総務省は6月30日,「次世代IPインフラ研究会」の第6回会合を開催した。研究会の配下にあるセキュリティ ワーキンググループ(WG)とIPネットワークWGから報告書案がそれぞれ提示された。このうちセキュリティWGの報告書案は既にパブリック・コメントの募集も完了しており,今回の会合で構成員が最終確認をした。

 セキュリティWGの報告書案のサブタイトルは,「情報セキュリティ政策 2005」。報告書案では,(1)ネットワークを通じた障害の広域化への対応,(2)情報家電などネットワークにつながる「モノ」の多様化への対応,(3)人材面のぜい弱性の克服--を提言している。

 特に(3)人材面のぜい弱性の克服に,構成員からの意見が集中した。セキュリティWGで事業者を対象に実施したアンケート結果で浮かび上がった,セキュリティ分野での人材不足を業界全体で克服しようとう内容だ。

 座長を務める齋藤忠夫・東京大学教授は,「普通の学生にはセキュリティはつぶしが利かない分野という印象がある。就きたくない仕事と考えているようだ。事業者は人材が必要というが,医者のように特殊技能を評価して相応の給料を払うなど,本気で雇う気はあるのか疑問がある」と見解を述べた。

 これに対してパワードコムの中根滋社長は,「需要があれば供給するのが筋。多くの企業ユーザーから『お金を払ってでもセキュリティの向上を図りたい』と言われるが人材不足で応えられない状況がある。この問題は当社の経営課題としても据えている。有資格者は給与面でも優遇する」と説明した。齋藤座長は「ならばもっと業界として学生に広報してほしい。優秀な人材がセキュリティ分野に就くためには社会的な仕掛けが必要だ。大学がセキュリティ教育すれば人材が業界に出てくるわけではない」とした。

 セキュリティWGの報告書案は近日中に「次世代IPインフラ研究会 第2次報告書」として一般公開する。一方の,IPネットワークWGの報告書案は,7月上旬にパブリック・コメントを募集し,次回会合で最終確認をする予定である。 

(山根 小雪=日経コミュニケーション