現行モデル(レガシー中心)
図・現行モデル(レガシー中心)

 レガシーの次の段階のオープン化については、上図のレガシーを順次オープン化するイメージとなる。この場合、ネットワークもそれぞれに回線を設置することになるため、ネットワークはそれぞれで接続され、インタフェースは複雑になっている。

■現行モデル(バラバラにオープン化)
図・現行モデル(バラバラにオープン化)

 システムの全体最適を目指す時にインタフェースを統合とデータ標準化が必須である。その際に段階的に全体最適を目指すための入り口(準理想)として、下図のようなインタフェースと連携がある。ポートレット、EAI(enterprise application integration)、ODS(Operational Data Store)の活用は、ここにきて、各ベンダーの提供するツールの技術進歩もあり、現実的なものとなっている(ポートレット、EAI、ODSなどの用語解説は、第7回を参照のこと)。

■準理想(情報工場I)
図・準理想(情報工場I)

 ここで忘れてはならないが利用者の視点にたった開発、業務からの要請(業務処理体BA)である。従来の開発では、業務要件が明確に提示されていないためにTAの段階で各ベンダーの持っている自社の製品の仕様で開発が実施されてしまうことになる。BPRを実現するワークフローがあり、そのワークフローを実現するTAがあるべきである。システム開発は本来、利用者のニーズに答えるべきである。利用者のニーズにこたえるためには(1)業務プロセスの標準化、(2)情報/データの標準化、(3)(1)と(2)の要請に答えるアプリコンポーネントの採用が要請される。

■段階的移行のイメージ
図・段階的移行のイメージ

 BPRについては、Webサービスを前提としていくつかの新しい技術があり、この活用により、ユーザのニーズを満たしながら、裏で動く基幹システムの機能はそのままにして、表側の入力画面を変化させることも可能である。例えば、ある自治体にERPパッケージを導入したとしよう。各市町村の利用している帳票の様式が微妙に異なっている時に、入力画面は一つに統合され、出力帳票も様式を統一すると、従来の考え方であれば、どこか、ユーザに不満が残るものになる。また、各市町村独自の手順を無理に統合したため、実際には使われないシステムになる場合もある。この不満を解消するために、独自の手順を正規の手順とは別に追加し、入力画面をアドオンするための多大なコストになって跳ね返る可能性があった。

 現在の技術の進歩はこうした不満を解消するコンポーネント(部品)を提供し得るようになった。BPRのツールとして販売されているBPM(ビジネスプロセスマテリアル)などのワークフローは、データ標準のインタフェースを介して、入出力画面の柔軟性を確保しながら標準化されたデータを動かせる。データの標準化、業務の統合化は、ともするとユーザが使い勝手の悪いユーザインタフェース(入出力画面)を押し付けられるものと思われがちであるが、これらのコンポーネントによりユーザは従来の手書きの申込書と同じ画面に抵抗感なくデータ入力することが可能となる。従来、高いアドオン費用を払っていたものが、安価なツールで実現できる環境が出現してきたと言える。

 こうした、安価なコンポーネント(部品)のツールを見出すためには、まず、ユーザ側がニーズを明確にし、それを満たす技術があるかを調査するRFI(Request For Information、情報提供依頼書)を発行することである。RFIを発行することで、調達を予定するシステムをいくつかに分割して、その要請される機能を満たすツールの有無を調査する。このシステムの分割がどの程度できるか、どの位、中小のベンダーからも新技術の情報を提供してもらえるかを確認するのである。この分割が将来の分割発注に繋がることになる。

 次回は、RFP(Request for Proposal、提案依頼書)の作成について触れることにする。

清水氏写真 筆者紹介 清水惠子(しみず・けいこ)

中央青山監査法人 シニアマネージャ。政府、地方公共団体の業務・システム最適化計画(EA)策定のガイドライン、研修教材作成、パイロットプロジェクト等の支援業務を中心に活動している。システム監査にも従事し、公認会計士協会の監査対応IT委員会専門委員、JPTECシステム監査基準検討委員会の委員。システム監査技術者、ITC、ISMS主任審査員を務める。