総務大臣の諮問機関である情報通信審議会(情通審)は6月14日,電話を全国あまねく提供するための制度「ユニバーサル・サービス」について話し合う会合を開催した。今年7回めとなるこの日はNTT東西地域会社が公衆電話サービスの収容局ごとの収支について説明。5月17日に実施した前回の一般電話サービスの収支説明とあわせて,総務省と委員会への不採算地域把握のためのデータ提示が一区切りついた。

 その後,総務省側が東西NTTの提出データを様々な角度から分析した結果を提示。「収容局ごとのサービス提供コストは,加入者数の総数との相関が大きい」(総務省総合基盤局料金サービス課)とした上で,その相関から外れている収容局が存在することなどが示された。

 こうした分析を基に,電話サービスの提供コストが他に比べて高い地域,つまり基金を補てんする地域をどのようにして特定するのか議論が進められた。委員からは様々な意見が出た。

 委員からは基金を支給する以前の懸案事項として,基本料金の格差について指摘があった。現状は都市部の3級局の電話基本料金は月額1785円。一方で地方部の1級局は月額1522.5円。実際に基金制度が発動されると,主に1級局の収容局のコストが補てん対象となる。つまり,基本料金が安いユーザーのコストを,基金を支払う側である電話ユーザー全体で負担する格好となる。

 そのため,「歴史的な背景もあるが,級局別の基本料金体系については議論をしていかないと,基金だけ一方的に導入しても納得されないのでは」(菅谷実専門委員)という点だ。電気通信事業部会から参加している長田三紀委員も同様の指摘をした。

 また,補てん対象の収容局の特定については,意見がまとまらなかった。

 「統計的な説明で,なんとか決める必要があるのでは」(関口博正専門委員)として,平均からのかい離の度合いで議論が進められたが,「統計的に決めると恣意(しい)性が入るため,プロセスの合理性を求めるのは難しい。結局は,基金でいくらを支払うのかという結果の合理性にならざるを得ないのではないか」(三友仁志専門委員)といった意見も出た。

 このほか委員からは資料の公開について意見が相次いだ。電気通信事業部会から参加している高橋伸子委員は「国民で問題を共有する必要があるが,非公開の資料が多すぎるのが気にかかる」と指摘。委員会主査である黒川和美専門委員も「この程度の資料であれば,公開してもいいのでは」と東西NTTや総務省側に公開を迫った。菅谷実専門委員も「基金を補てんしてもらうのであれば,東西NTTには情報を公開してほしい」とした。

 総務省は7月にも答申案を提示。総務省は議論を秋までに収束させ,2006年4月にも運用を始めたい考えだ。

(市嶋 洋平=日経コミュニケーション