文・清水惠子(中央青山監査法人 シニアマネージャ)
To Beの適用処理体系(Application Architecture―AA)として米国環境省のAAを紹介する。米国環境省は連邦政府と州の環境情報を収集し、分析するための統合化されたアプリケーションを構築しようとしている。
米国の各州においては、既にそれぞれが環境情報のレガシーシステムを保有している。環境保護をより有効に進めるためには国、各州間をまたぐ総合的な環境分析が求められるようになってきた。こうした背景を基に2001年から2003年9月までの間これらの情報を統合する業務・システム最適化の取組が実施された結果がこの適用処理体系(Application Architecture―AA)に集約されている。
注目すべきは、1998年に既に国も地方も共同して統合した環境情報システムを構築するビジョンに同意し、それを合意書として作成し公表していることである。
1998年の段階で国も地方も共同して統合した環境情報システムを構築するビジョンに同意 |
最初に明確なビジョンがあり、そのためのベースラインを2001年に完成し、2002年に当初目標とした将来体系を実現し、2003年には20州以上の接続をし、更に次の目標に向かって段階的に統合的な環境情報システム構築を実施している。
適用処理体系(AA)の策定においてデータの標準化、変換するデータタイプの各パートナーの合意、XML, Webサービス、メタデータ、セキュアなネットワークが前提となっている。
EPAの適用処理体系は、電子政府・自治体の一般的なモデルとして参考になる。 |
■To Beを描く際は技術動向のウォッチが重要
このEPAのAAのモデルを日本の電子政府・自治体風にアレンジすると以下のようなモデルになる。
日本の電子政府・自治体風にアレンジしたEPAの適用処理体系 |
XMLを活用した、柔軟性の高いシステム運用のためにメタデータの整理統合が必要となる。XMLは、W3C(World Wide Web Consortium)で標準化の論議がされている国際規格である。HTMLより拡張性が高く、文章の節や番号づけも可能であり、メタコンテンツの記述やデータベース上でのデータ交換、メッセージ交換もできる。これらはXMLタグで管理される。
多くの場合に既に存在するレガシーシステムの統合は多大な費用と時間を要するが、レガシーには大幅な手を加えることなく、Webを活用し、また、ワークフローを確立し、現在、稼動するレガシーやクライアントサーバーのデータベース等の大きなシステムのアプリケーションと小まわりのきくWebサービスベースのアプリケーションを連携させるのにこのXMLとEAIの活用はひとつの移行時のモデルを提供する。この技術的な前提とビジネスモデルの要件の具体化としてのサービスアプリケーションシステムの出会いがこのAAの図に集約されている。
技術の発展は、従来では不可能と思われた連携を可能にすることがあり、技術の動向の利点を取り入れることは、To Beを描く前提として重要である。
以下、注目すべき技術要件の概要をいくつか紹介する。
PORTLET EAI(Enterprise Application Integration) メタデータ CDX(Central Data Exchange) ODS(Operational Data Store) |
なお、次回からはDA(データ体系)に戻って、トップダウンからのアプローチとボトムアップからのアプローチによるデータモデルについて紹介する。
筆者紹介 清水惠子(しみず・けいこ) 中央青山監査法人 シニアマネージャ。政府、地方公共団体の業務・システム最適化計画(EA)策定のガイドライン、研修教材作成、パイロットプロジェクト等の支援業務を中心に活動している。システム監査にも従事し、公認会計士協会の監査対応IT委員会専門委員、JPTECシステム監査基準検討委員会の委員。システム監査技術者、ITC、ISMS主任審査員を務める。 |