英国最大手の通信事業者BTの固定通信部門が再編される見通しとなった。英国の通信規制当局であるOfcomが現地時間の6月23日,再編案を発表した。BTも同方針に歓迎の意向を示している。時期や新組織の詳細については6月30日に発表される見通し。以前にBTがOfcomに提出した文書がベースとなっている。

 これによると,BTはユーザーへのアクセス回線の敷設と管理を担当する接続部門を分離し,別の事業部(ビジネス・ユニット)でBTとは異なる新ブランドで運営することが求められている。同事業部はBTと他の通信事業者に,同等の料金と条件で回線を貸し出すことになる。従業員は約3万人となる見通しで,BTの社員のままとなる。経営陣のオフィスはBT本体とは別の場所に移す。BTによると売上高は数十億ポンドになるという。

 現状のBTの組織は,1)家庭や法人向けにサービスを直接販売する「BTリテール」,2)通信事業者向けに回線を販売する「BTホールセール」,3)ソリューションを提供する「BTグローバル・サービス」の主要3事業部門から成る。今回はこのうち2)の「BTホールセール」からユーザー・アクセス回線事業を切り離し,「BTリテール」や「BTホールセール」と同じ位置付けの事業部門とする。

 海外の通信事業者の動向に詳しい情報通信総合研究所の政策研究グループの神野新シニアリサーチャーはアクセス回線部門の独立について「理由の一つとして,英国はサービスをアン・バンドルした状態でのアクセス網の利用が諸外国に比べて遅れていた。Ofcomはこれを促進する考えがあったのだろう」と指摘する。

 また,英国では電気やガス,水道,鉄道など公益事業は,インフラとサービスの資本分離が進んでいる。しかし「Ofcomは流れの早い通信業界に資本を別にするなどの構造的分離を求めなかったのだろう。BT側もその考えを打ち出してOfcomに受け入れられた」(神野シニアリサーチャー)という

 BT側も「英国におけるアクセス回線の事業については長い間議論してきたもの。今回のように規制がきちんと決まり,はっきりすることで事業がしやすくなる」(BTジャパン)と歓迎している。

(市嶋 洋平,山根 小雪=日経コミュニケーション