米連邦通信委員会(FCC)は米国時間の8月5日,電話会社のDSL(digital subscriber line)サービス用のメタル線について開放義務を撤廃する方針を発表した。今後,文書として正式に提示。その後,1年間で開放義務が消滅する見通しだ。

 米国の地域電話会社のメタル線を借りてDSLサービスを提供している事業者は,貸し出し条件の見直しを迫られる可能性が高い。従来のように電話会社から同一の条件での貸し出しはなくなり,2者間の交渉で(1)貸し出すかどうか,(2)貸し出すのであればどの料金水準とするのか--が決まることとなる。

 DSL用メタル線の開放義務をFCCが撤廃した背景には,「CATVのブロードバンド・サービスへの規制変更が大きく影響している」(情報通信総合研究所の政策研究グループ神野新シニアリサーチャー)。今年6月に米最高裁判所が,ケーブル・テレビ(CATV)回線のブロードバンド・サービスには開放義務がないと決定しているからだ。

 FCCは今回の方針を発表するにあたり,「DSLを現在のマーケット・リーダーであるCATVのサービスと同等の規制にする」とコメント。実際,FCCの2004年末の調査によると,米国ではDSLが1380万回線に対してCATVによる高速インターネット接続が2130万とおよそ1.5倍の規模となっている。

 なお,米国では昨年6月に地域電話会社のブロードバンド用の光ファイバの開放義務が撤廃されている。電話用の光ファイバは引き続き開放義務が課されている。

(市嶋 洋平=日経コミュニケーション