イー・アクセスは7月11日,モバイル版WiMAX「IEEE 802.16e」の実験に向けた準備を開始したと発表した。

 機器メーカーや総務省と話し合いを進め,機器調達や実験可能なエリア,周波数などの準備が整い次第,総務省に対して実験局免許の申請を行う。実験の目的は,通信速度や電波伝搬の能力など基礎的なデータを収集し,置局設計を始めとした事業計画を立てられる状況にすること。

 同社は現在,第3世代(3G)携帯電話サービスへの新規参入を希望している。IEEE 802.16eのサービス化に取り組むのは,3G携帯や無線LANと組み合わせたデータ通信サービスの実現を構想しているため。3G携帯は広範囲をカバーできるが,1ビットを伝送するのにかかるコスト(ビット単価)が無線LANに比べて高い。

 一方のWiMAXのビット単価は現時点では不明だが,3G携帯よりも安くなる公算が大きい。このため,3G携帯とIEEE 802.16e,無線LANを組み合わせ,例えばトラフィックが多い都市部では無線LANやIEEE 802.16eと3Gで分散処理して設備投資額を抑制する考えだ。なお無線LANの実証実験は,2005年6月に開始済み。

 WiMAXは数k~数十km程度のエリアをカバーし,20MHz幅を占有した場合は最大75Mビット/秒で通信可能な次世代無線通信システム。固定用途の「IEEE 802.16-2004」とモバイル用途の「IEEE 802.16e」という二つの規格がある。イー・アクセスが実験予定のIEEE 802.16eは,端末が接続する基地局を切り替えながら通信すること(ハンドオーバー)が可能で,時速120kmの移動環境でも安定して通信できる規格だ。

 ただし,帯域幅が広いほど消費電力が大きくなるので,帯域幅5MHzでの利用が有力視されている。この場合の通信速度は,最大15Mビット/秒。標準化は完了しておらず,正式な標準化は2005年10月の予定。

 なお,3G携帯とWiMAX,無線LANを組み合わせるという構想は,KDDIも表明している(関連記事)。