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 ライブドアの動きが活発だ。8月1日に公衆無線LANサービス「livedoor Wireless」(「D-cubic」から名称変更)の試験サービスを始めたほか,「iBurst」を使う2GHz帯の無線ブロードバンド・サービスに名乗りを上げた。一方,7月末にはライブドアと“全面協力関係”にあるパワードコムをKDDIが買収するとの報道もあった。
 ライブドアでネットワーク事業を統括する照井知基・執行役員上級副社長(写真)に,2GHz帯参入などの話を聞いた。

——無線LANアクセス・ポイント(AP)の設置作業は順調か。

 台風の影響で作業が止まることはあったが順調だ。港区と新宿区から始め,1週間に150APのペースで設置している(写真)。実際,設置してみると電波が意外に届く場所もあれば,予想よりも届かない場所もある。APから見て建物の裏側にいる場合などはやはり厳しい。当初の2200台よりもAP数は増やさなければならないだろう。こういったことはやはりやってみないと分からない。
 また,電柱のない場所も問題だ。そのような場所ではビルの屋上にアンテナを設置することを考えている。

——2GHz帯のサービスに手を挙げた。技術として京セラのiBurstを選択したが,その理由は。

 我々としては「実際に動いているもの」を採用したくなる。京セラの研究所でiBurstのデモを見たが,1Mビット/秒の速度が安定して出る。車で移動しながら電波を受信して,ソフトフォンを使って電話もかけてみたが,音質は良かった。iBurstはVoIP(voice over IP)に向いていると思った。iBurstは仕様も固まっているし,機器もある。5Mビット/秒程度まで高速化する技術も確立している。
 iBurstの場合,ユーザーに専用のクライアント機器が必要になるが,これはいろいろなやり方がある。例えば,携帯電話を販売する子会社のライブドアモバイルを通してiBurstのカードをユーザーへレンタルする方式などが考えられる。
 もっとも,ユーザーにとっては無線LANかiBurstかといった違いは意味がない。無線LANとiBurstを意識せずにシームレスに使える仕組みを作ることが今後の検討課題だ。

——先日,総務省は2GHz帯の割り当て基準を発表したが,どう見ているか。

 あれは「白紙にも戻そう」ということだと受け取った。iBurstは3G(第3世代携帯電話)の技術ではないので,ダメだと言われていたが,iBurstも含めてもう一度検討してもらえるのは我々にとってはチャンスだ。他社をみると,ウィルコムの次世代PHSは実態がまだ見えない。アイピーモバイルは,TD-CDMAの技術は良いが資金面で難があると聞いている。
 総務省は「何年間事業を継続できるか」や事業者の経営状態,キャッシュ・フローをかなり気にしているようだ。我々は「フジテレビからいただいたお金がある」と答えている。

——WiMAXに興味はないのか。

 WiMAXにも注目している。WiMAXには無線LANのバックボーンとしての使い方と,端末へWiMAXの電波を直接送信する使い方の二つがあると思うが,前者には非常に興味を持っている。首都圏は人口が多いので無線LANのAPごとに光ファイバをひく方法が良いが,過疎地ではコスト面でそうはいかない。バックボーンにWiMAXを使った方が良い場合が出てくるだろう。ただ,現時点では,WiMAXは仕様面や機器が不安だ。

——KDDIがパワードコムを買収するという報道があった。livedoor Wirelessはパワードコムの光ファイバを使っている。もし買収が現実になれば,どのような影響が生じると考えるか。

 二つの問題が生じるだろう。一つは,livedoor Wirelessの今後の全国展開時は,パワードコムを通して全国の電力系通信事業者と協力を図る予定だ。しかし,パワードコムが買収されれば,全国に9社ある電力系通信事業者と個別に交渉する必要が出てくるかもしれない。
 もう一つは,買収された場合,現在のパワードコムとの関係がKDDIに引き継がれるのかどうかだ。パワードコムの中根社長はチャレンジングな人なので,かなり無理をしてもらっている。光ファイバも格安の価格になっている。しかし,KDDIに買収され,価格面などを見直そうという話になるとかなり面倒だ。パワードコムとは(光ファイバを)複数年の使用契約になっているので,少なくとも数年間は今の条件でいけるが,その先が気になる。
 パワードコムからは「中根社長とKDDIの小野寺社長はまだ会っていない」と聞いたが,正直言って,この件はかなり気になっている。

(聞き手は武部 健一=日経コミュニケーション