楽天は8月1日,284件の顧客情報が流出した事故を踏まえ,顧客情報管理体制を刷新すると発表した。楽天が運営するショッピング・サイト「楽天市場」では現在,出店する各店舗が個別にカード会社と契約し,決済を処理している。新体制では,これをすべて楽天が代行する仕組みに改める。カード番号の情報を店舗に引き渡さないようにすることで,店舗から個人情報が流出する事故を防ぐ。

 楽天市場に出店する店舗は,商品の受注,決済,配送までを処理するため,(1)カード番号などの「決済情報」,(2)受発注の連絡手段となる「メール・アドレス」,(3)商品の配送に不可欠な住所や名前など「配送先情報」――と三つの取引情報を管理している。7月23日に判明した顧客情報の漏えい事故では,この決済情報の流出を伴っていたことが問題視されていた。

 今回発表した新体制のポイントは,三つの取引情報のうち配送先情報以外は店舗側に引き渡さないこと。顧客が楽天市場の店舗で買い物すると,楽天がカード会社と情報をやり取りして決済を処理する。決済が正常に処理できれば,楽天側で受発注が正常に処理できたことを電子メールで顧客に通知。商品の発送に不可欠な配送先情報だけ,店舗側に引き渡す。

 新体制では,楽天が決済処理を代行する格好になる。このため,楽天は新体制を店舗向けのサービス「安心サービス」として提供。決済代行の手数料を,各店舗から徴収する。ただし,当初の2カ月間は手数料を無料とする。安心サービスを導入しない店舗では,8月11日からクレジット・カードで決済できなくなる。

 また,店舗側には顧客のオリジナルのメール・アドレスとは別に,楽天が一意にひも付けたメール・アドレスを引き渡す。同社が「メールフォワーディング機能」と呼ぶサービスとして提供する予定で,店舗側から顧客のオリジナルのメール・アドレスが流出してしまう危険を回避する狙いがある。

 安心サービスの導入は,8月11日に実施する。メールフォワーディング機能は9月1日をメドに導入できるよう,準備を進めている段階。

 楽天では,店舗が出店時に楽天と契約するプランの一つに「R-Card plus」を用意している。R-Card plusは,カード決済の仕組みとして今回発表した新体制と同様な仕組みを採用している。安心サービスの場合,各店舗が個別にカード会社と契約する必要があるが,R-Card plusの場合,店舗がカード会社と個別契約する必要がない。楽天としては,「できれば年内にでも全店舗でR-Card plusに移行してもらいたい」(三木谷浩史会長)考えだ。

(加藤 慶信=日経コミュニケーション